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事例問題が苦手だという方は多いです。何とか事例問題に慣れようと、過去問を繰り返し読んで、正解の文章まで覚えてしまった方もおられるでしょう。それでも、本当に理解していることにはなりません。○になる理由、×になる理由、その論点がわかって、その事例全体を理解したことになります。ところが、過去問題集の解説は数行しかなく、それぞれの選択肢の正誤を分けている論点のすべてを網羅しているものはありません。そこで、この記事では事例問題を取り上げ、論点を一つ一つ丁寧に並べて、正誤の判断ができる力を養っていくお手伝いをします。
進め方は次のとおりです。はじめに事例と選択肢、そして正答を示します。そのあと、選択肢ごとに、その正誤を分けている論点を一問一答の形で整理します。事例問題の正答をただ確認する記事ではありませんので、それぞれの選択肢について、なぜ○なのか、なぜ×なのかの理由をじっくり確認しながら進めてください。
第38回 問題36
事例を読んで、Aさんの家族に適用される社会保障制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
5年前に夫と死別したAさん(40歳)は、遺族基礎年金を受給しながら中学生の子どもBさんと2人で暮らしていたが、会社員のCさんと再婚し3人で一緒に暮らすようになった。Cさんは健康保険組合の被保険者である。AさんとBさんはCさんに生計を維持されるようになったが、CさんとBさんは養子縁組をする予定はない。
1 再婚前に、Aさんは児童扶養手当の支給を受けることができた。
2 再婚前に、Aさんは寡婦年金の支給を受けることができた。
3 再婚後も、Aさんは引き続き遺族基礎年金の支給を受けることができる。
4 再婚後は、AさんとBさんはCさんの健康保険の被扶養者になることができる。
5 再婚後は、AさんではなくCさんが児童手当の支給を受けることになる。
正答 4
ここから、選択肢の正誤をわけている論点を確認していきます。金額は2026年度(令和8年度)のものです。
選択肢の論点を確認する
Aさんが遺族基礎年金を受給できていたのはなぜか
登場人物を確認する
Aさん 40歳 5年前に夫と死別し、その後Cさんと再婚
Bさん Aさんの子ども 中学生 Cさんとは養子縁組をしていない
Cさん Aさんの再婚相手 会社員 健康保険組合の被保険者
Aさんは、夫と死別したあと、遺族基礎年金を受給していました。受給できていた理由として、次の①から⑤はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。選択肢を押すと答えが出ます。
① 夫と死別した配偶者であれば、誰でも受給できるから
× 遺族基礎年金を受給できるのは、亡くなった人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。子がいない配偶者は受給できません。
② 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子がいるから
○ 支給の対象となる子は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子です。障害等級1級・2級に該当する場合は20歳未満です。中学生のBさんはこれにあたります。
③ 子どもの年齢は関係なく、配偶者であれば受給できるから
× 子が18歳に達する日以後の最初の3月31日を過ぎると、配偶者の遺族基礎年金は失権します。子の年齢は受給に関係します。
④ Aさんの収入が、生計維持の要件を満たしていたから
○ 生計維持の要件として、前年の収入が850万円未満、所得で655万5千円未満であることが求められます。
⑤ 遺族基礎年金は、収入にかかわらず受給できるから
× ④のとおり、収入の要件があります。
Aさんが再婚前に児童扶養手当を受給できなかったのはなぜか
登場人物を確認する
Aさん 40歳 5年前に夫と死別し、その後Cさんと再婚
Bさん Aさんの子ども 中学生 Cさんとは養子縁組をしていない
Cさん Aさんの再婚相手 会社員 健康保険組合の被保険者
Aさんは中学生のBさんと2人で暮らす母子世帯でしたが、児童扶養手当を受給できませんでした。その理由として、次の①から⑤はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。
① Bさんの年齢が、児童扶養手当の対象年齢を超えていたから
× 児童扶養手当の対象となる児童は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童です。障害がある場合は20歳未満です。中学生のBさんは対象年齢に含まれます。
② 死別による母子世帯は、児童扶養手当の対象にならないから
× 父または母が死亡した児童も児童扶養手当の対象です。離婚による母子世帯に限られてはいません。
③ 公的年金を受給していると、金額にかかわらず児童扶養手当は支給停止されるから
× 2014年(平成26年)11月分まではそのしくみでしたが、同年12月分から、年金の金額が児童扶養手当の金額を下回る場合には、その差額が支給される形になりました。
④ 遺族基礎年金の金額が、児童扶養手当の金額を上回っていたから
○ 子が1人いる配偶者の遺族基礎年金は、基本額847,300円に子の加算243,800円を加えた年額1,091,100円で、月におよそ90,900円です。児童扶養手当は子が1人で全部支給の場合に月48,050円です。年金の金額が上回るため、児童扶養手当は全額が支給停止となります。
⑤ 児童扶養手当は、母ではなく児童本人に支給されるものだから
× 児童扶養手当は、児童を監護する母、児童を監護し生計を同じくする父、または父母にかわって児童を養育する人に支給されます。Aさんが受給者になります。
社会手当についての記事はこちら
→ 児童手当・児童扶養手当・障害児福祉手当等|社会手当の対象者・年齢・所得制限を解説
寡婦年金を受給できるのはどういう場合か
登場人物を確認する
Aさん 40歳 5年前に夫と死別し、その後Cさんと再婚
Bさん Aさんの子ども 中学生 Cさんとは養子縁組をしていない
