ジェネラリストソーシャルワークと多職種連携で出題された論点
ジェネラリストソーシャルワークと多職種連携について、次の形で出題されています。
①ジェネラリストソーシャルワークの特徴(第38回問題114)
②ジェネラリストソーシャルワークを提唱した人物(第36回問題95)
③多職種チームのあり方(第34回問題96)
④多職種連携の事例問題(第33回問題97)
第38回問題114は、専門科目の「ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)」で出題されました。
ジェネラリストソーシャルワーク
ソーシャルワークは、ケースワーク、グループワーク、コミュニティワークという三つの方法が、それぞれ別々に発展してきました。しかし、一人の人の生活課題には、本人、家族、職場、地域、制度が絡み合っています。ケースワークだけ、グループワークだけで対応できるものではありません。
そこで、1950年代以降のアメリカで、三つの方法を統合しようとする動きが起こりました。三つの方法を組み合わせて使う段階から、ソーシャルワークを一つのまとまった実践として捉える段階へと進み、1980年代から1990年代にかけて、ジェネラリストソーシャルワークとして体系化されました。ジョンソンとヤンカが、その代表的な論者です。
ジェネラリストソーシャルワークの特徴は、次のとおりです。
①システム理論と生態学の視点→人と環境を、互いに影響し合うシステムとして捉える
②ミクロからマクロまで→個人、家族、グループ、地域、制度のどれも、働きかける対象になる
③共通の過程→どの対象に働きかけるときも、アセスメント、計画、介入、評価という同じ手順で進める
④方法の組み合わせ→状況に応じて、複数の方法を組み合わせて介入する。そのために、多様なシステムへの支援の方法を幅広く知っておく
⑤ストレングスの視点→クライエントと環境の強さに目を向ける
③の「同じ」は、支援を進める手順が共通だという意味です。バイステックの個別化の原則は、クライエント一人ひとりの違いを理解して、その人に合った支援をすることです。手順がぶれないことと、支援の中身を一人ひとりに合わせることは両立し、両方がそろってこそ適切な支援になります。たとえば、一人暮らしの高齢者への支援でも、子ども食堂を立ち上げようとする地域への支援でも、状況をアセスメントし、計画を立て、実施して評価するという手順は同じです。何をアセスメントし、どのような計画を立てるかは、相手によって変わります。
たとえば、一人暮らしの高齢者が閉じこもりがちになっているとき、本人との面接(個人)、離れて暮らす家族との調整(家族)、地域のサロンへの橋渡し(グループ・地域)、移動手段がない地域であれば市への働きかけ(制度)を、一人のソーシャルワーカーが組み合わせて進めます。
ジョンソンとトール
第36回問題95では、ジェネラリスト・ソーシャルワークを提唱した人物として、トールが誤りの選択肢になりました。ジェネラリスト・ソーシャルワークを提唱したのは、ジョンソンらです。
トールは、1945年の『コモン・ヒューマン・ニーズ』で、人間に共通する基本的なニーズを示しました。公的扶助の職員が、申請に来た人を一人の人間として理解するための手引きとして書かれたものです。
多職種連携とチーム
社会福祉士は、医師、看護師、介護支援専門員、管理栄養士、弁護士など、ほかの専門職とチームを組んで支援します。多職種チームの問題と解くにあたり、共通する視点は以下の通りです。
①ほかの専門職を理解する→それぞれの専門職がもつ文化や価値を理解する
②利用者もチームの一員→利用者や家族も、チームのメンバーに加わる
③所属を越える→所属する施設や機関が違っていても、チームを組む
④対等に協働する→社会福祉士がリーダーとなって上下関係をつくるのではなく、それぞれの専門性を生かして対等に協働する
⑤目標を共有する→各職種独自の目標よりも、チームで共有した方針や目標を優先する
多職種連携の事例問題では、その時点のクライエントの課題が何かを確かめ、その課題に合った専門職に相談するという考え方が共通しています。たとえば、食事の課題には管理栄養士、地域の活動につなぐことには社会福祉協議会の職員、というように、課題と専門職を結びつけます。
国家試験では、ジェネラリストソーシャルワークと多職種チームについて次のように出題されました。
○「どのような対象に働きかけるときも,ソーシャルワークプロセスは同じである。」(第38回問題114)→同じなのは支援を進める手順です。支援の中身は、相手に合わせて変えます。
○「ニーズに適切に対応するために,多様なシステムに対する支援のレパートリーに関する知識を持つことが求められる。」(第38回問題114)
○「多職種チームを構成する他の専門職の文化や価値を理解する。」(第34回問題96)
×「問題を文脈の中で捉え一般化し,状況に応じて効果的な方法を 1 つ選んで介入する。」(第38回問題114)→方法を1つ選ぶのではなく、複数の方法を組み合わせて介入します。
×「トール(Towle, C.)は,ジェネラリストの観点からソーシャルワークの統合化を図り,ジェネラリスト・ソーシャルワークを提唱した。」(第36回問題95)→ジェネラリスト・ソーシャルワークを提唱したのは、トールではなく、ジョンソンらです。
×「多職種チームのメンバーには、利用者を含めてはならない。」(第34回問題96)→利用者もチームの一員です。
×「多職種チームを機能させるために、社会福祉士がリーダーとなりヒエラルヒーを構成する。」(第34回問題96)→上下関係ではなく、対等な立場で協働します。
過去問を解いてみましょう
第34回問題96の解説の( )内の①〜⑤は、上の「多職種連携とチーム」で挙げた考え方の番号です。
第38回問題114
ジェネラリストソーシャルワークに関する次の記述のうち,適切なものを 2 つ選びなさい。
