住居確保給付金とは
「家賃が払えなくなったら、住む場所を失ってしまうのではないか」そんな不安を抱える者を支えるのが、生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金です。社会福祉士・精神保健福祉士国家試験では「貧困に対する支援」「地域福祉と包括的支援体制」「社会福祉の原理と政策」など、複数の科目で出題されてきた論点です。
住居確保給付金は、生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)に基づき、離職・廃業などにより住居を失った、または失うおそれのある者に対して、家賃相当額を有期で支給する制度です。生活困窮者自立支援制度の中で自立相談支援事業と住居確保給付金が必須事業に位置付けられており、全国のすべての福祉事務所設置自治体で実施しなければならない事業として位置づけられています。
支給された給付金は、自治体から家主や不動産媒介事業者等へ直接支払われる(代理納付)点も特徴です。
対象者
対象となるのは、次のいずれかに該当し、住居を喪失している、またはそのおそれがある者です。
①離職・廃業の日から2年以内(疾病・負傷・育児等やむを得ない理由がある場合は最長4年以内)の者
②個人の責めに帰すべき理由や個人の都合によらない理由で、給与等を得る機会が離職・廃業と同程度まで減少している者
③収入が著しく減少し、家計の改善のために新たな住居を確保する必要があると認められる者
②は2020年(令和2年)の制度改正で追加された要件です。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、正式に離職していなくても収入が大きく減少した者を支援対象に含めるために設けられました。「離職・廃業した者だけが対象」という理解は誤りです。
③は2024年(令和6年)の生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第21号)で加えられ、2025年(令和7年)4月から施行されています。就労によって収入を増やすことが難しい者についても、家賃の安い住宅へ移ることで家計を立て直せるよう、支援の対象に含めたものです。
①②は就労能力と就労意欲があり、求職活動を行うことが要件になります。③はこれと性質が異なり、就職活動を前提としません。
支給期間・支給額・国庫負担
支給期間は原則3か月で、誠実かつ熱心な求職活動(自立相談支援機関の面接月4回以上、ハローワークへの求職申込・職業相談月2回以上、企業等への応募週1回以上など)を継続している場合は3か月ごとに延長でき、最長9か月まで受給できます。
支給額は実際の家賃額を基準に、生活保護の住宅扶助基準額を上限として、市区町村ごとに定められます。費用負担については、国庫負担が4分の3と定められています。
*自立相談支援事業とあわせて必須事業の国庫負担は4分の3となっています。
2025年(令和7年)4月からは、家賃の安い住宅へ転居する際の転居費用補助も設けられました。対象者に③が加わったことと同じ改正によるもので、家計を改善するための転居を後押しする仕組みです。
過去問を解いてみましょう
第34回 問題34(新カリキュラム:地域福祉と包括的支援体制)
住宅の維持・確保に困難を抱える人への支援のための施策に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 生活困窮者住居確保給付金は、収入が減少した理由のいかんを問わず、住宅の家賃を支払うことが困難になった者に対し、家賃相当額を支給するものである。
2 公営住宅の供給を行う地方公共団体は、公営住宅の入居者に特別の事情がある場合において必要があると認めるときは、家賃を減免することができる。
3 住宅確保要配慮者居住支援協議会は、賃貸住宅に入居する者の収入が一定の基準を下回った場合、賃貸人に対して家賃徴収の猶予を命令することができる。
4 生活福祉資金貸付制度の不動産担保型生活資金は、経済的に困窮した65歳未満の者に対し、居住する不動産を担保に生活資金の貸付けを行うものである。
5 被災者生活再建支援金は、自然災害により生活基盤に被害を受けた者のうち、一定の所得以下の者に対し、生活再建のための費用の貸付けを行うものである。
解説
1 × 住居確保給付金は「理由のいかんを問わず」ではなく、離職・廃業から2年以内、またはこれと同程度の収入減少という要件があります。
2 ○ 公営住宅法上、特別の事情がある入居者への家賃減免の規定があります。
3 × 住宅確保要配慮者居住支援協議会に、家賃徴収を猶予させる命令権限は規定されていません。
4 × 不動産担保型生活資金の対象は「65歳未満」ではなく「65歳以上」の高齢者世帯です。
