セルフヘルプグループと体験的知識|ボルクマン・ソーシャルワーカーの関わり方

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ソーシャルワーク
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事例

病院で働く医療ソーシャルワーカーのMさんは、人工透析を始めたばかりのKさんから「同じように透析を受けている人と話してみたい」と相談を受けました。ほかの患者からも同じ声を聞いていたMさんは、患者同士の会の立ち上げを手伝いました。1年後、会の中心メンバーから「会の進め方をめぐって意見が分かれ、話し合いがまとまらない」と相談がありました。

この記事では、この事例をもとに、セルフヘルプグループの特徴、体験的知識、ソーシャルワーカーの関わり方、グループワークとの違いをご紹介します。その後に、セルフヘルプグループについて問われた過去問を掲載していますので、実際に解けるかどうかを確かめながら読み進めてください。

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セルフヘルプグループとは

セルフヘルプグループは、同じ問題や体験をもつ当事者が自発的に集まり、互いに支え合うグループです。自助グループともいいます。事例では、透析を受けているKさん(当事者)たちの患者会がセルフヘルプグループです。

依存症の人の会、難病の患者会、障害のある子どもの親の会、家族を亡くした人の会などがあります。

セルフヘルプグループには、次のような特徴があります。

①同じ体験をもつ当事者が集まる
②メンバー同士は対等な関係である
③当事者自身がグループを運営する
④入会も退会も本人が決める

Mさん(ソーシャルワーカー)は会の立ち上げを手伝いましたが、会を運営するのはKさんたちメンバーです。会に入るかどうか、やめるかどうかも、患者自身が決めます。

国家試験では、セルフヘルプグループの特徴について次のように出題されました。
×「セルフヘルプグループは、既に組織的に活動しているグループを基に形成される。」(第32回問題115)
×「セルフヘルプグループは、多様な専門性を持つ専門職による、多職種連携の一形態である。」(第32回問題115)
×「セルフヘルプグループでは、メンバー間の上下関係を活用する。」(第32回問題115)
×「セルフヘルプグループへの入退会は、グループ運営を円滑に行うために、ソーシャルワーカーがその可否を決定する。」(第32回問題115)

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体験的知識

体験的知識は、同じ体験をもつメンバーが、体験を分かち合い、積み重ね、吟味する中で生まれる知識です。セルフヘルプグループのメンバーは、この体験的知識を使って問題に対処します。

事例でいえば、「透析のある日は、こう過ごすと体が楽になった」「仕事との両立は、職場にこう伝えた」といった知恵が体験的知識です。医師や看護師の説明とは別に、実際に透析を受けている人だからこそ持っている知識です。

ボルクマンの体験的知識と専門的知識

ボルクマンは、セルフヘルプグループの体験的知識を、専門職の専門的知識と比べて説明しました。

①専門的知識:理論や標準化された方法、エビデンスに価値を置く
②体験的知識:実践的であることに価値を置き、本人の感情的な側面や自己評価が加わっている。メンバーが行動を通して学び、変化することで培われる。「今、ここ」での具体的な行動と、その結果を重視する

体験的知識と専門的知識は、互いに補い合います。Kさん(当事者)は、医師から受ける治療の説明と、患者会で聞く仲間の体験の両方を活用して、自身の生活を組み立てていきます。

国家試験では、体験的知識について次のように出題されました。
○「セルフヘルプグループのメンバーは、特定の体験を共有し、蓄積し吟味することによって生み出される体験的知識を活用し、問題に対処する。」(第32回問題115)
○「「体験的知識」では,自分の感情的側面や自己評価が加味されている。」(第38回問題74)
×「「専門的知識」は,メンバーが行動することを通して学び,変化することで培われる。」(第38回問題74)
×「「専門的知識」では,“ 今,ここ ” での具体的な行動と次の観察可能な結果が重視される。」(第38回問題74)
×「「体験的知識」と「専門的知識」は,相互排他的である。」(第38回問題74)