1 ソーシャルワーク専門職が「体制」を維持し,抑圧を正当化しているとの批判から生まれた。
2 問題を文脈の中で捉え一般化し,状況に応じて効果的な方法を 1 つ選んで介入する。
3 どのような対象に働きかけるときも,ソーシャルワークプロセスは同じである。
4 ニーズに適切に対応するために,多様なシステムに対する支援のレパートリーに関する知識を持つことが求められる。
5 問題や病理的なところをストレングスに変換することでエンパワメントを行う。
解説
1→×ジェネラリストソーシャルワークは、ソーシャルワークへの批判からではなく、ケースワーク、グループワーク、コミュニティワークを統合する流れから生まれました。
2→×方法を1つ選ぶのではなく、状況に応じて複数の方法を組み合わせて介入します。
3→○個人、家族、グループ、地域のどれに働きかけるときも、アセスメント、計画、介入、評価という同じ手順で支援を進めます。同じなのは支援を進める手順で、支援の中身は相手に合わせて変えます。
4→○ミクロからマクロまでの多様なシステムに働きかけるため、支援の方法を幅広く知っておく必要があります。
5→×ストレングスは、問題や病理を変換してつくるものではなく、クライエントと環境にもともとある強さです。
第36回問題95
ソーシャルワークを発展させた人物に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 レヴィ(Levy, C.)は,倫理とは,人間関係とその交互作用に対して価値が適用されたものであるとした。
2 トール(Towle, C.)は,ジェネラリストの観点からソーシャルワークの統合化を図り,ジェネラリスト・ソーシャルワークを提唱した。
3 アプテカー(Aptekar, H.)は,相互連結理論アプローチを提唱し,それぞれの理論は相互に影響を及ぼし合い,結びついていると論じた。
4 ジョンソン(Johnson, L.)は,社会的目標を達成するために不可欠な要素として,4 つの基本的ニーズを提示した。
5 ターナー(Turner, F.)は,機能主義の立場に立ちつつ,診断主義の理論を積極的に取り入れ,ケースワークとカウンセリングを区別した。
解説
1→○レヴィの説明です。価値を人との関わりに当てはめたものが倫理です。
2→×ジェネラリスト・ソーシャルワークを提唱したのは、ジョンソンらです。トールは『コモン・ヒューマン・ニーズ』を著しました。
3→×相互連結理論アプローチを提唱したのは、ターナーです。
4→×人間に共通する基本的ニーズを示したのは、トールです。
5→×機能主義の立場で診断主義の理論を取り入れ、ケースワークとカウンセリングを区別したのは、アプテカーです。
第34回問題96
社会福祉士が参加する多職種等によって形成されるチーム(以下「多職種チーム」という。)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 多職種チームを構成する他の専門職の文化や価値を理解する。
2 多職種チームのメンバーには、利用者を含めてはならない。
3 多職種チームでは、メンバーが同一の施設や機関に所属している必要がある。
4 多職種チームを機能させるために、社会福祉士がリーダーとなりヒエラルヒーを構成する。
5 多職種チームでは、チームの方針・目標の設定よりも、社会福祉士としての独自の方針や目標設定を優先する。
解説
1→○ほかの専門職の文化や価値を理解することで、チームの中で協働できます(①)。
2→×利用者や家族も、チームの一員になります(②)。
3→×所属する施設や機関が違っていても、チームを組みます(③)。
4→×メンバーは上下関係ではなく、対等な立場で協働します(④)。
5→×社会福祉士独自の方針や目標よりも、チームで共有した方針や目標を優先します(⑤)。
第33回問題97
事例を読んで、多職種連携の観点から、この時点でのT市の地域包括支援センターのB社会福祉士の対応として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
担当地区の民生委員のCさんより、一人暮らしのDさん(80歳、男性)のことでT市の地域包括支援センターに相談の電話があった。Dさんは3か月ほど前に妻を亡くした後、閉じ籠もりがちとなり、十分な食事をとっていないようである。Dさんはこれまで要支援・要介護認定は受けていない。B社会福祉士がDさんの下を訪ねたところ、Dさんは受け答えはしっかりしていたが、体力が落ち、フレイルの状態に見受けられた。
1 法定後見制度の利用を検討するため、弁護士に助言を求める。
2 サロン活動の利用を検討するため、社会福祉協議会の福祉活動専門員に助言を求める。
3 日常生活自立支援事業の利用を検討するため、介護支援専門員に助言を求める。
4 介護老人福祉施設への入所を検討するため、医師に助言を求める。
5 栄養指導と配食サービスの利用を検討するため、管理栄養士に助言を求める。
解説
1→×Dさんは受け答えがしっかりしており、この時点で法定後見制度の利用を検討する状況ではありません。
2→○閉じこもりがちなDさんが人とつながる場として、サロン活動について、地域の活動に詳しい社会福祉協議会の福祉活動専門員に助言を求めます。
3→×日常生活自立支援事業の窓口は、介護支援専門員ではなく社会福祉協議会です。また、この時点のDさんの課題は、金銭管理ではなく、食事と閉じこもりです。
4→×Dさんは要支援・要介護認定も受けておらず、この時点で施設入所を検討する状況ではありません。
5→○十分な食事をとっていないDさんの栄養の課題について、管理栄養士に助言を求めます。
第36回問題95の選択肢1のレヴィについては、倫理の記事で取り上げています。
→ソーシャルワークの倫理|レヴィ・ドルゴフの倫理原則・倫理的ジレンマ
ソーシャルワークに関する記事の一覧はこちら
→ソーシャルワーク 記事マップ|基盤と専門職・理論と方法(共通・専門)旧:相談援助


コメント