この記事の使い方
事例問題が苦手だという方は多いです。何とか事例問題に慣れようと、過去問を繰り返し読んで、正解の文章まで覚えてしまった方もおられるでしょう。それでも、本当に理解していることにはなりません。○になる理由、×になる理由、その論点がわかって、その事例全体を理解したことになります。ところが、過去問題集の解説は数行しかなく、それぞれの選択肢の正誤を分けている論点のすべてを網羅しているものはありません。そこで、この記事では事例問題を取り上げ、論点を一つ一つ丁寧に並べて、正誤の判断ができる力を養っていくお手伝いをします。
進め方は次のとおりです。はじめに事例と選択肢、そして正答を示します。そのあと、選択肢ごとに、その正誤を分けている論点を一問一答の形で整理します。事例問題の正答をただ確認する記事ではありませんので、それぞれの選択肢について、なぜ○なのか、なぜ×なのかの理由をじっくり確認しながら進めてください。
第35回 問題79
事例を読んで、成年後見人の利益相反状況に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
共同生活援助(グループホーム)で暮らすAさん(知的障害、52歳)には弟のBさんがおり、BさんがAさんの成年後見人として選任されている。先頃、Aさん兄弟の父親(80歳代)が死去し、兄弟で遺産分割協議が行われることとなった。
1 Aさんは、特別代理人の選任を請求できる。
2 Bさんは、成年後見監督人が選任されていない場合、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
3 Bさんは、遺産分割協議に当たり、成年後見人を辞任しなければならない。
4 特別代理人が選任された場合、Bさんは、成年後見人としての地位を失う。
5 特別代理人が選任された場合、特別代理人は、遺産分割協議に関する事項以外についても代理することができる。
正答 2
ここから、選択肢の正誤をわけている論点を確認していきます。
選択肢の論点を確認する
特別代理人は誰が請求するのか
登場人物を確認する
Aさん 52歳 知的障害 グループホームで暮らしている
Bさん Aさんの弟 Aさんの成年後見人に選任されている
父親 80歳代 先頃死去し、AさんとBさんで遺産分割協議を行うことになった
Aさんの父親が亡くなり、AさんとBさんで遺産分割協議を行うことになりました。次の①から③はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。選択肢を押すと答えが出ます。
① 遺産分割協議は利益相反にあたらないので、特別代理人は不要である
× AさんとBさんは、同じ相続の当事者です。一方の取り分が増えれば他方の取り分が減りますので、利益相反にあたります。BさんがAさんを代理して協議に加わると、自分に有利な内容にすることができてしまいます。
② 特別代理人は必要だが、Aさんには知的障害があるため請求できない
× 請求できないのは、障害があるからではありません。特別代理人の選任を家庭裁判所に請求するのは成年後見人です。Aさん本人は請求する立場にありません。
③ 特別代理人が必要な場合、成年後見人が自ら家庭裁判所に請求する
○ 利益相反にあたる行為について、成年後見人が家庭裁判所に特別代理人の選任を請求します。この事例では、BさんがAさんのために請求します。
成年後見監督人が選任されている場合はどうなるのか
登場人物を確認する
Aさん 52歳 知的障害 グループホームで暮らしている
Bさん Aさんの弟 Aさんの成年後見人に選任されている
父親 80歳代 先頃死去し、AさんとBさんで遺産分割協議を行うことになった
選択肢2は、成年後見監督人が選任されていない場合という条件がついています。成年後見監督人がいる場合とどう違うのか、次の①から④で確認してください。
① 成年後見監督人がいてもいなくても、利益相反の場合は特別代理人が必要である
× 成年後見監督人がいる場合は、成年後見監督人が本人を代表します。特別代理人の選任は必要ありません。
② 成年後見監督人がいても、Aさん本人が希望した場合は特別代理人が必要である
× 本人の希望で決まるものではありません。成年後見監督人が選任されているかどうかで決まります。
③ 遺言書に特別代理人を選任するよう書かれていれば、特別代理人が必要である
× 遺言書の記載で決まるものではありません。成年後見監督人が選任されているかどうかで決まります。
④ 成年後見監督人が選任されている場合は、特別代理人は不要である
○ 成年後見監督人が選任されているときは、成年後見監督人が本人を代表します。特別代理人を選任する必要はありません。
