「育成就労」――第38回で初めて国家試験に登場した、新しい制度です。名前は聞いたことがあっても、技能実習と何が違うのか、説明できますか。
この記事では、技能実習・育成就労・特定技能の3つを、試験で迷わないように整理していきます。
そもそも技能実習制度とは何だったのか
技能実習制度が始まったのは1993年。掲げられていた目的は「国際貢献」でした。
開発途上国の人に、日本で技術を学んでもらう。母国に帰って、その技術を役立ててもらう。日本の技術移転で、途上国の発展に貢献する。これが建前です。
しかし、人手不足に悩む現場が、安価な労働力として受け入れ、3年、あるいは5年働いてもらって、期間が終われば帰ってもらうという状況でした。技術を学ぶ、というのは名目で、実際には現場を回すための人手として機能してきた・・・そう指摘され続けてきました。
しかも、技能実習生は原則として転籍ができません。職場を変われないため、どんなに労働環境が悪くても、そこで働き続けるしかないという現実です。
建前と実態のズレが生んだもの
この「建前と実態のズレ」が、深刻な問題を生みました。
厚生労働省の調査では、監督指導を受けた実習実施者の7割以上に労働基準関係法令違反が見つかっています(違反事由として使用する機器等の安全基準を満たしていないが最も多く約23%)。その他、割増賃金が払われていない、健康診断の結果を医師に確認していない等があったことも明らかになりました。また、技能実習生本人からの相談で最も多いのは、賃金や割増賃金の不払いでした。
「実習」という名前がついていても、彼らは労働者です。労働基準法も、労働安全衛生法も、労災保険法も、日本人とまったく同じように適用されます。それも守られていないことが指摘されることもありました。
ここ、試験にそのまま出ました。第38回の問46で「第1号技能実習生には労働基準法が適用されない」という選択肢が出ています。もちろん誤りです。「実習」という言葉がついていても、働いている以上は労働者。労働基準法も労働安全衛生法も労災保険法も、日本人とまったく同じように適用されます。
このような法令違反があっても母国の送出機関に高額な手数料を払っており、その借金を返済できるまでは母国に帰ることもできないという問題も多く指摘されました。
育成就労制度は何を変えるのか
こうした批判を受けて創設されたのが、育成就労制度です。2024年6月の法改正で決まり、2027年4月1日から施行されます。
変わるのは、大きく三つです。
①目的が変わる
「国際貢献」から「国内の人手不足分野における人材育成と確保」へ。
建前を取り払って、日本のために人材を確保するのだ、と正面から認めた。これが最大の変更点です。
②期間が変わる
技能実習は1号・2号・3号と段階を踏んで、最長5年でした。
育成就労は、原則3年。段階の刻みはありません。
この3年間で、特定技能1号の水準に育てることが、制度の目的として明記されています。
③転籍ができるようになる
技能実習は原則不可、育成就労は要件を満たせば可能。この「転籍できるかどうか」は、3つの制度を見分ける定番の切り口です。あとで出てくる整理表で、必ず押さえておきましょう。
「使っておしまい」から「育てて定着させる」へ
三つの変更点を並べると、制度の思想がはっきり見えてきます。
技能実習は「実習」でした。だから、育つかどうかは本人次第、という構図になりやすいという問題点がありました。
一方、育成就労は「3年で特定技能1号の水準に育てる」ことを目的に掲げています。つまり、受入れ企業の側にも「育てる責任」がある、ということです。
そして転籍が認められているため、育成の質が低い職場、労働環境の悪い職場からは、人材が出ていってしまいます。企業は「選ばれる職場」でなければ、人材を確保できなくなるということです。
制度としての義務づけと、市場の原理、その両方から、受入れ企業に育成の責任を負わせる構造になっているように見えますね。
その先にある「特定技能」
育成就労を終えた後、どうなるのでしょうか。
ここで登場するのが「特定技能」です。
特定技能には1号と2号があります。1号は在留期間が通算5年まで、家族を呼ぶことはできません。ところが2号になると、在留期間の上限がなくなり、配偶者と子を日本に呼べるようになります。要件を満たせば、永住許可の申請も可能です。
つまり、外国人本人にとって、特定技能2号に到達できるかどうかが、日本で家族と暮らしていけるかどうかの分かれ目になる。
ただ、この扉はかなり狭く、特定技能全体が33万人を超えているのに対し、特定技能2号は3000人程度にとどまっています。約1%です。
2号になるには、より難易度の高い技能評価試験に合格するだけでなく、複数の従業員を指導した実務経験も求められます。本人が努力するだけでは足りません。受入れ企業が、その人に指導的な立場を与えてくれるかどうか。そこに大きく左右されるのです。
ここまでを整理しておきます。
| 整理したい点 | 技能実習 | 育成就労 | 特定技能 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献 | 人材確保・育成 | 労働力の受け入れ |
| 期間 | 最長5年 | 原則3年 | 1号:通算5年 2号:上限なし |
| 転籍 | 原則不可 | 要件を満たせば可 | 可能 |
| 家族帯同 | 不可 | 不可 | 1号:不可/2号:可 |
移行はゆるやかに進む
なお、2027年4月から技能実習が一斉になくなるわけではありません。
2027年3月31日までに認定された技能実習計画は、そのまま継続します。経過措置が設けられているので、概ね2030年頃までは、技能実習と育成就労が併存する見込みです。
おわりに|試験ではこう出た
第38回問題 46
事例を読んで,多文化共生ソーシャルワークの実践を進めるためにAコミュニティソーシャルワーカー(社会福祉士)が日本における外国人を取り巻く制度や動向について調べたことのうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
B国出身のCさん(23歳,男性)は,農業関係の第1号技能実習生として半年前から日本で働いている。ある時,D市社会福祉協議会のフードパントリーにCさんが食べ物をもらいたいと来所し,Aが話を聴いたところ,今までの時間外労働の賃金が支払われておらず,困っているということだった。Aは,Cさんの了解を得て労働局の総合労働相談窓口に同行して支援を行うとともに,多文化共生に向けたソーシャルワーク実践として,地域住民が技能実習生を取り巻く制度や動向について知ることができる勉強会を開催することとし,調査した。
1 実習実施者に対する監督指導における主な違反事項(2023年(令和5年))として最も多かったのは,賃金の支払である。
2 第1号技能実習生には,労働基準法が適用されない。
3 技能実習生の国籍別構成(2023年度(令和5年度))で最も多い国籍はインドネシアである。
4 特定技能の在留資格をもつ者は,所属機関との契約を期間途中で解除し,異なる機関と新たな雇用契約を結ぶことができない。
5 今後,技能実習制度は育成就労制度へ移行することになっている。
3×ベトナム→インドネシア→ミャンマーの順に続きます。
4×特定技能は転職が可能であるが、技能実習ではできなかったために、育成就労制度でその点は見直しされることになった。
5〇
ちなみに2025年末で、日本にいる外国人は412万人を超えました。30人にひとり。もう「たまに見かける」規模ではありません。だからこそ、外国人をめぐる出題は、切り口を変えながら毎年のように顔を出しています。その全体像は、こちらにまとめました。

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