Cさん Aさんの再婚相手 会社員 健康保険組合の被保険者
Aさんは再婚前、寡婦年金を受給していません。寡婦年金の要件を順に確認してください。
死亡した夫が( )被保険者であったこと
国民年金の第1号 第1号被保険者としての保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせて10年以上ある夫が亡くなったときに、妻に支給されます。
婚姻期間が( )以上あること
10年 婚姻関係が10年以上続いていたことが必要です。
支給されるのは妻が( )歳から( )歳になるまでの間
60歳から65歳 60歳から65歳になるまでの間に支給されます。
遺族基礎年金を受けられる場合、寡婦年金と両方を受けられるか
受けられません どちらか一方を選びます。
Aさんは40歳ですので、支給される年齢に達していません。
国民年金の被保険者についての記事はこちら
→ 国民年金の被保険者|第1号・第2号・第3号を事例で確認
再婚後にAさんが遺族基礎年金を受けられなくなるのはなぜか
登場人物を確認する
Aさん 40歳 5年前に夫と死別し、その後Cさんと再婚
Bさん Aさんの子ども 中学生 Cさんとは養子縁組をしていない
Cさん Aさんの再婚相手 会社員 健康保険組合の被保険者
Aさんは、Cさんと再婚したことで遺族基礎年金を受けられなくなります。その理由として、次の①から⑤はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。
① 遺族基礎年金は、死亡してから5年間しか受給できないから
× 遺族基礎年金に、受給できる期間の定めはありません。Aさんが受けられなくなったのは、再婚したからです。
② 配偶者が婚姻したときは、遺族基礎年金の受給権が消滅するから
○ 国民年金法第40条第1項で、受給権者が婚姻したときは受給権が消滅すると定められています。届出をしていない事実上の婚姻関係も含まれます。
③ Bさんが中学生だから
× 子が18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあれば、遺族基礎年金は受けられます。Bさんが中学生であることは、Aさんが受けられなくなる理由になりません。
④ CさんとBさんが養子縁組をしていないから
× 養子縁組をしていないことは、Aさんの受給権の消滅と関係しません。Aさんが婚姻したことで消滅します。
⑤ 再婚相手のCさんの年齢が、要件に合わないから
× 遺族基礎年金の受給権の消滅に、再婚相手の年齢は関係しません。
AさんとBさんがCさんの健康保険の被扶養者になれるのはなぜか
登場人物を確認する
Aさん 40歳 5年前に夫と死別し、その後Cさんと再婚
Bさん Aさんの子ども 中学生 Cさんとは養子縁組をしていない
Cさん Aさんの再婚相手 会社員 健康保険組合の被保険者
AさんとBさんは、Cさんの健康保険の被扶養者になることができます。その理由として、次の①から⑤はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。
① 同居していれば、親族でなくても被扶養者になれるから
× 同居しているだけでは被扶養者になりません。被保険者の三親等内の親族であることが必要です。
② AさんはCさんの配偶者であり、BさんはCさんと同居している三親等内の親族だから
○ 配偶者、子、孫、兄弟姉妹、直系尊属は、同居していなくても生計を維持されていれば被扶養者になります。それ以外の三親等内の親族は、同一世帯であることが必要です。BさんはCさんと養子縁組をしていないため子にはあたらず、配偶者の子として一親等の姻族になります。Cさんと同居し、生計を維持されていますので、被扶養者になれます。
③ Bさんが中学生だから
× 被扶養者になれるかどうかは、続柄と収入、生計を維持されているかどうかで決まります。年齢で決まるものではありません。
④ AさんがCさんの被扶養者になっているから
× 母が被扶養者であることを理由に、子が被扶養者になるわけではありません。BさんがCさんに生計を維持されているかどうかで判断されます。
⑤ Cさんの年収が高いから
× AさんとBさんがCさんに生計を維持されていることは必要ですが、被保険者の年収が高いことが要件ではありません。
健康保険の被扶養者についての記事はこちら
→ 被用者保険・健康保険の被扶養者要件|続柄・生計維持・国内居住の3要件
児童手当をCさんではなくAさんが受け取るのはなぜか
登場人物を確認する
Aさん 40歳 5年前に夫と死別し、その後Cさんと再婚
Bさん Aさんの子ども 中学生 Cさんとは養子縁組をしていない
Cさん Aさんの再婚相手 会社員 健康保険組合の被保険者
再婚後も、児童手当を受け取るのはAさんです。その理由として、次の①から⑤はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。
① Cさんの所得が、児童手当の所得制限を超えているから
× 児童手当の所得制限は、2024年(令和6年)10月から撤廃されています。
② Bさんを監護し、Bさんと生計を同じくしているのがAさんだから
○ 児童手当を受け取るのは、児童を監護し、児童と生計を同じくする父母、未成年後見人、父母指定者です。BさんについてこれにあたるのはAさんです。
③ Cさんは養子縁組をしていないため、Bさんの父にあたらないから
○ Cさんは養子縁組をしていないためBさんの父ではなく、未成年後見人でも父母指定者でもありません。Bさんと生計を同じくしているだけでは受給者になりません。
④ AさんとBさんが、Cさんの健康保険の被扶養者になっているから
× 健康保険の被扶養者であるかどうかと、児童手当を誰が受け取るかは別のことです。
⑤ 児童手当は、母に支給されると定められているから
× 母に支給されると定められているのではありません。父でも受給者になります。この事例では、Bさんの父は死亡していて、Cさんは養子縁組をしていないため父にあたりません。
社会手当についての記事はこちら
→ 児童手当・児童扶養手当・障害児福祉手当等|社会手当の対象者・年齢・所得制限を解説
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