バイステックの7原則と援助関係に関する用語|転移・パターナリズム・共感的理解・自己開示

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バイステックの7原則

バイステック(Biestek, F.)は、『ケースワークの原則』(1957年)で、援助関係を形成するための7つの原則を示しました。

原則 内容 ×として出題された表現 個別化 クライエントを一人の 個人として捉える ・他のクライエントと比較しながら理解する  (第34回) 意図的な感情表出 クライエントが感情を 自由に表現できるよう ワーカーが促す ― 統制された情緒的関与 ワーカーが自分の感情を 自覚し、コントロール して関わる ・クライエント自身が情緒的混乱を  コントロールできるようにする(第34回) ・クライエント自らの情緒的感情を  意識化する(第37回) 受容 クライエントを ありのままに受け止める ・ワーカーがクライエントに受け入れて  もらえるよう働きかける(第34回) ・逸脱した態度や行動に対しても  同調した上で許容する(第36回) 非審判的態度 クライエントを一方的に 非難しない ・ワーカーがクライエントの代わりに  意思決定を行う(第34回) ・クライエントが負う責任について  ワーカーが承認・非承認を決定する(第37回) 自己決定 クライエントが自ら選択し 決定する権利とニードを 尊重する ― 秘密保持 クライエントの秘密を守る ・他の個人の権利が侵害される場合でも  秘密は保持される(第37回) 過去問をもとに著者が作成した図です。無断転載・複製はご遠慮ください。
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援助関係に関する用語

ラポール

ラポールは、ワーカーとクライエントの間の、信頼に基づいて打ち解けた関係です。

初回の面接では、クライエントは緊張していて、困っていることの一部しか話さないことがよくあります。ワーカーが話を遮らずに聴き、話してくれたことを受け止めていくうちに、クライエントは家族のことや、人に言いにくかったことも話すようになります。このとき二人の間にできている「この人になら話してもよい」という関係が、ラポールです。

パートナーシップとパターナリズム

パートナーシップは、ワーカーとクライエントが対等な立場で、共に課題に取り組む関係です。パターナリズムは、父権主義、家父長主義と訳されます。ワーカーが、親が子どもを守るような気持ちで、「専門職である自分のほうがよくわかっている」と考え、本人のためによかれと思って、本人の意思に関わりなく本人に代わって判断することです。

退院を控えた高齢者が「家に帰りたい」と言っている場面で考えます。ワーカーが「一人暮らしは危ないから施設のほうが安全です」と、本人の意思に関わりなく入所の方向で話を進めるのが、パターナリズムです。家に帰るには何が必要かを本人と一緒に整理し、どうするかを本人が選べるようにするのが、パートナーシップです。

目的志向性

援助関係は、クライエントの課題を解決するという目的のために結ばれる専門的な関係です。これを援助関係の目的志向性といいます。

友人関係は、目的がなくても続きます。援助関係は、課題が解決して目的が達成されれば、終結します。

転移と逆転移

転移は、クライエントが、親など過去の重要な人物に向けていた感情を、ワーカーに向けることです。逆転移は、ワーカーが、自分の過去の人間関係から生じる感情を、クライエントに向けることです。

厳しい父親に育てられたクライエントが、年配の男性ワーカーの助言を父親の叱責のように受け取り、強く反発するのは転移です。ワーカーが、自分の母親と口調が似ている高齢のクライエントに、理由のわからない苛立ちを感じるのは逆転移です。

同一化

同一化は、相手の感情や立場を、まるで自分のことのように感じ、自分と相手の区別がつかなくなることです。

親の介護で苦労した経験のあるワーカーが、介護を担う娘の話を聴くうちに、娘の怒りを自分の怒りのように感じ、要介護者本人の思いを聴かなくなることがあります。ワーカーがクライエントや家族に同一化すると、相手の感情と自分の感情の区別がつかなくなり、客観的に関わることが難しくなります。

自己覚知

自己覚知は、ワーカーが自分の価値観や感情、行動の傾向を知ることです。

たとえば、「親の面倒は子がみるものだ」という価値観を持っていることに気づいているワーカーは、親の介護を拒む子に否定的な気持ちが出てきたとき、それが自分の価値観から来ているのではないかと立ち止まる必要があります。逆転移や同一化に気づくためにも、自己覚知が必要です。ワーカーは、スーパービジョンや記録の振り返りなどを通して自己覚知を深めます。