第38回問題74の×の選択肢は、体験的知識の説明を専門的知識の説明として書いたものです。

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ソーシャルワーカーの関わり方

ソーシャルワーカーは、セルフヘルプグループを外から支えます。主な関わりは次のとおりです。

①同じ悩みをもつ人と出会いたいという相談に応え、グループの立ち上げを支援する
②グループの情報を、必要としている人に伝える
③運営について相談を受けたときは、メンバー自身が話し合って決められるように助言する
④グループだけでは応えきれない一人ひとりの困りごとには、ほかの社会資源を紹介する

事例で、会の進め方をめぐって意見が分かれたとき、Mさん(ソーシャルワーカー)は、会の目的やルールをメンバー同士で話し合うように助言します。会のことを決めるのは、Kさんたちメンバーです。

国家試験では、ソーシャルワーカーの関わり方について次のように出題されました。
○メンバー同士でグループの目的やルールについて話し合うことを助言する。(第35回問題112)
○「同じような悩みをお持ちの患者さんの集まりを持ちましょう」と提案する(第31回問題114)
○院内の同じような課題を抱えた糖尿病患者の自助グループの結成を支援する。(第38回問題118)
×グループの司会進行を引き受け、相互援助システムづくりを行う。(第35回問題112)
×批判を繰り返すメンバーに退会を勧めるための話合いの場を、中心メンバーと一緒に設ける。(第35回問題112)
×「カルテを調べて同じ病気の患者さんの連絡先をお教えします」と発言する(第31回問題114)

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グループワークとの違い

グループワークは、グループワーカーが目的をもってグループをつくり、援助媒体を活用しながらメンバーを支援する方法です。セルフヘルプグループは、当事者が自分たちで集まり、自分たちで運営します。

・グループワーク:グループワーカーがグループをつくり、支援の中心になる
・セルフヘルプグループ:当事者がグループをつくり、運営する。ソーシャルワーカーは外から支える

グループワークについての記事はこちら
→グループワークの原則と援助媒体|コノプカの14原則・プログラム活動・相互作用

過去問を解いてみましょう

第38回問題74

次の記述のうち,ボルクマン(Borkman, T.)によるセルフヘルプ・グループの「体験的知識」(Experiential Knowledge)と「専門的知識」(Professional Knowledge)に関する説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「専門的知識」では,理論的,標準化された方法やエビデンスよりも実践的であることに価値が置かれている。
2 「専門的知識」は,メンバーが行動することを通して学び,変化することで培われる。
3 「体験的知識」では,自分の感情的側面や自己評価が加味されている。
4 「専門的知識」では,“ 今,ここ ” での具体的な行動と次の観察可能な結果が重視される。
5 「体験的知識」と「専門的知識」は,相互排他的である。

解説

1→×専門的知識は、理論や標準化された方法、エビデンスに価値を置きます。実践的であることに価値を置くのは体験的知識です。
2→×行動を通して学び、変化することで培われるのは体験的知識です。
3→○体験的知識には、本人の感情的な側面や自己評価が加わっています。
4→×「今、ここ」での具体的な行動と、その結果を重視するのは体験的知識です。
5→×体験的知識と専門的知識は、互いに補い合います。

第38回問題118

事例を読んで,次の記述のうち,A総合病院のBソーシャルワーカー(社会福祉士)が面接で把握したクライエントニーズへの対応について,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
Cさん(55歳,男性,独居)はA総合病院で5年前に糖尿病と診断された。某メーカーの営業職で多忙な日々を過ごしていたCさんは,血糖値のコントロールも良好ではなく,最近の受診も中断していた。ある日,営業中に倒れ,A総合病院に緊急入院となったCさんは医師から「糖尿病は進行している。しかし,まだ改善の可能性(余地)はある」と告げられた。入院中の糖尿病教室で服薬及び栄養指導を受けたCさんであったが,退院後の生活に不安を抱くようになり,Bの元を訪れ「退院後の生活がとても不安で。元の生活に戻ってはいけないと思うのですが,節制した生活をとても一人では続けていくことができないと感じています」と話した。Bは,Cさん以外の糖尿病患者数人からも同様の話を聞いていた。

1 主治医に現在のCさんの糖尿病の医学的状況について問い合わせる。
2 病院の公開講座で,糖尿病治療に関する医師・患者をシンポジストとするシンポジウムを開催する。
3 不安がなくなるよう繰り返し糖尿病教室に参加するよう勧める。
4 管理栄養士にCさんへの栄養指導上の課題について確認する。
5 院内の同じような課題を抱えた糖尿病患者の自助グループの結成を支援する。

