ソーシャルワークの実践モデルで出題された論点
ソーシャルワークの実践モデルについて、次の2問が出題されています。
①治療モデル、生活モデル、ストレングスモデルの説明(第36回問題99)
②事例のソーシャルワーカーが用いた実践モデル(第37回問題72)
実践モデルは、クライエントの問題をどう捉え、どこに働きかけるかについての基本的な考え方です。心理社会的アプローチや課題中心アプローチなどの個々のアプローチは、こうしたモデルの考え方の上で、具体的な支援の進め方を示したものです。
治療モデル
治療モデルは、医学で医師が病気を診断して治療するのと同じように、クライエントの問題の原因を調べ、それを取り除こうとするモデルです。医学モデルとも呼ばれます。問題の原因は、クライエント個人の人格や病理にあると考えます。
リッチモンドがケースワークを体系化したときの「社会診断」という考え方や、フロイトの精神分析を取り入れた診断主義の流れが、このモデルの土台になっています。
治療モデルには、クライエントの問題を個人の欠陥として捉え、環境に目が向きにくいという批判がありました。この批判から、生活モデルが生まれました。
生活モデル
生活モデルは、ジャーメインとギッターマンが1980年に提唱したモデルです。ライフモデルとも呼ばれます。問題は、クライエント個人の中ではなく、人と環境の交互作用の中で生じると考え、人の生活を全体的な視点から捉えます。
たとえば、一人暮らしの高齢者が、足腰が弱って買い物に行けなくなったとします。治療モデルでは、足腰の機能の低下に焦点を当てます。生活モデルでは、家族、近所の人、商店、移動の手段など、その人を取り巻く環境と、その人との関係に焦点を当て、どのように暮らしを整えていくかを考えます。
生活モデルの考え方は、生態学の理論を取り入れたものです。ジャーメインのエコロジカルアプローチについての記事はこちら
→エコロジカルアプローチ(ジャーメイン)|交互作用・空間と時間・人と環境の適合
ストレングスモデル
ストレングスモデルは、クライエントの弱さや病理ではなく、クライエントがもっている強さ(ストレングス)に焦点を当てるモデルです。ラップやサリービーが、このモデルを広めました。
強さには、本人の意欲、能力、得意なこと、これまでの経験のほか、家族や友人、地域の資源など、本人を取り巻く環境の強さも含まれます。たとえば、生け花の師範だった施設の入居者に、施設の入口に花を生けてもらうのは、本人の強さを生かした支援です。
バイオ・サイコ・ソーシャルモデル
バイオ・サイコ・ソーシャルモデルは、人の状態を、生物的(バイオ)、心理的(サイコ)、社会的(ソーシャル)の三つの面から捉える考え方です。精神科医のエンゲルが1977年に提唱しました。出題基準の「人と環境との交互作用に関する理論」の中に、項目として挙げられています。
①生物的な面→病気、障害、身体の機能など
②心理的な面→気持ち、意欲、ストレスなど
③社会的な面→家族、仕事、収入、住まい、利用できる制度など
たとえば、買い物に行けなくなった一人暮らしの高齢者のアセスメントでは、足腰の機能や持病(生物的な面)、外出できないことへの気落ちや、人に頼みたくないという気持ち(心理的な面)、近所付き合い、収入、使える制度(社会的な面)を、関連させながら捉えます。病気だけを見るのではなく、生活全体を捉えるという点で、生活モデルと同じ方向の考え方です。
国家試験では、実践モデルについて次のように出題されました。
○「生活モデルは,人と環境の交互作用に焦点を当て,人の生活を全体的視点から捉える。」(第36回問題99)
×「生活モデルは,問題を抱えるクライエントの人格に焦点を絞り,問題の原因究明を重視する。」(第36回問題99)→これは生活モデルではなく、治療モデルのことです。
×「治療モデルは,問題を抱えるクライエントのもつ強さ,資源に焦点を当てる。」(第36回問題99)→これは治療モデルではなく、ストレングスモデルのことです。
×「ストレングスモデルは,クライエントの病理を正確に捉えることを重視する。」(第36回問題99)→病理を捉えることを重視するのは、ストレングスモデルではなく、治療モデルです。
