責任能力(民法712条・713条)|責任無能力者と法定監督義務者責任の関係

第39回社会福祉士国家試験まで
あと
精神保健福祉士1日目まであと
権利擁護を支える法制度
スポンサーリンク

責任能力とは何か

「能力」とつく言葉の整理はこちら

責任能力は、他人に損害を与えてしまったときに、その賠償の責任を負えるかどうかを見る言葉です。
*契約ができるかどうかを見る権利能力や意思能力、行為能力とは、使用する場面がまったく違います。

民法712条は、未成年者について「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」を備えていなかったときは賠償の責任を負わないと定めています。ここで求められているのは、殴ったという事実を認識できるかどうかではありません。その行為によって自分に法的な責任が生じる、ということがわかるかどうかです。

判例では、おおむね11歳から12歳程度でこの知能が備わるとされています。ですから、小学校の低学年であれば責任能力なしと判断される可能性が高く、中学生であれば通常は責任能力ありと判断されます。

スポンサーリンク

責任能力がなければ、誰が賠償するのか

責任能力がなければ、本人は賠償の責任を負いません。ただ、それで損害がなかったことになるわけではありません。

そこで民法714条は、責任無能力者が責任を負わない場合に、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者が賠償の責任を負うと定めています。これが法定監督義務者責任です。「監督する法定の義務を負う者」というのは、本人を監督すべき立場にある人のことで、未成年者であれば親権者、成年後見制度を利用している方であれば成年後見人や同居の家族などが考えられます(ただし、未成年者以外の法定監督義務者が誰なのかについては判例に争いがありますので、一律に断定できるものではないことは理解しておきましょう)。

本人に責任能力があって賠償の責任を負うのであれば、714条の法定監督義務者責任は出てきませんし、本人に責任能力がなく賠償の責任を負わないときには、法定監督義務者が責任を負うことになります。

スポンサーリンク

精神上の障害がある場合

未成年者について定めているのが712条であるのに対し、民法713条は、精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた場合について定めています。この状態にある人が、責任無能力者です。

ただし、本人の診断名や障害認定の有無といった外形的な事実で判断されるわけではありません。認知症、知的障害、精神障害のいずれであっても、その時点で「自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態」であったかどうかが個別に判断されます。程度によっては責任無能力者にあたることもありますが、診断名があるから当然に責任無能力者になる、という関係ではありません。

なお713条には、故意または過失によって一時的にその状態を招いたときは責任を負う、というただし書きがあります。自分で飲酒して泥酔した場合などがこれにあたり、この場合は責任を負うことになります。

スポンサーリンク

成年後見制度の「事理弁識能力」との違い

成年後見制度のところで出てくる事理弁識能力と、この責任能力は別のものです。

事理弁識能力は、後見、保佐、補助のどれにあたるかを決めるために見るもので、その人の日常的な状態を家庭裁判所が判断します。効果は、行為能力が制限されることです。

責任能力は、他人に損害を与えたその時点で、賠償の責任を負えるかどうかを見るものです。効果は、本人が賠償の責任を負うか、監督する側が負うかが決まることです。

どちらにも「弁識」という言葉が出てくるので混ざりやすいのですが、見ている場面も、判断する人も、生じる効果も違います。

スポンサーリンク

刑法の「弁識」「責任能力」

「弁識」や「責任能力」は、刑法にも出てきます。刑事司法と福祉の科目で出題される心神喪失や心神耗弱が、それにあたります。

民法の責任能力は、賠償の責任を負うかどうかの話で、刑法の責任能力は、刑罰を科すことができるかどうかの話です。同じ言葉が民法にも刑法にも出てきますので、どちらの話をしているのかを意識して読んでください。

心神喪失と心神耗弱|刑法39条と責任能力

過去問を確認しましょう

第38回問題38

事例を読んで,次のうち,事件当時にAさんに備わっていたか否かが問われる能力として,最も適切なものを 1 つ選びなさい。

〔事 例〕
Aさん(15 歳)は,口論の末,Bさんを殴ってしまい,Bさんにけがを負わせてしまった。Bさんは,Aさんに対し,治療費を請求することを考えている。

1 行為能力 2 事理弁識能力 3 意思能力 4 権利能力 5 責任能力

解説

正答は5です。
1→× 単独で確定的に有効な法律行為ができる資格のことで、契約の場面で使う言葉です。
2→× 後見、保佐、補助のどれにあたるかを判断するときに使う言葉です。
3→× 自分の行為の法的な意味を理解できる能力のことで、契約の場面で使う言葉です。
4→× 権利義務の主体になれる資格のことで、出生により取得します。
5→○ 治療費の請求は、不法行為に基づく損害賠償の請求です。Aさんが賠償の責任を負うかどうかは、責任能力が備わっていたかどうかで決まります。

Aさんは15歳ですので、通常は責任能力が備わっていると判断され、Aさん本人が賠償の責任を負うことになります。もしAさんが小学校低学年であれば責任能力なしと判断される可能性が高く、その場合は親権者の法定監督義務者責任が問題になります。

第29回問題83

選択肢の一部を抜粋します。

①認知症であれば民法713条が定める責任無能力者として免責されるので、不法行為責任は成立しない。
②不法行為責任が認容される場合には、民法714条の法定監督義務者責任を理由とする不法行為責任は成立しない。

解説

①→× 診断名で決まるものではありません。弁識する能力を欠く状態であったかどうかが、個別に判断されます。
②→○ 法定監督義務者責任は、責任無能力者が責任を負わない場合に生じるものです。本人に不法行為責任が認められるのであれば、714条の責任は成立しません。

責任能力は、契約ができるかどうかとは別の場面で使う言葉です。他人に損害を与えたとき、その責任を本人が負うのか、監督する側が負うのか。そこを決めるための言葉だと押さえておいてください。

「能力」とつく言葉の整理はこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました