事例
地域活動支援センターで働く社会福祉士のSさんは、利用者5人のグループで、月2回の料理づくりを始めました。人と関わることに自信のないメンバーが、少しずつ人と関われるようになることがねらいです。メンバーのHさんは人前で話すのが苦手で、いつも一人で黙って野菜を切っています。回を重ねるうちに、作る手順をめぐって、メンバーの間で言い合いも起きるようになりました。
この記事では、この事例をもとに、グループワークの目的、援助媒体、コノプカの原則、グループの中で起きる相互作用、展開過程、グループワークに関わる人物をご紹介します。その後に、グループワークについて問われた過去問を掲載していますので、実際に解けるかどうかを確かめながら読み進めてください。
グループワークとは
グループワークは、グループの中で生まれるメンバー同士の関わりとプログラム活動を使って、メンバー一人ひとりの成長や課題の解決を支援する方法です。グループワークの手法を用いて支援を行う人をグループワーカーといいます。事例では、社会福祉士のSさんがグループワーカー、Hさんたちがメンバーです。
グループワークの目的は、メンバー一人ひとりが社会の中で人と関わり、生活していく力を高めることです。課題を解決する主体は、メンバー自身です。
Sさん(グループワーカー)が料理づくりのグループを始めたのは、料理の腕を上げるためではありません。料理という一つの作業の中で、Hさん(メンバー)たちがほかのメンバーと声をかけ合い、役割を分け合う経験を重ねて、人と関わる力をつけるためです。
国家試験では、グループワークの目的について次のように出題されました。
○「グループワークは、個々のメンバーの社会的に機能する力を高めるために行う。」(第35回問題111)
×「最終目標は、まとまりのあるグループを作ることである。」(第31回問題113)
×「メンバー個々の問題を解決する主体は、ワーカーである。」(第31回問題113)
×「グループワークとは、複数の人を対象に行う集団面接のことである。」(第35回問題111)
グループワークの援助媒体
グループワーカーは、支援のために次の4つを活用します。
①グループワーカーとメンバーの間につくられる援助関係
②メンバー同士の間につくられる相互援助関係
③プログラム活動
④援助の目標を達成するために使う人、物、社会制度などの社会資源
これらを援助媒体といいます。
①のグループワーカーとメンバーの間にあるのが「援助関係」で、②のメンバー同士が助け合う関係が「相互援助関係」です。事例では、Sさん(グループワーカー)とHさん(メンバー)の関係が援助関係、Hさんとほかのメンバーが声をかけ合って作業を進める関係が相互援助関係です。
プログラム活動
プログラム活動は、グループで行う料理、スポーツ、創作、話し合いなどの活動です。プログラム活動は、メンバーの成長という目的を達成するための手段です。前に述べたように、活動をやり遂げることや、料理やスポーツの腕を上げること自体が目的ではありません。
事例でいうと、Hさん(メンバー)がほかのメンバーと「次は何をすればいいですか」と声をかけ合ったり、作業の進み具合を互いに確認し合ったりする過程が大切です。Sさん(グループワーカー)は、Hさんが参加しやすいように、手順を声に出して確認し合う場面をつくり、メンバー一人ひとりの力に合わせて参加の仕方を考えます。
国家試験では、援助媒体とプログラム活動について次のように出題されました。
○「援助目標達成に関わる人、物、社会制度等の社会資源」(第32回問題114)
○「プログラム活動は、グループワークの援助方法の一つである。」(第31回問題113)
×「メンバー間に形成されるソーシャルワーク関係」(第32回問題114)
×「メンバーとグループワーカーの間に形成される相互援助関係」(第32回問題114)
×「グループワークにおけるプログラム活動の実施は、手段ではなく目的である。」(第35回問題111)
×「プログラム活動では、全員が同じ動きを行うことを優先するように求める。」(第36回問題109)
コノプカの原則
コノプカは、グループワークの14の原則を示し、治療教育的グループワークの発展に貢献しました。14の原則は次のとおりです。
①グループ内での個別化:メンバー一人ひとりの違いを認める
②グループの個別化:そのグループが、ほかのグループとは違う特徴をもつことを認める
③メンバーの受容:メンバーをありのままに受け入れる
④グループワーカーとメンバーの援助関係をつくる
⑤メンバー同士の協力関係を促す
⑥必要に応じて、グループの進め方を変える
⑦メンバーが、それぞれの力に応じて参加できるようにする
⑧メンバー自身が、問題を解決する過程に取り組めるようにする
⑨葛藤解決の経験:メンバーが、対立や葛藤を自分たちで解決する経験を積めるようにする
⑩新しい体験の機会を与える
⑪制限の活用:メンバーやグループを守るために、必要な制限を設ける
⑫プログラム活動を目的に合わせて使う
⑬支援の経過を継続して評価する
