「人生」と「生活」を表す8つの概念を整理します
ライフサイクルとライフコースなど、「人生」と「生活」を表す8つの概念は、3つに分類できます。
①人生は誰もが同じ段階を経ると捉える概念
②人生の道筋は一人ひとり違うと捉える概念
③今の暮らしのあり方を捉える概念
まず一覧で全体をつかんでから、一つずつ見ていきましょう。
人生は誰もが同じ段階を経ると捉える概念(ライフサイクル・ライフステージ・家族周期)
ライフサイクル
ライフサイクルは、人生の「標準的なコース」を描く考え方です。人生を「親元に生まれ、学校に通い、働き、家庭をもち、子育てを経験し、年を重ねる」等、多くの人が同じような順番で経験するものと位置付けます。また、それぞれの段階には、その時期に達成していく発達課題があると捉えます。たとえば、子どもの時期には読み書きや計算の基礎を身につけ、青年期には職業を選び、経済的に自立する準備をします。老年期には、退職して収入が減ることや体力が衰えることを受け入れながら、新しい暮らし方を整えていきます。ライフサイクルは、こうした課題を一つずつ達成しながら進んでいく道筋を、人生の標準的なコースとして描きます。
ライフステージ
ライフステージは、人生のどの段階にいるかを、青年期、成人期、老年期のように分けたものです。たとえば、20代の受験生のみなさんの多くは青年期から成人期へ移るころで、50代の私は中年期にいます。同じこの記事を読んでいても、私たちは別々のライフステージにいるわけです。
家族周期
家族周期は、ライフサイクルを家族に当てはめたものです。結婚、子どもの誕生、子どもの独立、配偶者の死亡と、多くの家族が同じような順番で変化していくと位置付けます。森岡清美は、家族周期を新婚期、育児期、教育期、排出期などの段階に分けました。
人生の道筋は一人ひとり違うと捉える概念(ライフコース・コーホート・ライフイベント)
ライフコース
ライフコースは、一人ひとりがたどる人生の道筋を、生まれた時代やその時々に起きた出来事と結び付けて見る考え方です。ライフコースを理解するには、次の2つを押さえておきましょう。国家試験では、どちらの視点も出題されています。
①一人ひとりがたどる道筋は、それぞれ違うということです。ライフサイクルは、みんなが同じような道を通ると考えます。ライフコースは標準的な段階を設定せず、その人が実際にたどった道筋を重視します。結婚しない人や子どもをもたない人が増え、標準的なコースに当てはまらない人生が増えたことも、この見方が広がった背景にあります。
②その違いを、生まれた時代や出来事と結び付けて見るということです。たとえば同じ10歳でも、世界恐慌が始まった直後の1930年に10歳だった人と、2020年に10歳だった人とでは、その後の人生は大きな違いがあるだろうと捉えます。
ライフコース研究の出発点は、エルダーの研究です。エルダーは、子ども時代に世界恐慌を経験した人々を、大人になるまで追跡しました。同じ時期に生まれた人でも、恐慌で家計が苦しくなった家庭の子どもと、そうでない家庭の子どもとでは、その後の人生に差が生まれていました。エルダーの研究は、人生が年齢だけでなく、どの時代に、どのような経験をしたかによって形づくられることを示しました。まさに②の見方を示した研究です。
コーホート
コーホートは、同じ時期に同じ出来事を経験した人々の集団です。同じ時期に生まれた人々の集団を出生コーホートといいます。1980年生まれ、1990年生まれのように、生まれた年や時期で区切った集団はどれも出生コーホートで、団塊の世代や団塊ジュニア世代、ゆとり世代やZ世代もその例ですね。
ライフイベント
ライフイベントは、入学、就職、結婚、出産、退職など、人生の節目となる出来事です。ライフステージが「時期」を指すのに対して、ライフイベントは「出来事」を指します。ライフステージは「〇〇期」と表現しますが、ライフイベントは「入学した」「結婚した」など、「出来事」「アクション」で表します。
今の暮らしのあり方を捉える概念(生活構造・ライフスタイル)
生活構造
