技能実習制度とはどのような制度だったか
技能実習制度が始まったのは1993年(平成5年)で、掲げられていた目的は国際貢献でした。開発途上国の人に日本で技術を学んでもらい、母国に帰ってその技術を役立ててもらうことによって、途上国の発展に貢献するという考え方です。
実際には、人手不足の現場が技能実習生を受け入れ、3年あるいは5年働いてもらって期間が終われば帰国してもらうという運用が広がりましたので、技術を学ぶという目的と、現場の人手として働いている実態がずれているという指摘が続いてきました。
また、技能実習生は原則として転籍ができませんので、労働環境が悪くても職場を変わることができず、その職場で働き続けることになります。
技能実習制度で指摘されてきた問題
厚生労働省の調査では、監督指導を受けた実習実施者の7割以上に労働基準関係法令違反が見つかっており、2023年(令和5年)の違反事由で最も多いのは、使用する機器等が安全基準を満たしていないもので約23%でした。ほかにも、割増賃金が支払われていない、健康診断の結果を医師に確認していないといった違反があり、技能実習生本人からの相談で最も多いのは賃金や割増賃金の不払いです。
実習という名称であっても技能実習生は労働者ですので、労働基準法も、労働安全衛生法も、労災保険法も、日本人の労働者とまったく同じように適用されます。
さらに、技能実習生は母国の送出機関に高額な手数料を支払っており、その借金を返し終えるまでは帰国することもできないという問題も指摘されてきました。
育成就労制度で変わること
こうした指摘を受けて創設されたのが育成就労制度で、2024年(令和6年)6月に改正法が公布され、2025年(令和7年)10月の政令によって施行日が2027年(令和9年)4月1日と定められました。変わるのは大きく三つです。
目的
目的が国際貢献から人手不足分野における人材の育成と確保に変わりますので、国内の人材を確保するために受け入れるということが、法律の目的として定められることになります。
期間
技能実習は第1号・第2号・第3号と段階を踏んで最長5年でしたが、育成就労には段階の区分がなく原則3年で、この3年間で特定技能1号の水準まで育てることが制度の目的として定められています。
転籍
技能実習では原則としてできませんでしたが、育成就労では本人の意向による転籍が、要件を満たせば認められます。
受入れ企業が育成の責任を負う仕組み
技能実習は実習という枠組みでしたので、技能が身につくかどうかは本人次第という構図になりやすい問題がありましたが、育成就労は3年で特定技能1号の水準に育てることを目的に掲げていますので、受入れ企業の側に育成を進める責任が置かれます。
あわせて転籍が認められますので、育成の内容や労働環境に問題のある職場からは人材が離れていくことになり、制度としての義務づけと転籍が可能になることの両方から、受入れ企業に育成を促す仕組みになっています。
育成就労の次にある特定技能
育成就労を終えた後の在留資格が特定技能で、1号と2号があります。1号は在留期間が通算5年までで家族を呼ぶことはできませんが、2号は在留期間の上限がなく、配偶者と子を日本に呼ぶことができ、要件を満たせば永住許可の申請もできます。
外国人本人にとっては、特定技能2号に到達できるかどうかが日本で家族と暮らしていけるかどうかの分かれ目になりますが、2号の人数は限られており、2025年(令和7年)6月末の時点で、特定技能全体が33万6196人であるのに対し、特定技能2号は3073人です。
2号になるには、難易度の高い技能評価試験に合格することに加えて、複数の従業員を指導した実務経験が求められますので、本人が努力するだけでは足りず、受入れ企業がその人に指導的な立場を与えるかどうかにも左右されます。
技能実習・育成就労・特定技能の違い
三つの制度の違いを整理すると、次のとおりです。
| 整理したい点 | 技能実習 | 育成就労 | 特定技能 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献 | 人材確保・育成 | 労働力の受け入れ |
| 期間 | 最長5年 | 原則3年 | 1号:通算5年 2号:上限なし |
| 転籍 | 原則不可 | 要件を満たせば可 | 可能 |
| 家族帯同 | 不可 | 不可 | 1号:不可/2号:可 |
技能実習から育成就労への移行
2027年(令和9年)4月に技能実習が一斉になくなるわけではなく、2027年3月31日までに認定された技能実習計画はそのまま継続しますので、経過措置が設けられている間、2030年頃までは技能実習と育成就労が併存する見込みです。
外国人の受入れをめぐる状況
2025年(令和7年)末の在留外国人数は412万5395人で、初めて400万人を超え、日本の人口に占める割合は3.36%になりました。在留資格別では、永住者が94万7125人で最も多く、技術・人文知識・国際業務が47万5790人、留学が46万4784人と続きます。
過去問を解いてみましょう
第38回 問題46
事例を読んで,多文化共生ソーシャルワークの実践を進めるためにAコミュニティソーシャルワーカー(社会福祉士)が日本における外国人を取り巻く制度や動向について調べたことのうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
B国出身のCさん(23歳,男性)は,農業関係の第1号技能実習生として半年前から日本で働いている。ある時,D市社会福祉協議会のフードパントリーにCさんが食べ物をもらいたいと来所し,Aが話を聴いたところ,今までの時間外労働の賃金が支払われておらず,困っているということだった。Aは,Cさんの了解を得て労働局の総合労働相談窓口に同行して支援を行うとともに,多文化共生に向けたソーシャルワーク実践として,地域住民が技能実習生を取り巻く制度や動向について知ることができる勉強会を開催することとし,調査した。
1 実習実施者に対する監督指導における主な違反事項(2023年(令和5年))として最も多かったのは,賃金の支払である。
2 第1号技能実習生には,労働基準法が適用されない。
3 技能実習生の国籍別構成(2023年度(令和5年度))で最も多い国籍はインドネシアである。
4 特定技能の在留資格をもつ者は,所属機関との契約を期間途中で解除し,異なる機関と新たな雇用契約を結ぶことができない。
5 今後,技能実習制度は育成就労制度へ移行することになっている。
解説
1 × 最も多かったのは、使用する機器等が安全基準を満たしていないという違反です。賃金の支払は、技能実習生本人からの相談で最も多い内容です。
2 × 技能実習生は労働者ですので、労働基準法が適用されます。労働安全衛生法、労災保険法も同じです。
3 × 最も多い国籍はベトナムで、インドネシア、ミャンマーがこれに続きます。
4 × 特定技能では転職ができます。技能実習ではできませんでしたので、育成就労制度でこの点が見直されました。
5 ○ 2024年(令和6年)の改正法により、育成就労制度へ移行することが定められています。
正答
その他法改正についてはこちらをご覧ください法改正記事マップ


コメント