解説

1→×Cさんが訴えているのは、医学的な状況ではなく、節制した生活を一人では続けられないという不安です。
2→○同じ不安をもつ患者が複数いるので、医師と患者が話し合う場をつくり、病院全体の課題として取り上げます。
3→×Cさんは糖尿病教室で服薬と栄養の指導をすでに受けています。そのうえで、一人では続けられないと話しています。
4→×栄養指導の課題を確かめても、一人で続けられないというCさんの不安には応えられません。
5→○同じ課題をもつ患者同士が支え合えるように、自助グループの結成を支援します。

第35回問題112

事例を読んで、X基幹相談支援センターのD社会福祉士によるこの段階における対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
X基幹相談支援センターのD社会福祉士は、買物依存のために家族関係の破綻や生活再建に苦労した人たちから、同じような課題で悩む人たちと経験を分かち合いたいとの相談を受け、自助グループの立ち上げを支援した。1年経ち、中心メンバーから、自助グループ運営の助言を求められた。特にルールを定めず開始したためか、グループでは、他のメンバーへの批判が繰り返され、一部のメンバーは、行政への請願を活動の中心とすることを求めるのだという。

1 経験を分かち合いたいとするグループと行政へ請願するグループへの編成を提案する。
2 批判を繰り返すメンバーに退会を勧めるための話合いの場を、中心メンバーと一緒に設ける。
3 メンバー同士でグループの目的やルールについて話し合うことを助言する。
4 グループの司会進行を引き受け、相互援助システムづくりを行う。
5 家族関係の再構築と生活再建に向け、全メンバーとの個別面接を遂行する。

解説

1→×グループをどう分けるかを決めるのは、メンバー自身です。Dさんが編成を提案するのではありません。
2→×入会も退会も本人が決めます。
3→○グループの目的やルールは、メンバー同士で話し合って決めます。
4→×運営するのはメンバーです。Dさんが司会を引き受けると、運営をメンバーから取り上げることになります。
5→×中心メンバーが求めているのは、グループ運営についての助言です。

第32回問題115

セルフヘルプグループに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 セルフヘルプグループのメンバーは、特定の体験を共有し、蓄積し吟味することによって生み出される体験的知識を活用し、問題に対処する。
2 セルフヘルプグループは、既に組織的に活動しているグループを基に形成される。
3 セルフヘルプグループは、多様な専門性を持つ専門職による、多職種連携の一形態である。
4 セルフヘルプグループでは、メンバー間の上下関係を活用する。
5 セルフヘルプグループへの入退会は、グループ運営を円滑に行うために、ソーシャルワーカーがその可否を決定する。

解説

1→○体験的知識の説明です。
2→×同じ体験をもつ当事者が自発的に集まってつくります。
3→×メンバーは当事者です。専門職の集まりではありません。
4→×メンバー同士は対等な関係です。
5→×入会も退会も本人が決めます。

第31回問題114

事例を読んで、J医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)の応答として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
希少難病を患っているKさんは、J医療ソーシャルワーカーに、「自分は心理的にも社会的にも孤立しているのでとても苦しい。似たような立場の人と話してみたい」と相談した。

1 「同じような悩みをお持ちの患者さんの集まりを持ちましょう」
2 「一人ひとり事情が異なるので、他の人と話すことは難しいです」
3 「病気が関係しているので、相談に乗るには主治医の許可が要ります」
4 「カルテを調べて同じ病気の患者さんの連絡先をお教えします」
5 「思いを聞いてもらえるボランティアをお願いすることもできるかと思います」

解説

1→○似たような立場の人と話したいというKさんの希望に応えて、患者同士が集まる場をつくります。
2→×Kさんの希望を最初から退けています。
3→×Kさんの相談に乗るのに、主治医の許可はいりません。
4→×カルテの情報をKさんに教えることは、ほかの患者の個人情報を漏らすことになります。
5→○孤立して苦しいというKさんの思いを聴く人として、ボランティアという社会資源を紹介します。

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