エゴグラムは、自己覚知の方法として使われることがある性格検査です。質問への回答から、その人の性格の傾向を5つの要素に分けてグラフで示します。交流分析という心理療法の考え方に基づいています。

エゴグラムと名前の似ているものに、ジェノグラム、エコマップ、ソシオグラムがあります。こちらは性格検査ではありません。クライエントの家族や、クライエントを取り巻く人や機関、集団の中の関係を図に表すもので、アセスメントで使います。

これらの図についての記事はこちら
→エコマップとジェノグラム|ソシオグラムとの違い・ハートマンのマッピング技法

共感的理解

共感的理解は、クライエントの世界を、あたかもワーカー自身も体験したかのように理解することです。ロジャーズ(Rogers, C.)がカウンセラーの態度条件の一つとして示しました。

介護を続けてきた妻が「もう限界です」と言った場面で考えます。「それはおつらいですね。想像すると、私まで胸が締め付けられるようです」は、ワーカー自身の感情を述べた同情です。「ずっと一人で抱えてこられて、もう力が残っていないと感じておられるのですね」は、妻の感じ方を妻の側から理解し、それを言葉にして返しています。これが共感的理解です。

ロジャーズのパーソンセンタード・アプローチについての記事はこちら
→パーソンセンタード・アプローチ(ロジャース)

自己開示と直面化

自己開示は、ワーカーが自分の経験や感情をクライエントに伝えることです。直面化は、クライエントの発言や行動の矛盾を指摘し、クライエント自身が向き合えるようにすることです。

「お話を伺って、私も悔しい気持ちになりました」「私も親の介護をしていたとき、先が見えなくて不安になったことがあります」と伝えるのは、自己開示です。
「お酒はもうやめたとおっしゃっていましたが、昨日も飲んでいたと伺いました」「息子さんのことはもう気にしていないとおっしゃいましたが、今日のお話の中で何度も息子さんのことが出てきますね」と伝えるのは、直面化です。

アタッチメント

アタッチメントは、特定の他者との間に結ばれる情緒的な絆です。ボウルビィ(Bowlby, J.)が、乳幼児と養育者との関係から示しました。

知らない場所で子どもが親のそばを離れず、親がそばにいると安心して周りを探索し始めるのは、子どもと親の間にアタッチメントがあるからです。

ソーシャルワークの記事を出題基準の並びにまとめた記事マップはこちら
→ソーシャルワーク 記事マップ|基盤と専門職・理論と方法(共通・専門)旧:相談援助

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過去問を解いてみましょう

第37回問題115

バイステック(Biestek, F.)による援助関係の原則に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 非審判的態度の原則とは,問題・課題に対してクライエントが負う責任についてワーカーが承認・非承認を決定することである。
2 自己決定の原則とは,クライエントが問題解決の方向などを自分で決める権利とニードをもっていることをワーカーがしっかりと認識し,クライエントの判断を促し,尊重することである。
3 統制された情緒的関与の原則とは,クライエント自らの情緒的感情を意識化することである。
4 意図的な感情表出の原則とは,クライエントの感情を大切にし,クライエントが特にその否定的感情も自由に表現できるよう,ワーカーが促すことである。
5 秘密保持の原則とは,他の個人の権利が侵害される場合においてもクライエントの秘密は保持されることである。

解説

1→×非審判的態度の原則では、ワーカーは、問題の責任がクライエントにあるかどうかを判断する立場には立ちません。
2→○クライエントの自己決定の原則です。
3→×統制された情緒的関与は、ワーカーが自分の感情を自覚し、コントロールして関わることです。
4→○意図的な感情表出の原則です。
5→×バイステックは、秘密保持を、他の個人や社会の権利と衝突する場合などには制限される原則としています。

第34回問題116

バイステック(Biestek, F.)の援助関係の原則に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 意図的な感情表出の原則とは、クライエントのありのままの感情を大切にし、その表出を促すことである。
2 統制された情緒的関与の原則とは、クライエント自身が自らの情緒的混乱をコントロールできるようにすることである。
3 個別化の原則とは、他のクライエントと比較しながら、クライエントの置かれている状況を理解することである。
4 受容の原則とは、ソーシャルワーカーがクライエントに受け入れてもらえるように、誠実に働き掛けることである。
5 非審判的態度の原則とは、判断能力が不十分なクライエントを非難することなく、ソーシャルワーカーがクライエントの代わりに意思決定を行うことである。