利益相反があるとき、成年後見人は何をするのか
登場人物を確認する
Aさん 52歳 知的障害 グループホームで暮らしている
Bさん Aさんの弟 Aさんの成年後見人に選任されている
父親 80歳代 先頃死去し、AさんとBさんで遺産分割協議を行うことになった
Bさんは、Aさんの成年後見人でありながら、自分も相続人として協議に加わります。このとき、Bさんはどうするのでしょうか。
① 成年後見人を辞任する
× 辞任する必要はありません。成年後見人の辞任は、正当な事由があるときに家庭裁判所の許可を得て行うものです。
② 家庭裁判所に成年後見監督人の選任を申し立てる
× 利益相反にあたる行為について申し立てるのは、特別代理人の選任です。成年後見監督人がすでに選任されている場合は、成年後見監督人が本人を代表しますので、申立ては必要ありません。
③ 家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる
○ 利益相反にあたるその行為について、特別代理人がAさんを代理します。Bさんは成年後見人のままです。
特別代理人が選任されたあと、どうなるのか
登場人物を確認する
Aさん 52歳 知的障害 グループホームで暮らしている
Bさん Aさんの弟 Aさんの成年後見人に選任されている
父親 80歳代 先頃死去し、AさんとBさんで遺産分割協議を行うことになった
家庭裁判所が特別代理人を選任しました。BさんとAさんの関係、特別代理人ができることについて、次の①から③はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。
① Bさんは成年後見人をやめることになる
× Bさんは成年後見人のままです。特別代理人が選任されても、成年後見人としての地位は失いません。
② Bさんは成年後見人のままである
○ 特別代理人は、利益相反にあたるその行為についてAさんを代理する人です。Bさんの地位は変わりません。
③ 特別代理人は、選任されている間、Aさんの財産について何でも代理できる
× 特別代理人が代理できるのは、選任の対象となった遺産分割協議に関する事項に限られます。それ以外の事項は、Bさんが成年後見人として代理します。
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事例問題が苦手だという方は多いです。何とか事例問題に慣れようと、過去問を繰り返し読んで、正解の文章まで覚えてしまった方もおられるでしょう。それでも、本当に理解していることにはなりません。○になる理由、×になる理由、その論点がわかって、その事例全体を理解したことになります。ところが、過去問題集の解説は数行しかなく、それぞれの選択肢の正誤を分けている論点のすべてを網羅しているものはありません。そこで、この記事では事例問題を取り上げ、論点を一つ一つ丁寧に並べて、正誤の判断ができる力を養っていくお手伝いをします。
進め方は次のとおりです。はじめに事例と選択肢、そして正答を示します。そのあと、選択肢ごとに、その正誤を分けている論点を一問一答の形で整理します。事例問題の正答をただ確認する記事ではありませんので、それぞれの選択肢について、なぜ○なのか、なぜ×なのかの理由をじっくり確認しながら進めてください。
第35回 問題79
事例を読んで、成年後見人の利益相反状況に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
共同生活援助(グループホーム)で暮らすAさん(知的障害、52歳)には弟のBさんがおり、BさんがAさんの成年後見人として選任されている。先頃、Aさん兄弟の父親(80歳代)が死去し、兄弟で遺産分割協議が行われることとなった。
1 Aさんは、特別代理人の選任を請求できる。
2 Bさんは、成年後見監督人が選任されていない場合、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
3 Bさんは、遺産分割協議に当たり、成年後見人を辞任しなければならない。
4 特別代理人が選任された場合、Bさんは、成年後見人としての地位を失う。
5 特別代理人が選任された場合、特別代理人は、遺産分割協議に関する事項以外についても代理することができる。
正答 2
ここから、選択肢の正誤をわけている論点を確認していきます。
選択肢の論点を確認する
特別代理人は誰が請求するのか
登場人物を確認する
Aさん 52歳 知的障害 グループホームで暮らしている
Bさん Aさんの弟 Aさんの成年後見人に選任されている
父親 80歳代 先頃死去し、AさんとBさんで遺産分割協議を行うことになった
