リスクマネジメント|ハインリッヒの法則とリーズンのスイスチーズモデル

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福祉サービスの組織と経営
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ハインリッヒの法則

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ハインリッヒは、アメリカの損害保険会社で技師を務めていた人物です。労働災害の事例を統計的に調べ、1件の重大な事故の背後には、重大な事故に至らなかった29件の軽微な事故があり、さらにその背後には事故寸前だった300件の危険な状態がある、という関係を示しました。1対29対300という数字で知られています。

この法則から導かれるのは、重大な事故だけを見ていても事故は減らない、という考え方です。300件の危険な状態の段階で手を打てば、その先の29件と1件を防ぐことができます。福祉サービスの現場でヒヤリハットの報告を集めるのは、この考え方に基づくものです。

第36回問題120では、ハインリッヒが「軽微な事故への対策を実施しても、重大な事故を未然に防ぐことはできない」ことを明らかにしたという選択肢が出ました。ハインリッヒが示したのは逆の内容ですので、この選択肢は誤りです。

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リーズンのスイスチーズモデル(軌道モデル)

リーズンは、イギリスの心理学者です。事故がどのように起きるのかを、チーズのスライスを重ねた図で説明しました。

組織には、事故を防ぐための仕組みがいくつも用意されています。手順書、確認作業、複数人でのチェック、研修などです。リーズンは、この一つひとつを穴のあいたチーズのスライスにたとえました。どの仕組みにも弱点があり、完全なものはありません。それぞれの穴の位置も、そのときどきで変わります。

普段は、ある仕組みの穴を別の仕組みが塞いでいるので、事故には至りません。しかし、複数の穴がたまたま一直線に並んだとき、危険が最後まで通り抜けて事故が起きます。この通り道を軌道と呼ぶことから、軌道モデルとも呼ばれます。

穴が一直線に並んだとき、危険が通り抜けて事故が起きます事故どれかの仕組みが穴を塞いでいれば、事故には至りません事故に至りませんリーズンのスイスチーズモデル(軌道モデル)をもとに著者が作成した図です。無断転載・複製はご遠慮ください。

穴が一直線に並んだとき、危険が通り抜けて事故が起きます 事故 どれかの仕組みが穴を塞いでいれば、事故には至りません 事故に 至りません リーズンのスイスチーズモデル(軌道モデル)をもとに著者が作成した図です。無断転載・複製はご遠慮ください。

第34回問題124では、1対29対300というハインリッヒの法則の内容を示したうえで、これを「リーズンの軌道モデル」と呼ぶ選択肢が出ました。中身はハインリッヒの法則ですので、名称が誤りです。

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過去問を確認しましょう

第31回問題122

「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針〜利用者の笑顔と満足を求めて〜」(厚生労働省)の内容に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

1 利用者の自立的な生活を重視するほどリスクは高まるため、利用者の自由を制約するのはやむを得ない。
2 標準化されたサービスよりも、各職員の経験と勘に頼ったサービスの方が、業務改善や事故の原因の特定が行いやすい。
3 より質の高いサービスを提供することによって多くの事故が未然に回避できる、という考え方で危機管理に取り組むべきである。
4 利用者の状況や施設環境等の個別性が高いため、各施設において十分な検討と創意工夫が必要である。
5 リスクマネジメントは職員全体で取り組むべきことなので、経営者の強いリーダーシップは不要である。

解説

正答は3と4です。
1→× 事故を防ぐために利用者の自由を制約するという考え方は取られていません。自立した生活を支えることとリスクへの対応は両立させるものとされています。
2→× 業務や作業を標準化するほうが、改善点や事故の原因を特定しやすくなります。経験と勘に頼る方法では、何が原因だったのかを後から確かめられません。
3→○ 記述のとおりです。事故を防ぐことを目的に管理を強めるのではなく、サービスの質を高めることを通じて事故を防ぐという考え方です。
4→○ 記述のとおりです。利用者の状況も施設の環境も一つひとつ異なるため、各施設で検討することが求められます。
5→× 組織として取り組むために、経営者が率先して取り組むことが求められています。