解説

1→○意図的な感情表出の原則です。
2→×統制された情緒的関与の原則では、ワーカーが自分の感情をコントロールします。
3→×個別化は、クライエントを他のクライエントと比較せず、一人の個人として理解することです。
4→×受容は、ワーカーがクライエントをありのままに受け止めることです。
5→×非審判的態度は、ワーカーがクライエントを一方的に非難しないことです。ワーカーが代わりに意思決定を行うことは、クライエントの自己決定に反します。

第36回問題106

ソーシャルワークの援助関係に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 共感的理解とは,クライエントの世界を,あたかもソーシャルワーカーも体験したかのように理解することである。
2 目的志向性とは,クライエントを意図的に導くことにより,ソーシャルワーカーの自己覚知を促進することである。
3 パターナリズムとは,ソーシャルワーカーの権威と自由裁量を否定し,対等な立場を重視した援助関係のことである。
4 受容とは,クライエントの逸脱した態度や行動に対しても,同調した上で,それを許容することである。
5 ソーシャルワーカーの自己開示とは,クライエントの行動や感情における矛盾を指摘することである。

解説

1→○共感的理解の説明です。
2→×援助関係の目的は、クライエントの課題の解決です。自己覚知は、ワーカーが自分の価値観や感情の傾向を知ることで、援助関係の目的とは別のものです。
3→×パターナリズムは、ワーカーがクライエントの意思に関わりなく、本人の利益のために本人に代わって判断することです。
4→×受容は、クライエントをありのままに受け止めることであり、逸脱した態度や行動を許容することまでは含みません。
5→×矛盾を指摘することは、直面化です。自己開示は、ワーカーが自分の経験や感情を伝えることです。

第35回問題104

ソーシャルワークにおける援助関係に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 転移とは,ソーシャルワーカーが,クライエントに対して抱く情緒的反応全般をいう。
2 統制された情緒的関与とは,ソーシャルワーカーが,自らの感情を自覚し,適切にコントロールしてクライエントに関わることをいう。
3 同一化とは,ソーシャルワーカーが,クライエントの言動や態度などに対して,自らの価値観に基づく判断を避けることをいう。
4 エゴグラムとは,ソーシャルワーカーが,地域住民同士の関係について,その相互作用を図式化して示すツールをいう。
5 パターナリズムとは,ソーシャルワーカーが,クライエントの意思に関わりなく,本人の利益のために,本人に代わって判断することをいう。

解説

1→×ワーカーがクライエントに向ける感情は、逆転移です。転移は、クライエントが過去の重要な人物に向けていた感情をワーカーに向けることです。
2→○統制された情緒的関与の説明です。
3→×同一化は、相手の感情や立場を、まるで自分のことのように感じ、自分と相手の区別がつかなくなることです。自らの価値観に基づく判断を避けることは、非審判的態度の説明です。
4→×エゴグラムは、質問への回答から、その人の性格の傾向を5つの要素に分けてグラフで示す性格検査です。交流分析という心理療法の考え方に基づいています。人と人との関係を図に表すものとは別のものです。集団の中で誰と誰がつながっているかを線で結んで図に表すものは、モレノ(Moreno, J.)が考案したソシオグラムです。
5→○パターナリズムの説明です。

第32回問題107

ソーシャルワークにおける援助関係に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ラポールとは、被援助者に代わって援助者が意思決定することを表す。
2 パートナーシップとは、援助者と被援助者が共に課題に取り組む関係性を表す。
3 逆転移とは、被援助者が自己の感情を援助者に向けることを表す。
4 パターナリズムとは、援助者と被援助者間の情動的な絆を表す。
5 アタッチメントとは、被援助者が援助者から自立している状態を表す。

解説

1→×ラポールは、信頼に基づいて打ち解けた関係です。被援助者に代わって援助者が意思決定することは、パターナリズムです。
2→○パートナーシップの説明です。
3→×被援助者が自己の感情を援助者に向けることは、転移です。逆転移は、援助者が自分の感情を被援助者に向けることです。
4→×情動的な絆は、アタッチメントです。
5→×アタッチメントは、特定の他者との情緒的な絆です。


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