社会保障の3つの機能
厚生労働白書は、社会保障の機能を3つに整理しています。生活安定・向上機能、所得再分配機能、経済安定機能です。
生活安定・向上機能は、病気、けが、失業、加齢といった生活上のリスクに対応するものです。医療保険があるから治療を受けられ、雇用保険があるから失業しても当面の生活が続けられるのはこの機能のおかげです。
経済安定機能は、経済の変動が国民生活に及ぼす影響を和らげるものです。景気が悪くなって失業が増えても、雇用保険の給付があれば消費が急激に落ち込むことを防げます。年金も、高齢者の消費を安定させることで経済を下支えしています。
残る所得再分配機能については、次に詳しく確認します。
所得再分配とは
市場で働いて得られる所得は、人によって差があります。この差をそのままにせず、税や社会保険料として集めたものを給付として配り直す仕組みが所得再分配です。
所得再分配は、移動の方向によって呼び方が変わります。
・垂直的再分配は、高所得者から低所得者への移転です。累進課税を財源とする生活保護が例にあたります。
・水平的再分配は、同じ所得階層の中での移転です。健康な人から病気の人へ、子どものいない世帯から子どものいる世帯へという移転が例にあたります。
・世代間再分配は、現役世代から高齢世代への移転です。
現物給付でも所得再分配は行われます
所得再分配は、現金を配ることだけを指すものではありません。医療保険の療養の給付や介護保険のサービスのような現物給付で再分配されることもあります。
医療保険では、加入者が納めた保険料を財源として、実際に医療を受けた人が給付を受けます。健康な人が納めた保険料が、病気の人の治療費の一部に充当されているということです。治療を受けた側からすると、現金が本人のお財布に入っているわけではありませんが、医療サービスとして所得(お金)が移動しています。
世代間再分配が行われるのは賦課方式
公的年金の財政方式には、賦課方式と積立方式があります。
賦課方式は、現役世代が納めた保険料を、その時点の高齢者への給付に充てる方式です。現役世代から高齢世代への移転が起きますので、世代間の所得再分配が行われます。日本の公的年金は賦課方式を基本としています。
積立方式は、自分が納めた保険料を積み立てておき、それを自分の老後の給付に充てる方式です。同じ人の中で若いときから高齢期へ所得が移るだけですので、世代間の再分配は行われません。
過去問を確認しましょう
第33回問題50
「平成29年版厚生労働白書」における社会保障の役割と機能などに関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 戦後の社会保障制度の目的は、「広く国民に安定した生活を保障するもの」であったが、近年では「生活の最低限度の保障」へと変わってきた。
2 1950年(昭和25年)の「社会保障制度に関する勧告」における社会保障制度の定義には、社会保険、国家扶助、治安維持及び社会福祉が含まれている。
3 社会保障には、生活のリスクに対応し、生活の安定を図る「生活安定・向上機能」がある。
4 社会保障の「所得再分配機能」は、現金給付にはあるが、医療サービス等の現物給付にはない。
5 社会保障には、経済変動の国民生活への影響を緩和し、経済を安定させる「経済安定機能」がある。
解説
正答は3と5です。
1→× 順序が逆です。戦後は生活の最低限度の保障が目的でしたが、近年は広く国民に安定した生活を保障するものへと変わってきました。
2→× 1950年勧告の定義に治安維持は含まれていません。含まれるのは社会保険、国家扶助、公衆衛生及び医療、社会福祉です。
3→○ 記述のとおりです。
4→× 現物給付によっても所得再分配は行われます。
5→○ 記述のとおりです。
1950年勧告についての記事はこちらです。
第36回問題29
所得の再分配に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 市場での所得分配によって生じる格差を是正する機能を有しうる。
2 現物給付を通して所得が再分配されることはない。
3 同一の所得階層内部での所得の移転を,垂直的な所得再分配という。
4 積立方式による公的年金では,世代間の所得再分配が行われる。
5 高所得者から低所得者への所得の移転を,水平的な所得再分配という。
解説
正答は1です。
1→○ 記述のとおりです。
2→× 医療サービスなどの現物給付によっても所得は再分配されます。
3→× 同一の所得階層内部での移転は水平的再分配です。
4→× 世代間の所得再分配が行われるのは賦課方式です。
5→× 高所得者から低所得者への移転は垂直的再分配です。
この問題は現代社会と福祉(現在の社会福祉の原理と政策)で出題されたものです。


コメント