過去問を解いてみましょう
第36回問題99
ソーシャルワークの実践モデルに関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 生活モデルは,問題を抱えるクライエントの人格に焦点を絞り,問題の原因究明を重視する。
2 生活モデルは,人と環境の交互作用に焦点を当て,人の生活を全体的視点から捉える。
3 治療モデルは,人が疎外される背景にある社会の抑圧構造に注目する。
4 治療モデルは,問題を抱えるクライエントのもつ強さ,資源に焦点を当てる。
5 ストレングスモデルは,クライエントの病理を正確に捉えることを重視する。
解説
1→×クライエントの人格に焦点を絞り、原因を究明するのは、生活モデルではなく治療モデルです。
2→○生活モデルの説明です。
3→×治療モデルが注目するのは、社会の抑圧構造ではなく、クライエント個人の問題や病理です。
4→×クライエントの強さや資源に焦点を当てるのは、治療モデルではなくストレングスモデルです。
5→×ストレングスモデルが重視するのは、病理ではなく、クライエントの強さです。病理を捉えることを重視するのは、治療モデルです。
第37回問題72
事例を読んで,この段階のA病院のB医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)が行った実践モデルやアプローチに関して,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
〔事 例〕
Cさん(46 歳,男性)は夫婦で生まれ故郷に戻り, 5 年前から喫茶店を営んでいる。 1 か月前に,脳出血を患い,A病院でリハビリテーションを受け,数週間後に自宅退院を控えている。BはCさんと退院に向けた面談を行った。Cさんは「左片麻痺があるのは仕方がないとしても,妻もまた一緒にお店をやっていこうと言ってくれているので仕事がしたい。地元の友達も戻ってきたら店に行くよと声をかけてくれているから」と語った。Bは「奥様もお友達もCさんがお店に戻ってこられるのを待っておられるんですね。お店に戻られるまで,どのように暮らしを整えていったら良いか,ご一緒に考えていきましょう」と提案した。
1 行動変容アプローチ
2 治療モデル
3 実存主義アプローチ
4 生活モデル
5 課題中心アプローチ
解説
1→×行動変容アプローチは、望ましい行動を強化して増やすアプローチです。Bが一緒に考えようとしているのは、行動ではなく、店に戻るまでの暮らしです。
2→×Bが焦点を当てているのは、Cさんの病気や障害ではなく、店に戻るまでの暮らしです。
3→×実存主義アプローチは、クライエントが自らの生きる意味を見いだすことを目指すアプローチです。Bが一緒に考えようとしているのは、生きる意味ではなく、店に戻るまでの暮らしです。
4→○Bは、妻、地元の友人、喫茶店という、Cさんを取り巻く環境とのつながりから、これからの暮らしを一緒に考えようとしています。
5→×課題中心アプローチは、クライエントが解決を望む問題を絞り、目標と期限を決めて短期間で取り組むアプローチです。Bは、期限を決めた課題ではなく、Cさんを取り巻く環境とのつながりから暮らしを考えています。
第37回問題72の選択肢に出てくるアプローチについての記事はこちら
→行動変容アプローチ(トーマス)|先行条件と結果・強化と消去を整理
→実存主義アプローチ(クリル)|苦悩の意味と疎外からの解放
→課題中心アプローチを解説(リード・エプスタイン)問題解決アプローチとの違い
ほかのアプローチについての記事の一覧はこちら
→ソーシャルワークのアプローチ 記事一覧|読む順番と提唱者・人名
ソーシャルワークに関する記事の一覧はこちら
→ソーシャルワーク 記事マップ|基盤と専門職・理論と方法(共通・専門)旧:相談援助


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