総合的かつ包括的な支援で出題された論点
総合的かつ包括的な支援について、専門科目の「ソーシャルワークの理論と方法(専門)」で、事例問題が出題されています。
①複数の課題を抱える世帯への支援(第37回問題121)
②個別の相談から、同じ課題をもつ人への取組へ(第38回問題118)
③分野を越えて地域の資源を組み合わせる(第38回問題120)
地域の住民と課題を共有する事例(第37回問題120)は、コミュニティワークの記事で取り上げています。
→コミュニティワーク|ロスマンの3つのモデルと事例で出題された進め方
総合的かつ包括的な支援とは
一つの世帯が、いくつもの課題を同時に抱えていることがあります。たとえば、親の介護と子育てを同時に担うダブルケア、高齢の親が中高年のひきこもりの子を支える8050問題などです。高齢者、障害者、子ども、生活困窮といった分野ごとの窓口では、こうした世帯を受け止めきれません。
総合的かつ包括的な支援は、本人と世帯全体を捉え、分野を越えて関係機関が連携し、地域の資源も生かして支える支援です。
社会福祉法では、市町村が、分野を問わない相談支援、社会とのつながりをつくる参加支援、地域づくりを一体的に行う重層的支援体制整備事業を実施できることが定められています。
事例問題に共通する考え方
総合的かつ包括的な支援の事例問題を考える際、どのような問題であったとしても、次の視点で考えると整理しやすくなります。
①本人の意向を中心に→本人が望む暮らし方を尊重する。支援者の判断で家族を引き離したり、一つの役割に専念させたりしない
②世帯全体を見る→相談に来た人だけでなく、家族それぞれの課題と、相談者自身の負担に目を向ける
③分野を越えて連携する→介護、子育て、障害、生活困窮など、課題ごとの担当機関が連携する
④個別の相談から、地域に視野を広げて問題解決を試みる→同じ課題を抱える人が複数いれば、当事者どうしが支え合う場や、経験を共有する場をつくる
⑤地域の資源を組み合わせる→福祉以外の分野も含めて、地域の人や機関の力を組み合わせ、新しい取組をつくる
どのような事例でも、上記の5つの視点で選択肢を読み込むことによって、正しい回答に着地できることを確認してみましょう。解説の( )内の①〜⑤は、上の5つの視点の番号です。
過去問を解いてみましょう
第37回問題121
事例を読んで,A市福祉なんでも相談窓口担当のB職員(社会福祉士)がこの時点で行う対応として,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事 例〕
Cさん(39 歳)は 3 年前夫と離婚し,当時 2 歳の長男を連れて,それまで一人暮らしをしていた母親(73 歳)と同居を始めた。同居開始時,生活全般を母親が支えてくれていたため,Cさんは仕事に専念でき,長男と過ごす時間も確保できていた。しかし数か月前から,母親の物忘れが目立つようになり,会話も成り立たなくなってきたため,家事等も全てCさんが担うようになった。Cさんは心身ともに疲弊し,A市福祉なんでも相談窓口を訪ねた。Cさんは窓口担当のBとの面接において,これまでの経緯を話した後,このまま 3 人で暮らしていきたいと言った。
1 Cさんの母親に,サービス付き高齢者向け住宅の情報を提供する。
2 Cさんの不安や焦燥感を軽減するため,ピアサポートの会を紹介する。
3 長男への虐待につながる恐れがあるため,近くの児童相談所に通告する。
4 Cさん家族の対応を検討するため,子育て支援課や地域包括支援センターと連携する。
5 長男の発達を優先し,育児に専念するよう勧める。
解説
1→×母親が住まいを移る情報は、「このまま3人で暮らしていきたい」というCさんの意向に沿いません(①)。
2→○同じ立場の人と支え合うピアサポートの会は、Cさん自身の不安や焦燥感を軽くする助けになります(②)。
3→×事例には、長男への虐待をうかがわせる事実は書かれていません。
4→○長男の子育てを担当する子育て支援課と、母親の介護を担当する地域包括支援センターが連携して、世帯全体への対応を検討します(②③)。
5→×育児だけに専念するよう勧めると、母親の介護やCさんの仕事が置き去りになり、Cさんの意向にも沿いません(①②)。
第38回問題118
