この記事の使い方
事例問題が苦手だという方は多いです。何とか事例問題に慣れようと、過去問を繰り返し読んで、正解の文章まで覚えてしまった方もおられるでしょう。それでも、本当に理解していることにはなりません。○になる理由、×になる理由、その論点がわかって、その事例全体を理解したことになります。ところが、過去問題集の解説は数行しかなく、それぞれの選択肢の正誤を分けている論点のすべてを網羅しているものはありません。そこで、この記事では事例問題を取り上げ、論点を一つ一つ丁寧に並べて、正誤の判断ができる力を養っていくお手伝いをします。
進め方は次のとおりです。はじめに事例と選択肢、そして正答を示します。そのあと、選択肢ごとに、その正誤を分けている論点を一問一答の形で整理します。事例問題の正答をただ確認する記事ではありませんので、それぞれの選択肢について、なぜ○なのか、なぜ×なのかの理由をじっくり確認しながら進めてください。
第38回 問題35
事例を読んで、労働保険の給付等に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Aさん(35歳)は、職場で嫌がらせを受けたことで適応障害を生じ、業務災害の認定を受けた。労災病院で治療を受けながら就業を続けていたが、嫌がらせが止まないため15年間勤続した会社を退職した。次の仕事を探す気がなかなか起きなかったが、無収入の状態が続くことに不安を感じ、雇用保険被保険者離職票を持って公共職業安定所(ハローワーク)に赴き、職業紹介を受けることにした。
1 Aさんの療養補償給付については、療養の費用が支給される。
2 Aさんが退職したことによって、療養補償給付の受給権は消滅する。
3 Aさんに適用される基本手当の所定給付日数に、離職理由は関係しない。
4 Aさんは、求職の申込みをしなくても基本手当の支給を受けることができる。
5 Aさんが、正当な理由なく紹介された職業に就くことを拒むと、基本手当は1か月間支給されない。
正答 5
ここから、選択肢の正誤をわけている論点を確認していきます。
選択肢の論点を確認する
なぜAさんは療養の費用ではなく療養の給付を受けられるのか
登場人物を確認する
Aさん 35歳 職場で嫌がらせを受けて適応障害を生じ、業務災害の認定を受けた
労災病院で治療を受けながら就業を続けていたが、15年間勤続した会社を退職した
離職票を持って公共職業安定所に行き、職業紹介を受けることにした
Aさんは労災病院で治療を受けています。次の①から③はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。選択肢を押すと答えが出ます。
① Aさんの傷病が業務災害と認定されたから
× 業務災害かどうかで、療養の給付になるか療養の費用の支給になるかが決まるわけではありません。
② Aさんが労災病院で治療を受けているから
○ 労災病院や労災保険指定医療機関で治療を受ける場合は、現物給付として療養の給付が行われます。本人が窓口で支払うことはありません。
③ Aさんが15年間勤続していたから
× 勤続年数で決まるものではありません。
療養の費用が支給されるのは、近くに指定医療機関がないなど、指定医療機関以外で治療を受けた場合です。いったん本人が支払い、あとから費用が支給されます。
なぜ「療養給付」ではなく「療養補償給付」なのか
登場人物を確認する
Aさん 35歳 職場で嫌がらせを受けて適応障害を生じ、業務災害の認定を受けた
労災病院で治療を受けながら就業を続けていたが、15年間勤続した会社を退職した
離職票を持って公共職業安定所に行き、職業紹介を受けることにした
労災保険の給付の名前に「補償」が付くものと付かないものがあります。次の①から③はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。
① Aさんの傷病が業務災害と認定されたから
○ 業務災害の給付には「補償」が付きます。療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付のように呼ばれます。
② Aさんが労災病院で治療を受けているから
× どこで治療を受けたかで呼び名が変わるものではありません。
③ 通勤災害の場合も「療養補償給付」と呼ばれる
× 通勤災害の場合は「療養給付」「休業給付」のように、「補償」が付きません。
退職すると労災保険の給付はどうなるのか
登場人物を確認する
Aさん 35歳 職場で嫌がらせを受けて適応障害を生じ、業務災害の認定を受けた
労災病院で治療を受けながら就業を続けていたが、15年間勤続した会社を退職した
離職票を持って公共職業安定所に行き、職業紹介を受けることにした
Aさんは治療を受けながら働いていましたが、会社を退職しました。次の①と②はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。
① Aさんが退職すると、療養補償給付の受給権は消滅する
× 労災保険の給付を受ける権利は、退職によって変更されません。労働者災害補償保険法第12条の5に定められています。
② 療養補償給付は、Aさんが退職した日から1年間に限って行われる
× 療養補償給付は、傷病が治ゆするまで続きます。在職しているかどうかは関係しません。
基本手当の所定給付日数は何で決まるのか
登場人物を確認する
Aさん 35歳 職場で嫌がらせを受けて適応障害を生じ、業務災害の認定を受けた
労災病院で治療を受けながら就業を続けていたが、15年間勤続した会社を退職した
離職票を持って公共職業安定所に行き、職業紹介を受けることにした
所定給付日数は( )( )( )の3つの要素で決まる
被保険者であった期間、離職時の年齢、離職理由 倒産や解雇などで離職した特定受給資格者は、自己都合で退職した人より所定給付日数が多くなります。
基本手当が支給されないのはどういう場合か
登場人物を確認する
Aさん 35歳 職場で嫌がらせを受けて適応障害を生じ、業務災害の認定を受けた
労災病院で治療を受けながら就業を続けていたが、15年間勤続した会社を退職した
離職票を持って公共職業安定所に行き、職業紹介を受けることにした
Aさんは離職票を持って公共職業安定所に行き、職業紹介を受けることにしました。次の①から④はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。
① 離職票を持って公共職業安定所に行けば、求職の申込みをしなくても基本手当を受けられる
× 基本手当は、求職の申込みをして、働く意思と能力がありながら職業に就けない状態にあると認められたときに支給されます。
② 正当な理由なく紹介された職業に就くことを拒むと、基本手当は1か月間支給されない
○ 公共職業安定所の紹介した職業に就くことを正当な理由なく拒んだときは、拒んだ日から1か月間、基本手当が支給されません。
③ 正当な理由なく、公共職業安定所の指示した公共職業訓練を受けることを拒んだ場合も、1か月間支給されない
○ 紹介された職業を拒んだ場合と同じく、1か月間支給されません。
④ 会社から解雇された場合は、給付制限は行われない
× 自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合は、1か月間支給されません。
雇用保険についての記事はこちら
→ 雇用保険の被保険者|保険者・保険料と適用の要件を整理
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