5 × 被災者生活再建支援金は「貸付け」ではなく「支給」される制度です。
住宅セーフティネット法についての記事はこちらです。
→住宅セーフティネット法とは?住宅確保要配慮者への支援と令和6年改正をわかりやすく解説
被災者生活再建支援金についての記事はこちらです。
→災害対策基本法|要配慮者・避難行動要支援者・個別避難計画
第34回 問題64(新カリキュラム:貧困に対する支援)
※選択肢の一部
事例を読んで、Q市福祉事務所のH生活保護現業員(社会福祉士)がJさんに対して行う説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。(事例は生活保護受給中で就労可能になったJさんが、住宅扶助基準額を超える家賃の住宅への転居も考えているという内容)
4 住宅扶助の基準額を超える家賃の住宅に転居する場合、生活困窮者住居確保給付金を毎月受給できる。
解説
4 × 住居確保給付金は生活保護受給者を主たる対象とする制度ではなく、「住宅扶助基準額を超える家賃の住宅への転居」を理由に受給できるものでもありません。
第36回 問題31(旧カリの現代社会と福祉)
居住支援に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 住宅確保要配慮者居住支援協議会は、住宅確保要配慮者に対して家賃の貸付けを行っている。
2 住居確保給付金は、収入が一定水準を下回る被用者に限定して、家賃を支給するものである。
3 シルバーハウジングにおけるライフサポートアドバイザーは、身体介護を行うために配置されている。
4 「住宅セーフティネット法」は、住宅確保要配慮者が住宅を購入するための費用負担についても定めている。
5 地方公共団体は、公営住宅法に基づき、住宅に困窮する低額所得者を対象とする公営住宅を供給している。
解説
1 × 協議会は関係者間の連携の場であり、家賃の貸付けを行う組織ではありません。
2 × 住居確保給付金は被用者に限定されず、離職・廃業から2年以内の者なども対象となります。
3 × ライフサポートアドバイザーは、生活指導・相談、安否確認、緊急時対応などを行います。
4 × 住宅セーフティネット法は賃貸住宅の供給促進を図る法律であり、住宅の購入費用負担は定めていません。
5 ○ 公営住宅法に基づき、地方公共団体が低額所得者向けの公営住宅を供給しています。
選択肢1と4については、住宅セーフティネット法に関する問題です。
→住宅セーフティネット法とは?住宅確保要配慮者への支援と令和6年改正をわかりやすく解説
第38回 問題51(地域福祉と包括的支援体制)
事例を読んで,次のうち,A市の地域包括支援センターのB社会福祉士が連携すべき相手として,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事例〕
Bは,民生委員から一人暮らしのCさん(70歳,男性)に関する相談を受けた。Cさんに結婚歴はなく,65歳の時にA市に転入し,警備会社で働いていたが,69歳の時に脳梗塞を発症して退職し,老齢厚生年金で生活している。右半身に不全感が残っており,文字を書くことに不自由さがあるが,生活に支障はない。
先日,民生委員が高齢者実態調査のために訪問した際,Cさんが住む民間賃貸住宅は以前から建て替えをすることが決まっており,立ち退きを求められていたが,周辺地域の家賃が高騰しており,引っ越し手続きや保証人等をどうしたらよいか分からないとの相談があった。
1 居住支援法人の担当者
2 生活支援体制整備事業の担当者
3 消費生活センターの担当者
4 日常生活自立支援事業の担当者
5 生活困窮者住居確保給付金の担当者
解説
1 ○ 居住支援法人は、住宅確保要配慮者に対し、賃貸住宅への入居に係る情報提供や相談、家賃債務保証などを行います。
2 × 生活支援体制整備事業は、地域の生活支援サービスの担い手を確保し、資源を開発する事業です。個別の転居の手続きに対応する事業ではありません。
3 × 消費生活センターは消費生活に関する苦情や相談に応じる機関です。建て替えに伴う立ち退きは対象になりません。
4 × 日常生活自立支援事業の対象は、判断能力が不十分な者です。Cさんは書字に不自由がありますが、生活に支障はありません。
5 ○ 住居確保給付金は、住居を失うおそれがある者に家賃相当額を支給します。周辺の家賃が高騰するなかで転居を迫られているCさんは、相談する相手として適切です。
生活支援体制整備事業についての記事はこちらです。
→生活支援体制整備事業とは|生活支援コーディネーターと協議体の役割


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