介護保険制度に関わる専門職
介護保険のサービスは、職種ごとに配置と職務が決められています。介護支援専門員が居宅サービス計画を作成し、サービス提供責任者が訪問介護計画を作成し、訪問介護員が身体介護と生活援助を提供します。計画を作る人とサービスを提供する人が分かれているところが、介護保険の専門職を整理するときの軸になります。
ここでは、介護支援専門員、サービス提供責任者、訪問介護員、介護福祉士の四つを中心に、それぞれの配置先、職務、資格の要件を確認します。あわせて、福祉用具専門相談員や居宅療養管理指導に関わる職種など、サービスごとに配置される専門職も取り上げます。以下は専門職の全体像で、国家試験に出題されたポイントに絞って以降の段落で説明します。
介護支援専門員の役割
〇介護支援専門員は、指定居宅介護支援事業所、介護保険施設、地域包括支援センターなどに配置されます。介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、実務研修を修了した人が、都道府県知事の登録を受けて介護支援専門員証の交付を受けます。
〇指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員の業務は、介護保険法と指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準に定められています。第30回問題134、第35回問題132で出題された内容は次のとおりです。
・利用者の心身の状況、置かれている環境、希望を把握して課題分析を行います。
・居宅サービス計画の原案を作成します。
・サービス担当者会議を開催し、担当者から専門的な見地の意見を求めます。
・居宅サービス計画の原案の内容を利用者と家族に説明し、文書によって利用者の同意を得ます。
・居宅サービス計画を利用者と担当者に交付します。
・実施状況を把握し、必要に応じて計画を変更します。
〇実施状況の把握はモニタリングと呼ばれます。介護支援専門員は、少なくとも1月に1回は利用者の居宅を訪問して利用者に面接し、少なくとも1月に1回はモニタリングの結果を記録します。
〇居宅サービス計画は、介護支援専門員に作成を依頼せず、利用者が自ら作成することもできます。この場合、利用者は居宅サービス計画を市町村に届け出ます。
〇居宅介護支援は、費用の全額が保険から給付されます。利用者が居宅サービス計画の作成について自己負担はありません。
〇居宅サービス計画には、介護給付等対象サービス以外のサービスも位置づけます。地域住民の自発的な活動によるサービスや、民間事業者が市場サービスとして提供する配食サービスなども、利用者の生活を支えるものであれば計画に組み込みます。
〇利用者が訪問看護や通所リハビリテーションなどの医療サービスを希望している場合、介護支援専門員は、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求めます。利用者の同意を得ることが前提になっている点が、介護支援専門員の判断だけで進めないという趣旨につながります。
〇利用者が介護保険施設への入所を要する場合、指定居宅介護支援事業者は、介護保険施設への紹介その他の便宜を提供します。利用者の選択に委ねるだけでは足りず、事業者が紹介まで行います。
サービス提供責任者と訪問介護員
〇指定訪問介護事業所には、サービス提供責任者と訪問介護員が配置されます。サービス提供責任者は、利用者の数が40人またはその端数を増すごとに1人以上を配置します。
〇サービス提供責任者の職務として第34回問題132で出題された内容は次のとおりです。
・訪問介護計画を作成し、利用者と家族に説明して同意を得ます。
・訪問介護員に対し、利用者の状況についての情報を伝達します。
・訪問介護員に対し、具体的な援助目標と援助内容を指示します。
・訪問介護員の業務の実施状況を把握し、技術指導を行います。
・サービス担当者会議に出席し、介護支援専門員と連携します。
〇サービス提供責任者になるには、介護福祉士、介護福祉士実務者研修の修了者などの要件を満たす必要があります。
〇訪問介護員は、サービス提供責任者の指示を受けて、身体介護と生活援助を提供します。訪問介護員は、常に利用者の心身の状況や置かれている環境等の的確な把握に努め、利用者またはその家族に対して適切な相談および助言を行います。訪問介護員として従事するには、介護福祉士、介護福祉士実務者研修の修了者、介護職員初任者研修の修了者などの要件を満たす必要があります。無資格で従事することはできません。
〇訪問介護計画は、居宅サービス計画(ケアプラン)に沿って作成します。居宅サービス計画を作成するのは介護支援専門員(ケアマネ)で、訪問介護計画を作成するのはサービス提供責任者です。
介護福祉士の位置づけ