⑭グループワーカーが、自分自身を支援の道具として意識して使う
葛藤は表に出して扱う
事例で、作る手順をめぐってメンバーが言い合いを始めたとき、Sさん(グループワーカー)は、言い合いを止めて対立がなかったかのように振る舞うのではなく、メンバーそれぞれの言い分を出してもらい、どうすれば全員が納得できるかをメンバー自身が話し合えるようにします。対立や葛藤を自分たちで乗り越える経験が、メンバーの成長につながるからです。
制限を設ける
一方で、相手を責め続けて、言い合いがほかのメンバーを傷つける場面になったときは、Sさんがルールを示して止めます。制限は、メンバーの成長を妨げる行動からグループを守るためのものです。
国家試験では、コノプカの原則について次のように出題されました。
○「グループ活動のルールを決め,メンバーの成長を阻害する場合には制限を設ける。」(第37回問題76)
○「メンバー個人の相違点,及び当該グループが他のグループとは違う特徴をもつグループであることを認識するために個別化を行う。」(第37回問題76)
×「メンバー間の相互作用の中で生じる葛藤は,表面化しないように働きかける。」(第37回問題76)
*葛藤を表に出さないようにする、という×の選択肢は、第31回問題113、第34回問題111、第36回問題109でも形を変えて出題されています。
×「援助者が積極的にプログラムに参加し,メンバーの問題を解決する。」(第37回問題76)
×「メンバー個々に新しい体験を付与することよりも,過去の体験を重視する。」(第37回問題76)
グループの中で起きる相互作用
相互作用は、メンバー同士が影響し合うことです。グループの中では、相互作用によって次のようなことが起こります。
・グループの凝集性が高まると、メンバーの「このグループの一員だ」という所属意識が強くなる
・メンバー同士の相互作用が進むと、グループの中に、暗黙のルールである集団規範が作られる
・グループの中に小さなまとまりであるサブグループができると、その中のメンバー同士の相互作用が増える
・同調圧力は、ほかのメンバーに合わせるよう求める力で、メンバーの自由な相互作用を妨げる
・メンバー同士の関係(役割)が固定していると、助け合う関係は生まれにくくなる
*ここでいう「固定」は、仲が良く関係が深まったという意味ではありません。役割が決まってしまい、メンバーが関わる相手も決まってしまっている状態を指します。
・グループの発達の過程は、メンバー同士の関係の変化に影響を受ける
事例では、回を重ねるうちに「作業を始める前に全員で手順を確認する」という決まりが自然にできてきました。これが集団規範です。Hさん(メンバー)がその決まりに沿って動けるようになり、ほかのメンバーから「ありがとう」と言われるようになると、Hさんの所属意識も強まります。
一方で、いつも同じメンバーが段取りを決め、ほかのメンバーは指示に従うだけという関係が続くと、指示を受ける側のメンバーが誰かを手伝ったり、意見を言ったりする場面は生まれません。グループワーカーは、役割を交代したり、発言の少ないメンバーに意見を求めたりして、どのメンバーもほかのメンバーを手伝ったり、意見を言ったりできる場面をつくります。
国家試験では、相互作用について次のように出題されました。
○「グループの凝集性が高まると、メンバーのグループへの所属意識は強くなる。」(第34回問題112)
○「グループの発達過程は,メンバー間の関係の変化に影響を受ける。」(第36回問題109)
×「グループのメンバー同士の相互作用が促進されるにつれ、グループ規範は消滅していく。」(第34回問題112)
×「同調圧力によって、メンバー同士の自由な相互作用が促進される。」(第34回問題112)
グループワークの展開過程
グループワークは、準備期→開始期→作業期→終結期の順に進みます。
・準備期は、メンバーが集まる前の段階です。グループワーカーは、メンバーの気持ちや状況を前もって理解しておく「波長合わせ」を行います。
・開始期は、メンバーが初めて集まる段階です。グループワーカーは、グループの目的や約束ごとを確認し、援助の枠組みを明確にしていきます。まだメンバー間の関係性ができあがっていないため、メンバーに関わりながら、作業期に向かう準備を整えます。
・作業期は、メンバー自身が目標に向かって取り組む段階です。次第にメンバー同士が助け合う相互援助システムが形成され、グループワーカーは、メンバーが自分たちで取り組めるように支えます。
・終結期になると、グループワーカーは、メンバーがグループでの経験を振り返り、感情を分かち合えるように支援します。
事例で、Sさん(グループワーカー)は、料理づくりを始める前にHさん(メンバー)と個別に会い、人前で話すことへの不安を聴いていました。これが準備期の波長合わせです。最後の回では、メンバーが「最初は話せなかったけど、今は自分から声をかけられるようになった」と振り返る時間をつくります。これが終結期の関わりです。
国家試験では、展開過程について次のように出題されました。
