バリアフリー法はどのような法律か
バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)は、2006年(平成18年)に成立し、同年12月に施行されました。建築物のバリアフリー化を定めていたハートビル法(1994年(平成6年))と、公共交通機関のバリアフリー化を定めていた交通バリアフリー法(2000年(平成12年))を統合してつくられた法律ですので、バリアフリー新法と呼ばれることもあります。
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律が正式名称ですから、「高齢者」でも「障害者」でも出題される可能性があります!
目的は、高齢者、障害者等の移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性の向上を促進することです。ここでいう高齢者、障害者等は、高齢者や障害者に限られず、日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受ける者を広く含みますので、妊産婦やけがをしている人もこの法律の対象です。
対象となる施設は、旅客施設と車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物の五つで、それぞれについて移動等円滑化基準が省令で定められています。
移動等円滑化基準への適合
バリアフリー法が対象とする建築物は、特定建築物と特別特定建築物の二つです。
特定建築物は、多数の者が利用する建築物で、学校、病院、劇場、集会場、百貨店、ホテル、事務所、共同住宅、老人ホーム等が含まれます。特別特定建築物は、特定建築物のうち、不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用するものとして政令で定められたもので、病院、劇場、集会場、百貨店、ホテル、老人ホーム、体育館、飲食店、公衆浴場、公衆便所等が含まれます。事務所や共同住宅は、そこを利用する者が決まっていますので、特定建築物ではあっても特別特定建築物ではありません。
特別特定建築物は、床面積の合計が2,000平方メートル以上(公衆便所は50平方メートル以上)の建築等をするときに、建築物移動等円滑化基準に適合させることが義務付けられます。特別特定建築物以外の特定建築物は、建築等をするときに、基準に適合させるよう努めることとされています。
2020年(令和2年)の改正では、公立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程、特別支援学校が特別特定建築物に加えられました。また地方公共団体は、条例で、特別特定建築物に特定建築物を追加したり、2,000平方メートルという規模を引き下げたりすることができます。
建築物移動等円滑化基準が定めているのは、出入口、廊下、階段、エレベーター、便所、駐車場といった建築物特定施設の構造や配置です。建築物そのものの造りについての基準ですので、事業者がその建築物の中で業務のために使う機器の仕様は、この基準の対象ではありません。
公共交通事業者等が行うこと
公共交通事業者等は、旅客施設や車両等を新設・導入するときに公共交通移動等円滑化基準に適合させ、すでにある旅客施設や車両等についても基準に適合させるよう努めます。基準には、旅客施設の公共用通路との出入口の幅を90センチメートル以上とすることなど、具体的な数値が定められています。
2020年(令和2年)の改正では、バリアフリー設備の機能を十分に発揮するために職員による操作等が必要な場合に、その役務を提供することが義務付けられました。設備を設置するだけでなく、その設備を使えるようにする行為まで基準に含めたもので、ソフト基準と呼ばれます。この改正は2021年(令和3年)4月から施行されています。
また、公共交通事業者等は、その職員に対して、移動等円滑化を図るために必要な教育訓練を行うよう努めることとされています。こちらは努力義務です。
通路の幅を規定したり、設備を配置するだけでなく、その設備を使えるようにサポートすることまでが求められます。建物に関する規定はハードの基準ですが、サポートすることが求められるのは「ソフト基準」ですね。
市町村が作成する基本構想と移動等円滑化促進方針
市町村は、旅客施設を中心とする地区や、高齢者、障害者等が利用する施設が集まっている地区について、重点整備地区を定め、その地区のバリアフリー化を進めるための移動等円滑化基本構想を作成することができます。
基本構想には、公共交通特定事業、道路特定事業、建築物特定事業等の具体的な事業を位置付けます。2018年(平成30年)の改正では、心のバリアフリーに関する教育啓発特定事業が加えられました。
市町村は、基本構想を作成したときは、おおむね5年ごとに、基本構想に定められた事業の実施の状況について調査、分析及び評価を行うよう努めます。
2018年(平成30年)の改正では、基本構想より広い範囲を対象として、まちづくりの方針を示す移動等円滑化促進方針の制度が創設されました。マスタープランと呼ばれ、これも市町村が作成することができるものです。
この法律の基本方針を定めるのは主務大臣で、市町村が定めるのは基本構想と移動等円滑化促進方針です。
基本方針と基本構想は似ているように見える単語です。一般的に基本方針は国が策定することになっているので、バリアフリー法の「基本構想」も国が策定しているように見えやすいと思います。注意しましょう!