Aさんの父親が亡くなり、AさんとBさんで遺産分割協議を行うことになりました。次の①から③はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。選択肢を押すと答えが出ます。
① 遺産分割協議は利益相反にあたらないので、特別代理人は不要である
× AさんとBさんは、同じ相続の当事者です。一方の取り分が増えれば他方の取り分が減りますので、利益相反にあたります。BさんがAさんを代理して協議に加わると、自分に有利な内容にすることができてしまいます。
② 特別代理人は必要だが、Aさんには知的障害があるため請求できない
× 請求できないのは、障害があるからではありません。特別代理人の選任を家庭裁判所に請求するのは成年後見人です。Aさん本人は請求する立場にありません。
③ 特別代理人が必要な場合、成年後見人が自ら家庭裁判所に請求する
○ 利益相反にあたる行為について、成年後見人が家庭裁判所に特別代理人の選任を請求します。この事例では、BさんがAさんのために請求します。
成年後見監督人が選任されている場合はどうなるのか
登場人物を確認する
Aさん 52歳 知的障害 グループホームで暮らしている
Bさん Aさんの弟 Aさんの成年後見人に選任されている
父親 80歳代 先頃死去し、AさんとBさんで遺産分割協議を行うことになった
選択肢2は、成年後見監督人が選任されていない場合という条件がついています。成年後見監督人がいる場合とどう違うのか、次の①から④で確認してください。
① 成年後見監督人がいてもいなくても、利益相反の場合は特別代理人が必要である
× 成年後見監督人がいる場合は、成年後見監督人が本人を代表します。特別代理人の選任は必要ありません。
② 成年後見監督人がいても、Aさん本人が希望した場合は特別代理人が必要である
× 本人の希望で決まるものではありません。成年後見監督人が選任されているかどうかで決まります。
③ 遺言書に特別代理人を選任するよう書かれていれば、特別代理人が必要である
× 遺言書の記載で決まるものではありません。成年後見監督人が選任されているかどうかで決まります。
④ 成年後見監督人が選任されている場合は、特別代理人は不要である
○ 成年後見監督人が選任されているときは、成年後見監督人が本人を代表します。特別代理人を選任する必要はありません。
利益相反があるとき、成年後見人は何をするのか
登場人物を確認する
Aさん 52歳 知的障害 グループホームで暮らしている
Bさん Aさんの弟 Aさんの成年後見人に選任されている
父親 80歳代 先頃死去し、AさんとBさんで遺産分割協議を行うことになった
Bさんは、Aさんの成年後見人でありながら、自分も相続人として協議に加わります。このとき、Bさんはどうするのでしょうか。
① 成年後見人を辞任する
× 辞任する必要はありません。成年後見人の辞任は、正当な事由があるときに家庭裁判所の許可を得て行うものです。
② 家庭裁判所に成年後見監督人の選任を申し立てる
× 利益相反にあたる行為について申し立てるのは、特別代理人の選任です。成年後見監督人がすでに選任されている場合は、成年後見監督人が本人を代表しますので、申立ては必要ありません。
③ 家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる
○ 利益相反にあたるその行為について、特別代理人がAさんを代理します。Bさんは成年後見人のままです。
特別代理人が選任されたあと、どうなるのか
登場人物を確認する
Aさん 52歳 知的障害 グループホームで暮らしている
Bさん Aさんの弟 Aさんの成年後見人に選任されている
父親 80歳代 先頃死去し、AさんとBさんで遺産分割協議を行うことになった
家庭裁判所が特別代理人を選任しました。BさんとAさんの関係、特別代理人ができることについて、次の①から③はそれぞれ○でしょうか、×でしょうか。
① Bさんは成年後見人をやめることになる
× Bさんは成年後見人のままです。特別代理人が選任されても、成年後見人としての地位は失いません。
② Bさんは成年後見人のままである
○ 特別代理人は、利益相反にあたるその行為についてAさんを代理する人です。Bさんの地位は変わりません。
③ 特別代理人は、選任されている間、Aさんの財産について何でも代理できる
× 特別代理人が代理できるのは、選任の対象となった遺産分割協議に関する事項に限られます。それ以外の事項は、Bさんが成年後見人として代理します。
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