○「終結期では、メンバーがグループ体験を振り返り、感情を分かち合えるように援助する。」(第34回問題111)
×「グループの開始期において、ソーシャルワーカーはグループの外から見守る。」(第35回問題111)
×「グループワークでは、「今、ここで」が大切なので、事前準備は控える。」(第35回問題111)
×「開始期では、メンバー間の相互援助システムの形成が促進される。」(第31回問題113)
×「終結期には,メンバー間の感情の表出や分かち合いを避ける。」(第36回問題109)
グループワークの準備期と開始期、波長合わせについての記事はこちら
→波長合わせとは|グループワークの準備期・開始期を事例問題から整理
グループワークに関わる人物
・コイルは、セツルメントやYWCAの実践を基盤とし、グループワークの母と呼ばれました。
・コノプカは、グループワークの14の原則を示し、治療教育的グループワークの発展に貢献しました。
・ヴィンターは、ミシガン学派に所属し、個人を望ましい方向に向けて治療する治療モデルを提唱しました。
・シュワルツは、グループワーカーの役割をメンバーとグループの媒介者とし、相互作用モデルを提唱しました。
過去問を解いてみましょう
第37回問題76
コノプカ(Konopka, G.)の提唱したグループワークの原則に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 メンバー個々に新しい体験を付与することよりも,過去の体験を重視する。
2 援助者が積極的にプログラムに参加し,メンバーの問題を解決する。
3 グループ活動のルールを決め,メンバーの成長を阻害する場合には制限を設ける。
4 メンバー個人の相違点,及び当該グループが他のグループとは違う特徴をもつグループであることを認識するために個別化を行う。
5 メンバー間の相互作用の中で生じる葛藤は,表面化しないように働きかける。
解説
1→×コノプカの原則は、メンバーに新しい体験の機会を与えることです。
2→×問題を解決するのはメンバー自身です。グループワーカーは、メンバーが問題解決の過程に取り組めるようにします。
3→○制限の活用です。
4→○グループ内での個別化と、グループの個別化です。
5→×葛藤は表に出し、メンバーが自分たちで解決する経験を積めるようにします。
第36回問題109
グループワークに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 グループの発達過程は,メンバー間の関係の変化に影響を受ける。
2 波長合わせとは,メンバー間の親しい接触を通して,お互いに刺激し,影響し合うことである。
3 グループメンバー間の暗黙の葛藤に対しては,それが表面化しないように働きかける。
4 プログラム活動では,全員が同じ動きを行うことを優先するように求める。
5 終結期には,メンバー間の感情の表出や分かち合いを避ける。
解説
1→○グループの発達の過程は、メンバー同士の関係の変化に影響を受けます。
2→×メンバー同士が刺激し、影響し合うことは相互作用の説明です。波長合わせは、準備期にグループワーカーがメンバーの気持ちや状況を前もって理解しておくことです。
3→×葛藤は表に出して扱います。
4→×メンバー一人ひとりの力に合わせて参加できるようにします。
5→×終結期には、メンバーがグループでの経験を振り返り、感情を分かち合えるようにします。
第35回問題111
ソーシャルワークにおけるグループワークに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 グループワークとは、複数の人を対象に行う集団面接のことである。
2 グループの開始期において、ソーシャルワーカーはグループの外から見守る。
3 グループワークでは、「今、ここで」が大切なので、事前準備は控える。
4 グループワークにおけるプログラム活動の実施は、手段ではなく目的である。
5 グループワークは、個々のメンバーの社会的に機能する力を高めるために行う。
解説
1→×グループワークは、メンバー同士の関わりを支援に使う方法です。集団面接ではありません。
2→×開始期のグループワーカーは、グループの中でメンバーに関わり、援助の枠組みをはっきりさせます。
3→×準備期に、波長合わせなどの事前準備を行います。
4→×プログラム活動は、目的を達成するための手段です。
5→○グループワークの目的です。
第34回問題111
グループワークの展開過程におけるソーシャルワーカーの対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 準備期では、情報収集のため、メンバーを一つのグループとして集め、活動を開始する。
2 開始期では、援助の枠組みを明確にする必要がないので、メンバーの行動に対して制限を加えることは避ける。
3 作業期では、メンバーを同化させ、メンバー同士の対立や葛藤が生じないように援助する。