生活構造は、暮らしの「時間割」のようなものです。学校の時間割が毎週同じように繰り返されるように、毎日の暮らしにも決まったパターンがあります。何時に起きて何時間働くか、収入をどう使うか、どこに住み、誰と関わっているか。こうした要素の組み合わせが、ある程度決まったパターンになっているものを生活構造といいます。たとえば夜勤のある仕事に就いていれば、睡眠や食事、家族と過ごす時間も勤務に合わせて決まり、そのパターンが繰り返されることはイメージしやすいかもしれません。
ライフスタイル
ライフスタイルは、その人らしい暮らし方です。同じような時間割で暮らしていても(同じ夜勤の仕事をしていたとしても)、休日の過ごし方やお金の使い方は人それぞれですよね。生活構造の中で、本人が何を大切にし、どのように暮らしているかという、生活の様式や価値観を指します。
過去問を解いてみましょう
第29回問題17
人間のライフサイクルに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ライフサイクルとは、歴史的出来事が与えた各コーホートへの影響の過程を指す。
2 ライフサイクルとは、世代間の形態転換を指す。
3 ライフサイクル上の社会化とは、乳幼児期から青年期までの過程を指す。
4 ライフサイクルとは、結婚した夫婦が子どもを育て死別するまでの過程を指す。
5 ライフサイクルとは、各段階に固有の発達課題を達成していく過程を指す。
解説
1→× これはライフコースの説明です。世界恐慌のような歴史的な出来事と結び付けて人生を見るのは、ライフコースの②の見方でしたね。
2→× ライフサイクルは、一人の人が生まれてから亡くなるまでにたどる「標準ルート」です。
3→× 社会化は、青年期で終わりというわけではありません。就職すれば職場のルールを、親になれば親の役割を、退職すれば地域での暮らし方を身につけます。社会化は一生続きます。
4→× 結婚した夫婦が子どもを育て、死別するまでの流れは家族周期です。ライフサイクルを家族に当てはめた、家族版の標準ルートですね。
5→○ ライフサイクルの各段階には、その時期に達成していく発達課題があります。子どもの時期は読み書き、青年期は職業選び、老年期は退職後の暮らしづくりというように、段階が進むと課題も入れ替わっていきます。
第33回問題18
次のうち、標準的な段階設定をすることなく、社会的存在として、個人がたどる生涯の過程を示す概念として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 家族周期
2 ライフステージ
3 コーホート
4 ライフコース
5 生活構造
解説
1→× 家族周期は、結婚、子どもの誕生、子どもの独立と、家族の「標準ルート」を設定する言葉です。「標準的な段階設定をすることなく」とは真逆ですね。
2→× ライフステージは、人生のどの段階にいるかを分けたものです(受験生のみなさんと私で段階が違う、あの話です)。段階で分けている時点で、「段階設定をすることなく」には当てはまりません。
3→× コーホートは、同じ時期に同じ出来事を経験した人たちの集団です。個人がたどる道筋ではなく、人の集まりを指します。
4→○ ライフコースの①の見方です。ライフサイクルのような標準ルートを設定せず、一人ひとりが実際にたどった道筋を見ます。
5→× 生活構造は、毎日繰り返される暮らしの時間割です。一生の流れではなく、いまの暮らしを見る言葉です。
第35回問題18
次の記述のうち、人々の生活を捉えるための概念の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生活時間とは、個々人の人生の横断面に見られる生活の様式や構造、価値観を捉える概念である。
2 ライフステージとは、生活主体の主観的状態に注目し、多面的、多角的に生活の豊かさを評価しようとする概念である。
3 生活の質とは、時間的周期で繰り返される労働、休養、休暇がどのように配分されているかに注目する概念である。
4 家族周期とは、結婚、子どもの出生、配偶者の死亡といったライフイベントの時間的展開の規則性を説明する概念である。
5 ライフスタイルとは、出生から死に至るまでの人の生涯の諸段階を示す概念である。
解説
1→× 「人生の横断面」とは、いまの暮らしを輪切りにして見ることです。そこに表れる生活の様式や価値観を見るのはライフスタイルです。生活時間は、名前のとおり時間の使い方の話です。
