医療保険と労災保険の適用範囲
疾病や負傷によって医療が必要になったときは医療保険から療養の給付を受けますが、健康保険法をはじめとする医療保険各法には、業務災害と通勤災害によるものは除くと規定されています。
そのため、業務災害や通勤災害によるけがや病気については、医療保険からではなく労災保険から療養に係る給付を受けることになります。
労災保険の療養に係る給付には自己負担がありませんが、医療保険であれば3割の自己負担があります。
年金は両方受給できます
労働災害によるけがで障害を負った労働者が、厚生年金保険にも加入していたとします。この場合、労災保険の障害補償年金と、障害厚生年金・障害基礎年金の両方の受給権が生じます。どちらの保険にも加入して保険料を負担しており、それぞれの給付を受ける資格があるからです。
ただし、どちらの年金も、同じ労働災害によって障害を負ったことに対して支給されるものですので、両方を満額支給すると補償が重複します。そこで、障害厚生年金と障害基礎年金は満額のまま支給し、労災保険の障害補償年金を減額するという調整が行われます。一部を調整するものであって、全額の支給を停止されるわけではありません。
調整の対象になるのは、障害補償年金と障害厚生年金・障害基礎年金、遺族補償年金と遺族厚生年金・遺族基礎年金の組み合わせです。
過去問を確認しましょう
第33回問題53
障害児・者に係る現金給付に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 出生時から重度の障害があり、保険料を納めることができなかった障害者は、保険料を追納した場合に限り、障害基礎年金を受給することができる。
2 在宅の重度障害者は、所得にかかわらず特別障害者手当を受給できる。
3 障害厚生年金が支給される場合、労働者災害補償保険の障害補償年金は全額支給停止される。
4 特別児童扶養手当を受給している障害児の父又は母が、児童手当の受給要件を満たす場合には、児童手当を併せて受給できる。
5 障害児福祉手当は、重度障害児の養育者に対し支給される手当である。
解説
正答は4です。
1→× 20歳前に初診日がある場合は、保険料の納付を要件とせずに障害基礎年金が支給されます。
2→× 特別障害者手当には所得制限があります。
3→× 障害厚生年金は満額のまま支給され、減額されるのは労災保険の障害補償年金です。全額の支給を停止されるわけではありません。
4→○ 記述のとおりです。
5→× 障害児福祉手当は、重度障害児本人に支給されます。
第33回問題52
事例を読んで、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
運送会社で正社員として働いているFさんは、合理的な経路及び方法により通勤中、駅の階段で転倒し、負傷した。
1 Fさんの負傷は業務災害ではないので、労災保険の給付は行われない。
2 Fさんの雇用期間が6か月未満である場合、労災保険の給付は行われない。
3 Fさんが療養に係る労災保険の給付を受けられる場合、自己負担は原則1割である。
4 Fさんが療養に係る労災保険の給付を受ける場合、同一の負傷について、健康保険の療養の給付は行われない。
5 Fさんの勤務先が労災保険の保険料を滞納していた場合、労災保険の給付は行われない。
解説
正答は4です。
1→× 通勤災害も労災保険の給付の対象です。
2→× 雇用期間の長さは要件ではありません。
3→× 療養に係る給付に自己負担はありません。
4→○ 記述のとおりです。医療保険各法が業務災害等によるものを除くと規定していますので、健康保険の療養の給付は行われません。
5→× 事業主が保険料を滞納していても、労働者への給付は行われます。


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