第34回問題124

リスクマネジメントに関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。

1  1 件の重大事故の背景には,重大事故に至らなかった 29 件の軽微な事故が隠れており,その背後には事故寸前だった 300 件の危険な状態が隠れているのを,リーズンの軌道モデルという。
2 リスクマネジメントは,厳しい管理体制を敷けば事故はなくせるものという前提に立つ。
3 職員要因のリスクコントロールをするためには,サービスの質の維持・向上を図るための業務や作業の標準化が必要である。
4 リスクマネジメントは,危機管理体制の確立よりも個別リスクへの対応を基本とする。
5 リスクコントロールとリスクファイナンスのうち,リスクコントロールの例として損害賠償保険の活用が挙げられる。

解説

正答は3です。
1→× 1対29対300の関係を示したのはハインリッヒです。名称が誤りです。
2→× 管理体制を厳しくすれば事故がなくなるという前提には立っていません。
3→○ 記述のとおりです。手順を標準化することで、どこに問題があったのかを確かめられるようになります。
4→× 個別のリスクに対応するだけでなく、組織としての危機管理体制を確立することが基本です。
5→× 損害賠償保険の活用はリスクファイナンスの例です。リスクコントロールは事故そのものを減らす取組みを指します。

第36回問題120

経営の基礎理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。

1 バーナード(Barnard, C.)によれば,非公式組織とは,意識的で,計画的で,目的をもつような人々相互間の協働である。
2 テイラー(Taylor, F.)は科学的管理法を提唱し,作業現場の管理について,合理的な規則と手続きによる管理の重要性を強調した。
3 ハインリッヒ(Heinrich, H.)は,軽微な事故への対策を実施しても,重大な事故を未然に防ぐことはできないことを明らかにした。
4 アッシュ(Asch, S.)は,個人として正しい判断ができていれば,多数派の力には負けることはないという現象を明らかにした。
5 メイヨー(Mayo, G.)とレスリスバーガー(Roethlisberger, F.)は,組織における経済的合理性を追求する,経済人モデルを提唱した。

解説

正答は2です。
1→× 意識的で計画的で目的をもつ協働は、バーナードのいう公式組織です。非公式組織は、そうした意図なしに生まれる人と人とのつながりを指します。
2→○ 記述のとおりです。
3→× ハインリッヒが示したのは、軽微な事故や事故寸前の状態に対応することで重大な事故を防げるという考え方です。
4→× アッシュが明らかにしたのは、正しい判断ができる場合でも多数派の意見に同調してしまうという現象です。
5→× メイヨーとレスリスバーガーはホーソン実験に基づいて人間関係論を提唱しました。経済人モデルではありません。

第38回問題125

事例を読んで,A社会福祉士を中心に実施した一連の取組において重視した次の考え方のうち,適切なものを 2 つ選びなさい。

〔事 例〕
B障害福祉施設では,中堅・ベテラン職員による「経験に基づく支援・業務」が最も重視され,若手職員が育成されないまま離職してしまうということが相次いだ。そこでAは,会議を定期的に開催して,他の職員と一緒に特に定型的な業務にかかる時間を測定し,不適切な手順や無駄な動作のある業務を洗い出し,効率的な方法を検討した。また,利用者の特性に応じた支援マニュアルなどを作成した。会議は継続して行われ,支援方法の改善や不要な業務の廃止に取り組んだ。会議での議論の積み重ねから,法人理念の改訂について,理事会へ提案するなどの活動にも至った。これら一連の取組の中で,職員間のコミュニケーションも増え,職員の定着率も上がっていった。

1 エンゲージメント
2 リスキー・シフト
3 ダブル・ループ学習
4 科学的管理法
5 ハインリッヒの法則

解説

正答は3と4です。
1→× エンゲージメントは、職員が組織や仕事に対して持つ愛着や貢献の意欲を指す言葉です。事例で重視されたのは、業務の測定と手順の見直しです。
2→× リスキー・シフトは、集団で議論すると個人で判断するときよりも危険な方向へ結論が傾く現象です。
3→○ 会議での議論の積み重ねから、法人理念の改訂という前提そのものの見直しに至っています。既存の枠組みを問い直す学習がダブル・ループ学習です。
4→○ 業務にかかる時間を測定し、無駄な動作を洗い出して効率的な方法を検討する取組みは、テイラーの科学的管理法の考え方によるものです。
5→× ハインリッヒの法則は、1件の重大な事故の背後に29件の軽微な事故と300件の危険な状態があるという関係を示したものです。

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