犯罪が成立する3つの要件
ある行為が犯罪になるかどうかは、次の3つを順番に確認して判断されます。
①構成要件該当性 法律が定める犯罪の型に当てはまるか
②違法性 その行為が法的に許されないものか
③有責性 その人を非難できるか(責任を問えるか)
3つすべてを満たしてはじめて犯罪が成立します。①②③は順番に確認していきますので、いずれかを満たさなければ、その時点で犯罪は成立しません。
①構成要件該当性
刑法199条は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑に処する」と定めています。この「人を殺した」という部分が、殺人罪の構成要件です。
刑法235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する」と定めています。この「他人の財物を窃取した」という部分が、窃盗罪の構成要件です。
このように、まず、その行為が法律の定める型に当てはまるかどうかを確認します。これが構成要件該当性です。
②違法性
型に当てはまったとしても、その行為が法的に許される場合があります。これを違法性阻却(本来は違法ですが、その行為が法的に許されること)事由といいます。刑法には次の3つが定められています。
正当行為(35条)
正当防衛(36条)
緊急避難(37条)
正当行為
法令による行為や、正当な業務による行為です。
医師が手術のために患者の身体にメスを入れる行為は、そのままなら傷害罪に該当します。しかし、正当な業務による行為ですので、違法性がないものとされます。
正当防衛
刑法36条1項は「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」と定めています。
「いきなり殴りかかってきた相手に対し、自分の身体を守るために突き飛ばしてけがをさせてしまった」、このような場合が正当防衛です。相手の行為が「急迫不正の侵害」であったという部分が大切です。相手の行為が不正なものでなければなりません。
緊急避難
刑法37条1項は、自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為について定めています。
火事から逃げるために、隣の家の塀を壊して逃げた。このような場合が緊急避難です。塀の持ち主は、何も悪いことはしていませんが、危険を避けるためにやむを得なかったので、犯罪は成立しないとされます。
③有責性
①構成要件該当性②違法性もあると判断された場合、最後にその人を罪に問うことができるかを検討するのが有責性(責任があると言えるか)です。
ここで問題になるのが責任能力です。心神喪失であれば処罰されず、14歳未満であれば犯罪は成立しません。心神耗弱については、こちらの記事をご参照ください。
→刑法の心神喪失と心神耗弱の違い|弁識能力と制御能力で判断する
過去問を確認しましょう
第37回問題58
選択肢の一部を抜粋します。
①正当行為,正当防衛,あるいは緊急避難が認められた場合には,有責性がないものとして,無罪になる。
②正当防衛とは,正当な侵害に対して,自己または他人の権利を防衛するため,やむを得ずにした行為のことをいう。
解説
①→× 有責性ではなく、違法性がないものとされます。
②→× 正当な侵害ではなく、「急迫不正の侵害」に対して行われるものです。
この問題の他の選択肢は、責任能力についての記述です。こちらは別の記事にまとめています。


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