2→× 本人の感じ方も含めて生活の豊かさを評価しようとするのは、生活の質(QOL)です。ライフステージは、人生のどの段階にいるかを分けたものでしたね(受験生のみなさんと私で段階が違う、あの話です)。
3→× これは生活時間の説明です。1日のうち、働く、休む、遊ぶに何時間ずつ使っているかを見ます。
4→○ 家族周期の説明です。結婚、子どもの出生、配偶者の死亡と、家族のライフイベントが決まった順番で起こるという、家族版の標準ルートです。
5→× 出生から死に至るまでの段階を示すのはライフステージです(ここでも、あの青年期・中年期の話です)。ライフスタイルは、同じ時間割の中でも人それぞれの「過ごし方」です。
第36回問題19
次の記述のうち、ライフサイクルについての説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 個人の発達の諸段階であり、生物学的、心理学的、社会学的、経済学的な現象がそれに伴って起きることを示す概念である。
2 生活を構成する諸要素間の相対的に安定したパターンを指す概念である。
3 社会的存在としての人間の一生を、生まれた時代や様々な出来事に関連付けて捉える概念である。
4 個人の人生の横断面に見られる生活の様式や構造、価値観を捉えるための概念である。
5 人間の出生から死に至るプロセスに着目し、標準的な段階を設定して人間の一生の規則性を捉える概念である。
解説
1→× 個人の発達の段階と、それに伴って体、心、役割、お金の状況が変わっていくことを示すのはライフステージです。青年期から中年期へ進めば、体力も役割も家計も変わりますよね。
2→× 生活を構成する要素の「相対的に安定したパターン」とは、毎日繰り返される暮らしの時間割のことです。これは生活構造の説明です。
3→× 生まれた時代や出来事と関連付けて一生を捉えるのは、ライフコースの②の見方です。エルダーの研究を思い出しましょう。
4→× 人生の横断面、つまりいまの暮らしを輪切りにして、生活の様式や価値観を見るのはライフスタイルです。
5→○ 標準的な段階を設定して、一生の規則性を捉えるのがライフサイクルです。みんなに共通する「標準ルート」そのものです。
第38回問題17
次の記述のうち、人々の生活に関連する社会学の概念についての説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ライフスタイルとは、社会経済的地位によって決まる日常生活のパターンを表す概念である。
2 ライフステージとは、ある特定の時期にある特定の出来事を同時に経験するような人生の段階を表す概念である。
3 出生コーホートとは、同じ年に生まれた人々の生活や人生に関する評価を規定する価値観などの諸要因の複合を表す概念である。
4 ライフコースとは、人々の生活や人生を生まれた時代や歴史的な出来事と関連づけて捉える概念である。
5 ライフイベントとは、人間が誕生してから死に至るまでの過程における各段階を表す概念である。
解説
1→× ライフスタイルは、収入や地位だけで決まるものとはされていません。同じ収入でも、休日に山へ出かける人もいれば、家でゆっくり過ごす人もいますよね。本人が大切にしていることが表れる、生活の様式や価値観を指します。
2→× 「同じ時期に同じ出来事を経験する」のは、コーホートの説明です。ライフステージは、人生のどの段階にいるかを分けたものです(受験生のみなさんと私で段階が違う、あの話です)。
3→× 出生コーホートは、同じ時期に生まれた人たちの集団、つまり人の集まりです。この選択肢は、いつの間にか価値観の話にすり替わっています。
4→○ ライフコースの②の見方です。同じ10歳でも、1930年に10歳だった人と2020年に10歳だった人とでは、その後にたどる道が違います。その違いを、生まれた時代や出来事と結び付けて見るのがライフコースです。
5→× ライフイベントに「段階」の説明がくっついています。入学や結婚は「○○期」ではなく、「○○した」と言える出来事です。段階を表すのはライフステージです。
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