今日は「社会福祉の原理と政策」で頻出の、正義とは何かを巡る3人の系譜です。ベンサムの功利主義から、それへの批判としてロールズの正義論が生まれ、さらにロールズへの批判としてセンのケイパビリティアプローチが生まれた、という流れで覚えると、3人がつながって頭に入ります。
今日はこちらの国家試験でよく見かける3人です!
①ベンサムは②ロールズ③セン
①ベンサム|最大多数の最大幸福
ベンサムは、「最大多数の最大幸福」というフレーズで知られる功利主義の創始者です。快楽と苦痛こそが人間の行動の基礎であるとし、ある行為が正しいかどうかは、それがもたらす快楽・幸福の総量によって決まると考えました。ベンサムがいう「NET HAPPINESS IS MORAL」とはどのような意味なのか図で確認しましょう。
「NET HAPPINESS IS MORAL」
純幸福(快楽から不快を差し引いた後の純粋なプラス分)が多いことは道徳的(正しい)
「学びの楽しさ」+「家族で幸せに暮らしている」+「仕事がうまくいっている」=120(快楽の和)
「病気で体痛い」+「仕事がうまくいかない」+「孤独である」=80(不幸の和)
快楽の合計(120)から苦痛・不幸の合計(80)を引いた純幸福(+40)がプラスであるため、
功利主義の観点からは「この状態や行為は差し引きで善(正当)」と判断されます。

個人の快楽や不快をすべて足し合わせて社会全体の「総量」のみを評価基準とするため、社会全体の合計値がプラスになりさえすれば、一部の少数者が強い苦痛(例:80の不幸)を負担させられていても問題視されにくいという構造的な弱点があります。この点が、ロールズをはじめとする後世の倫理学・政治哲学者から「個人の権利や正義を軽視している」と強く批判される要因となりました。
*国家試験では、ベンサムの名前が頻出というより、ベンサムの考え方とロールズの考え方の「違い」に着目した問題が出題されています
②無知のヴェールと格差原理
ロールズは、著書『正義論』(1971年)で、ベンサム流の功利主義を批判し、新しい正義の考え方を示しました。
ロールズが用いた思考実験が「無知のヴェール」です。自分が社会の中でどんな地位・能力・境遇に生まれるか、一切分からない(ヴェールに覆われた)という原初状態を想定したとき、人はどんな社会のルールに合意するか?と考えました。
そして、自分が最も恵まれない立場になるかもしれないと想像すれば、人は最も不遇な人の境遇が最大限改善されるような社会を選ぶはずだという結論に達しました。これが「格差原理(差異原理)」です。
社会的・経済的な不平等が許されるのは、それが最も不利な立場にある人の便益を最大化する場合に限る、という考え方です。

功利主義が「全体の総量」を重視したのに対し、ロールズは「最も不利な立場の人にとってどうか」という視点を正義の中心に据えています。これは所得の再分配やベーシックインカム構想の根拠ともいわれています。
③セン|ケイパビリティ(潜在能力)アプローチ
アマルティア・センは、ロールズの正義論をさらに発展させ、「ケイパビリティ(潜在能力)アプローチ」を提唱しました。
センは、人がどれだけ所得や財を持っているかだけでなく、その人が実際に「何ができるか」「どんな生き方を選べるか」という選択の幅(潜在能力)こそが重要だと考えました。同じ額のお金や同じ財を持っていても、障害の有無や社会的な環境によって、実際にできることの幅は人それぞれ違います。この「できることの幅」に着目した点が、センの理論の核心です。
福祉政策を考えるとき、「何を分配したか」だけでなく「その人が実際に何をできるようになったか」を見るべきだという視点は、現代の社会福祉の考え方にも大きな影響を与えています。
この記事は「頻出!合格のために必ず覚えておきたい人名シリーズ」の一つです。
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