〇介護福祉士は、社会福祉士及び介護福祉士法に規定された国家資格です。同法第2条第2項は、介護福祉士を、登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識および技術をもって、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、あわせてその者およびその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者と定めています。利用者への介護だけでなく、介護者に対する指導も定義に入っています。
〇介護福祉士は名称独占資格です。登録を受けていない人が介護福祉士の名称を使うことは禁じられていますが、介護の業務そのものを介護福祉士以外の人が行うことは禁じられていません。医師や看護師のような業務独占資格とは仕組みが違います。
〇介護福祉士が行える医行為は、喀痰吸引等に限られます。医師の指示の下で、口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部の喀痰吸引と、胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養を行います。これらを実施するには、所定の研修を修了し、事業者が登録喀痰吸引等事業者として都道府県知事の登録を受けている必要があります。点滴や注射は含まれません。これらは医師法上の医行為で、看護師等が診療の補助として行う範囲です。
〇認定介護福祉士は、法律に基づく資格ではありません。認定介護福祉士認証・認定機構が民間の仕組みとして認証・認定しているものです。介護保険法や社会福祉士及び介護福祉士法に規定はありません。
サービスごとに配置される専門職
福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員は、指定福祉用具貸与事業所と特定福祉用具販売事業所に2人以上配置されます。利用者に適した福祉用具を選ぶための相談に応じ、福祉用具サービス計画を作成し、使用方法の指導と使用状況の確認を行います。
居宅療養管理指導
居宅療養管理指導は、医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士が行います。歯科衛生士は、訪問して歯科診療を行った歯科医師の指示に基づき、利用者の口腔衛生の向上を図るための指導を行います。管理栄養士は、医師の指示に基づき、傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導を行います。
理学療法士と作業療法士
理学療法士と作業療法士は、理学療法士及び作業療法士法に定義があります。理学療法士は、医師の指示の下に、主として基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えます。作業療法士は、医師の指示の下に、主として応用的動作能力または社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせます。基本的動作能力が理学療法、応用的動作能力と社会的適応能力が作業療法です。
生活相談員
介護老人福祉施設と通所介護には生活相談員が配置され、介護老人保健施設には支援相談員が配置されます。社会福祉士が就く職種として、事例問題にもよく登場します。
過去問を解いてみましょう
第34回問題132
介護保険制度の指定訪問介護事業所(共生型居宅サービスを除く)の従事者に関する次の記述のうち,適切なものを 2 つ選びなさい。
1 訪問介護員として従事する者に対しては資格取得や研修修了等の要件は課されておらず,業務を遂行する上での最低限の技術の習得が条件とされている。
2 訪問介護員は,常に利用者の心身の状況やその置かれている環境等の的確な把握に努め,利用者又はその家族に対し,適切な相談及び助言を行う。
3 訪問介護員が入浴や清拭の支援を行う場合,利用者の主治医の指示に基づいて介護を行うことが義務づけられている。
4 サービス提供責任者は,訪問介護員に対して利用者の状況についての情報を伝達し,具体的な援助目標や援助内容を指示する。
5 サービス提供責任者は,多様な事業者等から総合的に提供される介護サービスの内容などを記載した居宅サービス計画を作成する。
解説
1 × 訪問介護員として従事するには、介護福祉士、介護福祉士実務者研修の修了者、介護職員初任者研修の修了者などの要件を満たす必要があります。
2 ○ 訪問介護員は、利用者の心身の状況や環境の的確な把握に努め、利用者と家族に相談および助言を行います。
3 × 入浴や清拭は日常生活上の介護で、主治医の指示は要件になっていません。医師の指示が必要になるのは喀痰吸引等の医行為です。
4 ○ サービス提供責任者は、訪問介護員に利用者の状況を伝達し、具体的な援助目標と援助内容を指示します。
5 × 居宅サービス計画を作成するのは介護支援専門員です。サービス提供責任者が作成するのは訪問介護計画です。
第35回問題132
指定居宅介護支援事業者とその介護支援専門員の役割などに関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 指定居宅介護支援事業者は,利用者が介護保険施設への入所を要する場合,施設への紹介など便宜の提供は行わず,利用者の選択と判断に委ねることとなっている。