4 作業期では、メンバーがソーシャルワーカーの指示に従って、目標達成に向けて課題に取り組んでいけるよう促す。
5 終結期では、メンバーがグループ体験を振り返り、感情を分かち合えるように援助する。
解説
1→×準備期は、メンバーが集まる前の段階です。グループとして活動を始めるのは開始期です。
2→×開始期には、グループの目的や約束ごとを確認し、援助の枠組みをはっきりさせます。必要な制限も設けます。
3→×対立や葛藤は避けず、メンバーが自分たちで解決する経験を積めるようにします。
4→×メンバーが自分たちで課題に取り組めるように支えます。グループワーカーの指示に従わせるのではありません。
5→○終結期の関わりです。
第34回問題112
グループワークにおけるグループの相互作用に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 グループのメンバー同士の相互作用が促進されるにつれ、グループ規範は消滅していく。
2 サブグループが構成されると、サブグループ内のメンバー同士の相互作用は減少する。
3 グループのメンバー同士の関係性が固定的であるほど、グループの相互援助システムは形成されやすい。
4 同調圧力によって、メンバー同士の自由な相互作用が促進される。
5 グループの凝集性が高まると、メンバーのグループへの所属意識は強くなる。
解説
1→×相互作用が進むと、集団規範がつくられます。
2→×サブグループの中では、メンバー同士の相互作用は増えます。
3→×役割や関わる相手が決まってしまうと、助け合う関係は生まれにくくなります。
4→×同調圧力は、メンバーの自由な相互作用を妨げます。
5→○凝集性が高まると、所属意識は強くなります。
第33回問題113
グループワークに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 コイル(Coyle, G.)は、ミシガン学派に所属し、個人を望ましい方向に向けて治療する治療モデルを提唱した。
2 コノプカ(Konopka, G.)は、グループワークの14の原則を示し、治療教育的グループワークの発展に貢献した。
3 ヴィンター(Vinter, R.)は、ソーシャルワーカーの役割を、メンバーとグループの媒介者とし、相互作用モデルを提唱した。
4 トレッカー(Trecker, H.)は、セツルメントやYWCAの実践を基盤とし、グループワークの母と呼ばれた。
5 シュワルツ(Schwartz, W.)は、アメリカ・グループワーカー協会で採択された「グループワーカーの機能に関する定義」(1949年)を起草した。
解説
1→×ミシガン学派に所属し、治療モデルを提唱したのはヴィンターです。
2→○コノプカの説明です。
3→×媒介者として相互作用モデルを提唱したのはシュワルツです。
4→×グループワークの母と呼ばれたのはコイルです。
5→×シュワルツは、相互作用モデルを提唱した人物です。
第32回問題114
次のうち、グループワークにおいて、グループワーカーが活用する援助媒体として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 メンバー間に形成されるソーシャルワーク関係
2 メンバーとグループワーカーの間に形成される相互援助関係
3 現在のグループの発達段階では達成が難しい、高い目標設定をしたプログラム
4 グループワーカーが運営する別のグループの集団規範
5 援助目標達成に関わる人、物、社会制度等の社会資源
解説
1→×メンバー同士の間につくられるのは、相互援助関係です。
2→×グループワーカーとメンバーの間につくられるのは、援助関係です。1と2は、関係の名前が入れ替わっています。
3→×プログラム活動は、グループの発達の段階やメンバーの力に合わせて計画します。
4→×援助媒体になるのは、そのグループの中でつくられるものです。別のグループの集団規範は使いません。
5→○社会資源は援助媒体のひとつです。
第31回問題113
グループワークに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 最終目標は、まとまりのあるグループを作ることである。
2 メンバー自身やグループ内の葛藤は、回避することが必要である。
3 開始期では、メンバー間の相互援助システムの形成が促進される。
4 メンバー個々の問題を解決する主体は、ワーカーである。
5 プログラム活動は、グループワークの援助方法の一つである。
解説
1→×目的は、メンバー一人ひとりの成長です。まとまりのあるグループは、そのための手段です。
2→×葛藤は避けず、メンバーが自分たちで解決する経験を積めるようにします。
3→×相互援助システムがつくられていくのは、作業期です。
4→×問題を解決する主体は、メンバー自身です。
5→○プログラム活動は、援助媒体のひとつです。
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