2018年改正
2018年(平成30年)の改正では、基本理念として共生社会の実現と社会的障壁の除去が明記され、国民が高齢者、障害者等の円滑な移動及び施設の利用を確保するために協力するよう努めることが定められました。ハード面の整備だけでなく、周囲の人の理解と協力を含めて進めるという考え方で、心のバリアフリーといわれます。
2020年の改正
2020年(令和2年)の改正では、先に述べたソフト基準の義務付けと公立小中学校等の特別特定建築物への追加のほか、市町村等による心のバリアフリーに関する教育啓発の取組が位置付けられました。
過去問を解いてみましょう
第34回 問題135
「バリアフリー法」に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 公共交通や建築物等の施設設置管理者等は,2020 年(令和 2 年)の改正により,法の施行から 3 年以内に移動等円滑化基準に適合するよう,既存施設の改修等を行わなければならなくなった。
2 公共用通路の出入口は,移動等円滑化基準において,その幅を 60 cm 以上としなければならない。
3 公共交通事業者等は,その職員に対して移動等円滑化を図るために必要な教育訓練を行うよう努めなければならない。
4 厚生労働大臣は,旅客施設を中心とする地区や高齢者等が利用する施設が集まった地区について,移動等円滑化基本構想を作成しなければならない。
5 移動等円滑化基本構想に位置づけられた事業の実施状況等の調査・分析や評価は,おおむね 10 年ごとに行わなければならない。
(注)「バリアフリー法」とは,「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」のことである。
解説
1 × すでにある施設については、移動等円滑化基準に適合させるよう努めることとされており、期限を区切って改修を義務付ける定めはありません。
2 × 公共用通路との出入口の幅は、90センチメートル以上とされています。
3 ○ 公共交通事業者等は、職員に対する教育訓練を行うよう努めることとされています。
4 × 移動等円滑化基本構想を作成することができるのは市町村で、作成が義務付けられているものでもありません。
5 × おおむね5年ごとに、調査、分析及び評価を行うよう努めることとされています。
第38回 問題56
視覚障害のあるAさんは,出張に際して用務地に近いホテルを予約した。用務が終わり,ホテルにチェックインしようとしたところ,チェックインは,備え付けのタブレット端末で行うよう言われた。しかし,視覚障害のあるAさんは,タッチパネル式のタブレット端末を利用することができずに困ってしまった。
次の記述のうち,視覚障害者がホテルを利用できるよう,予めの準備も含め,ホテルが法令に基づき行うことが求められる対応として,適切なものを 2 つ選びなさい。
1 ホテルが導入したタッチパネル式のチェックインシステムは,「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が求めるユニバーサルなシステムに合致しないので,撤去する。
2 「バリアフリー法」に基づき定められた建築物移動等円滑化基準に従い,視覚障害者が使用できる点字ディスプレイを用いたチェックインシステムを導入する。
3 タブレット端末でのチェックイン以外のチェックイン方法を合理的配慮の提供として利用できるようにしておく。
4 タッチパネル式のチェックインシステムを利用できない者に対しては,その旨の事前連絡を必須として求める。
5 視覚障害を含む障害のある利用者への適切なサービス提供のために,従業員向けの研修に努める。
(注)1 「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」とは,「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」のことである。
2 「バリアフリー法」とは,「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」のことである。
解説
1 × 障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法は、施策の基本理念と国や地方公共団体が講ずる施策を定めた法律で、事業者に対して機器の撤去を求める規定は置かれていません。
2 × 建築物移動等円滑化基準が定めているのは、出入口、廊下、階段、エレベーター、便所等の建築物の構造や設備で、チェックインシステムの仕様を定めるものではありません。
3 ○ 障害者差別解消法の合理的配慮の提供にあたります。事業者の合理的配慮の提供は、2024年(令和6年)4月から義務です。
4 × 障害のない利用者には求めない条件を課すことになりますので、障害者差別解消法が禁止する不当な差別的取扱いにあたります。
5 ○ 障害者差別解消法が定める環境の整備にあたり、事業者は必要な研修その他の環境の整備に努めることとされています。
障害者差別解消法についての記事はこちら


コメント