事例を読んで,次の記述のうち,A総合病院のBソーシャルワーカー(社会福祉士)が面接で把握したクライエントニーズへの対応について,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事 例〕
Cさん(55 歳,男性,独居)はA総合病院で 5 年前に糖尿病と診断された。某メーカーの営業職で多忙な日々を過ごしていたCさんは,血糖値のコントロールも良好ではなく,最近の受診も中断していた。ある日,営業中に倒れ,A総合病院に緊急入院となったCさんは医師から「糖尿病は進行している。しかし,まだ改善の可能性(余地)はある」と告げられた。入院中の糖尿病教室で服薬及び栄養指導を受けたCさんであったが,退院後の生活に不安を抱くようになり,Bの元を訪れ「退院後の生活がとても不安で。元の生活に戻ってはいけないと思うのですが,節制した生活をとても一人では続けていくことができないと感じています」と話した。Bは,Cさん以外の糖尿病患者数人からも同様の話を聞いていた。
1 主治医に現在のCさんの糖尿病の医学的状況について問い合わせる。
2 病院の公開講座で,糖尿病治療に関する医師・患者をシンポジストとするシンポジウムを開催する。
3 不安がなくなるよう繰り返し糖尿病教室に参加するよう勧める。
4 管理栄養士にCさんへの栄養指導上の課題について確認する。
5 院内の同じような課題を抱えた糖尿病患者の自助グループの結成を支援する。
解説
1→×Cさんが訴えているのは、病状がわからない不安ではなく、節制した生活を一人では続けられないという不安です。
2→○同じ不安を抱える患者が複数いることから、医師と患者が経験を語る場を、病院の公開講座として設けます(④)。
3→×Cさんは糖尿病教室をすでに受けています。不安の中心は、知識の不足ではなく、一人で続けられないことです。
4→×Cさんは栄養指導をすでに受けています。不安の中心は、指導の内容ではなく、一人で続けられないことです。
5→○同じ課題を抱える患者どうしが支え合う自助グループは、「一人では続けられない」というCさんの不安に応えます(④)。
第38回問題120
事例を読んで,次の記述のうち,A町地域創生課のB職員(社会福祉士)の相談に対し,A町として考えた対応策として,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事 例〕
A町は昔から地域特有の農作物の生産が盛んな地域であったが,近年は農業者の高齢化や後継者不足により耕作放棄地が増え,農業の衰退が地域課題となっている。A町では相談窓口の設置や,新規就農者への助成事業を実施したりしているが,なかなか課題の解決にはつながっていない。Bは,新しい農福連携を視野に入れた地域課題の解決についてA町農業振興課に相談した。
1 人材確保が喫緊の課題のため,公共職業安定所(ハローワーク)に求人申し込みをする。
2 A町や近隣の市町村のボランティアセンターに依頼して,農業ボランティア登録の強化をお願いする。
3 農業者と就労継続支援事業所や小中学校の協力を得て,農業体験プログラムを企画する。
4 隣のC市にある特別支援学校に依頼して,農業実習を必修化してもらう。
5 農業振興課主導で,近隣地域の飲食店に地産地消への協力を求める。
解説
1→×求人の申し込みは、これまでの新規就農者への助成と同じく人手を集める対策で、地域の福祉との連携がありません(⑤)。
2→○地域のボランティアセンターと協力して、農業を支える住民の力を集めます(⑤)。
3→○農業者、就労継続支援事業所、小中学校という、分野の違う地域の資源を組み合わせて、新しい取組をつくります(⑤)。
4→×A町が、隣の市にある学校の教育課程を決めることはできません。
5→×地産地消は農業振興の取組ですが、福祉との連携がなく、農福連携による地域課題の解決になっていません。
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→ソーシャルワーク 記事マップ|基盤と専門職・理論と方法(共通・専門)旧:相談援助

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