2 居宅サービス計画は,指定居宅介護支援事業者の介護支援専門員に作成を依頼することなく,利用者自らが作成することができる。
3 指定居宅介護支援事業者の介護支援専門員による居宅サービス計画作成業務の保険給付(居宅介護支援)では,利用者の自己負担割合が 1 割と定められている。
4 地域住民による自発的な訪問や民間事業者が市場サービスとして行う配食サービスなどについては,居宅サービス計画に位置づけることはできないとされている。
5 介護支援専門員は,居宅サービス計画の実施状況の把握のため,少なくとも 2 週間に 1 度は利用者宅を訪問することが義務づけられている。
解説
1 × 指定居宅介護支援事業者は、利用者が介護保険施設への入所を要する場合、介護保険施設への紹介その他の便宜を提供します。
2 ○ 利用者は、介護支援専門員に依頼せず、自ら居宅サービス計画を作成することができます。作成した場合は市町村に届け出ます。
3 × 居宅介護支援は費用の全額が保険給付され、利用者の自己負担はありません。
4 × 地域住民の自発的な活動によるサービスや民間の配食サービスも、居宅サービス計画に位置づけます。
5 × モニタリングのための訪問は、少なくとも1月に1回です。
第36回問題133
介護福祉士に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 介護福祉士の法律上の定義には,介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とすることが含まれている。
2 介護福祉士が介護保険制度における訪問介護員として従事する際には,その資格とは別に,政令で定める研修を修了していることがその要件となる。
3 介護福祉士は,医師の指示のもと,所定の条件下であれば,医療的ケアの一つとして脱水症状に対する点滴を実施することができる。
4 介護福祉士は業務独占資格の一つであり,法令で定める専門的な介護業務については,他の者が行うことは禁じられている。
5 認定介護福祉士を認定する仕組みは,2005 年(平成 17 年)に制定された介護保険法等の一部を改正する法律において法定化され,その翌年から施行された。
解説
1 ○ 社会福祉士及び介護福祉士法第2条第2項は、利用者とその介護者に対して介護に関する指導を行うことを介護福祉士の業として規定しています。
2 × 介護福祉士は、その資格だけで訪問介護員として従事できます。別の研修修了は要件になっていません。
3 × 介護福祉士が医師の指示の下で行えるのは喀痰吸引と経管栄養です。点滴は医師法上の医行為で、含まれていません。
4 × 介護福祉士は名称独占資格です。登録を受けていない人が名称を使うことは禁じられていますが、介護の業務そのものは禁じられていません。
5 × 認定介護福祉士は法律に基づく資格ではなく、認定介護福祉士認証・認定機構が行う民間の認定です。
第38回問題88
介護保険制度に関わる各種の専門職の役割に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 訪問介護における訪問介護員は,サービス提供責任者の指導のもと,利用者についての訪問介護計画を作成する業務を担う。
2 福祉用具貸与における福祉用具専門相談員は,介護支援専門員や医師と協議のうえ,利用者に対し,福祉用具の適合のための機能訓練を実施する。
3 居宅療養管理指導における歯科衛生士は,医師又は歯科医師の指示のもと,利用者の口腔衛生の向上を図るため,歯牙や口腔における療養上必要な業務を担う。
4 介護老人福祉施設における栄養士は,医師の指示のもと,利用者のうち傷病者に対する療養のための必要な栄養の指導を行う。
5 通所リハビリテーションにおける理学療法士は,医師の指示のもと,利用者に対し,応用的動作能力や社会的適応能力の回復を図るため,治療体操を実施する。
解説
1 × 訪問介護計画を作成するのはサービス提供責任者です。訪問介護員は、サービス提供責任者の指示を受けて身体介護と生活援助を提供します。
2 × 福祉用具専門相談員は、福祉用具の選定の相談、福祉用具サービス計画の作成、使用方法の指導を行います。機能訓練は理学療法士や作業療法士が行います。
3 ○ 歯科衛生士は、歯科医師の指示に基づき、利用者の口腔衛生の向上を図る業務を担います。
4 × 傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導を行うのは管理栄養士です。栄養士法は両者の業務を区別しています。
5 × 応用的動作能力や社会的適応能力の回復を図るのは作業療法士です。理学療法士は基本的動作能力の回復を図り、治療体操その他の運動を行わせます。
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