障害者基本法の目的
障害者基本法は、障害者の自立と社会参加の支援等のための施策について、基本原則を定め、国と地方公共団体の責務を明らかにし、施策の基本となる事項を定める法律です。第1条が、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を掲げています。この法律を受けて作られた個別の法律が定めています。
2011年(平成23年)の改正より前の法律には、「障害者本人が自立に努めることを」求める規定が置かれていましたが、この規定は同年の改正で削除されています。
障害者の定義
第2条第1号
障害者:身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの
この定義には二つの要素があります。
①身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある心身の機能の障害があること
②その障害と社会的障壁によって継続的に相当な制限を受けている状態にあること
つまり、相当な制限を受けるのは、障害だけが理由だけでなく、社会的障壁(社会側に何らかのバリアがある)からだという立場に立っている定義と言えます。
社会的障壁
第2条第2号は、社会的障壁を、障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものと定義しています。
この定義には四つのものが並べて挙げられています。
・事物は、通行や利用がしにくい施設や設備、使いにくい機器など
・制度は、利用しにくい手続や決まり
・慣行は、文化や情報の面での配慮を欠いた行動
・観念は、障害のある人に対する無理解や偏見
社会的障壁は物理的なものに限られず、周囲の人がもつ意識も社会的障壁にあたります。
障害を心身の機能だけでとらえるのではなく、社会の側にある障壁とあわせてとらえる考え方を、社会モデルといいます。障害者基本法の障害者の定義に社会的障壁が入ったのは2011年(平成23年)の改正で、障害者権利条約の批准に向けた国内法の整備の一環として行われました。
障害者基本法の改正経緯は頻出です。こちらの記事で流れを確認しましょう。
→【流れで覚える歴史シリーズ】障害者福祉②|心身障害者対策基本法から障害者基本法へ
基本原則
第3条から第5条までが基本原則です。
地域共生社会
第3条は、地域社会における共生等を定めています。障害者が、どこで誰と生活するかについて選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと、言語その他の意思疎通のための手段について選択の機会が確保されることなどが挙げられています。2011年(平成23年)の改正では、この言語には手話が含まれると条文に明記されています。
差別の禁止
第4条は、差別の禁止を定めています。何人も、障害者に対して、障害を理由として差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならないとされています。差別の禁止が基本理念として明文化されたのは、2004年(平成16年)の改正です。
合理的配慮
第4条第2項は、社会的障壁の除去を必要としている障害者から現に除去を必要としている旨の意思の表明があった場合に、その実施に伴う負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮がされなければならないと定めています。合理的配慮の考え方は、2011年(平成23年)の改正で入りました。
国際的協調
第5条は、国際的協調を定めています。共生する社会の実現は、国際社会における取組と密接に関係することから、国際的協調のもとに図られなければならないとされています。
障害者基本計画
国、都道府県、市町村がそれぞれ策定する計画と、策定が義務となった時期は次のとおりです。
政府は、毎年、障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を国会に提出しなければなりません。この報告書が障害者白書です。提出するのは政府で、提出先は国会です。
障害者政策委員会
障害者政策委員会は、障害者基本計画の策定または変更にあたって、内閣総理大臣に意見を述べます。
委員は30人以内で、内閣総理大臣が任命します。任命される者として、障害者、障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者、学識経験のある者が条文に挙げられています。障害者が委員に任命される者として明記されています。
障害者政策委員会の設置は、条約批准の一環として行われています。条約の内容、基本法の改正
【流れで覚える歴史シリーズ】障害者④|障害者権利条約の批准が与えた影響
障害者基本法を具体化した法律
障害者基本法が定めた原則や施策の方向は、個別の法律によって具体化されています。
障害者差別解消法
第4条の差別の禁止を具体化したのが、障害者差別解消法です。行政機関等と事業者について、不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供を定めています。
障害者差別解消法についての記事はこちら
障害者雇用促進法
第19条は、国と地方公共団体が、障害者の職業相談、職業指導、職業訓練などの施策を講じることを定めています。これを具体化したのが障害者雇用促進法です。法定雇用率や、雇用の分野における差別の禁止と合理的配慮の提供を定めています。
障害者雇用促進法についての記事はこちら
障害者情報アクセシビリティー・コミュニケーション推進法
第22条は、国と地方公共団体が、障害者が円滑に情報を取得し利用し、意思表示や意思疎通を図ることができるようにするための施策を講じることを定めています。これを具体化したのが、2022年(令和4年)に成立した障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法です。正式名称は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律です。
障害者総合支援法
第14条は、国と地方公共団体が、障害者が生活機能を回復し、取得し、維持するために必要な医療の給付やリハビリテーションの提供、介護の給付などを行うことを定めています。これを具体化したのが障害者総合支援法です。
過去問を解きましょう
第34回 障害者に対する支援と障害者自立支援制度 問題61
障害者基本法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「障害者」とは、「身体障害、知的障害又は精神障害により、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」と定義されている。
2 意思疎通のための手段としての言語に手話が含まれることが明記されている。
3 都道府県は、毎年、障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を国に提出しなければならないとされている。
4 社会モデルを踏まえた障害者の定義は、国際障害者年に向けた取組の一環として導入された。
5 障害を理由とする差別の禁止についての規定はない。
解説
1 × この記述は2011年(平成23年)の改正より前の定義です。現在の定義には、発達障害とその他の心身の機能の障害、社会的障壁が入っています。
2 ○ 第3条第3号に、言語に手話を含むと書かれています。2011年(平成23年)の改正で明記されました。
3 × 報告書を提出するのは政府で、提出先は国会です。この報告書が障害者白書です。
4 × 社会モデルを踏まえた定義は、2011年(平成23年)の改正で導入されました。障害者権利条約の批准に向けた国内法の整備の一環です。国際障害者年は1981年(昭和56年)です。
5 × 第4条が差別の禁止を定めています。2004年(平成16年)の改正で明文化されました。
正答 2
第32回 障害者に対する支援と障害者自立支援制度 問題61
障害者基本法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 法の目的では、障害者本人の自立への努力について規定されている。
2 都道府県は、都道府県障害者計画の策定に努めなければならないと規定されている。
3 国及び地方公共団体は、重度の障害者について、終生にわたり必要な保護等を行うよう努めなければならないと規定されている。
4 社会的障壁の定義において、社会における慣行や観念は除外されている。
5 障害者政策委員会の委員に任命される者として、障害者が明記されている。
解説
1 × 障害者本人の自立への努力を求める規定は、2011年(平成23年)の改正で削除されました。
2 × 都道府県障害者計画の策定は義務です。2004年(平成16年)の改正で義務となりました。
3 × 終生にわたる保護を定めた規定はありません。第3条は、障害者がどこで誰と生活するかについて選択の機会が確保されることを定めています。
4 × 社会的障壁の定義には、事物、制度、慣行、観念その他一切のものが挙げられています。慣行と観念も含まれます。
5 ○ 第32条第4項に、障害者、障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者、学識経験のある者のうちから内閣総理大臣が任命すると書かれています。
正答 5

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