差別の解消に関する法律
日本では、差別の解消を目的とする法律が、対象ごとに次のように定められています。法律名から各記事に移動できます。
部落差別解消推進法
同和問題は、日本社会の歴史的過程で形づくられた身分差別により、特定の地域の出身であることやそこに住んでいることを理由として、結婚や就職などで差別を受ける人権問題です。国は、1965年の同和対策審議会答申で同和問題の解決を国の責務と位置づけ、1969年の同和対策事業特別措置法に始まる特別対策で生活環境の改善などを進め、特別対策は2002年に終了しました。
部落差別解消推進法(部落差別の解消の推進に関する法律)は、2016年12月に成立し、同月に施行されました。現在もなお部落差別が存在し、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ、部落差別は許されないものであるとの認識の下に、部落差別のない社会を実現することを目的としています。
国は部落差別の解消に関する施策を講ずる責務を負い、地方公共団体は地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めます。施策として、相談体制の充実、教育と啓発、部落差別の実態に係る調査の三つを定めています。差別を禁止する規定や罰則は置かれておらず、理念法(禁止規定を置かない法律)に位置づけられます。部落差別解消推進法は、同じ2016年に施行された障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法とあわせて、人権三法(差別解消三法)と呼ばれることがあります。
アイヌ施策推進法
アイヌ施策推進法(アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律)は、1997年に制定されたアイヌ文化振興法に代わる法律として、2019年4月に成立し、同年5月に施行されました。第1条で、アイヌの人々を北海道の先住民族と明記しています。
アイヌ施策推進法は、何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならないと定めていますが、この規定に違反した場合の罰則は置かれていません。施策として、市町村がアイヌ施策推進地域計画を作成して内閣総理大臣の認定を受けると、国から交付金が交付される仕組みが設けられました。
差別を禁止する規定があるかどうかと、罰則があるかどうかは別の問題です。障害者差別解消法は、行政機関等と事業者に不当な差別的取扱いをしてはならないと定めていますが、差別的取扱いそのものに対する罰則はありません。アイヌ施策推進法も、何人もアイヌであることを理由として差別してはならないと定めていますが、その違反に対する罰則はありません。一方、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消推進法、LGBT理解増進法は、差別を禁止する規定を置かず、差別は許されないという認識を宣言したうえで、相談、教育、啓発などの施策を定めています。
演習問題を解いてみましょう(過去問は2026年10月現在ではありません)
演習問題1
差別の解消に関する法律についての次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「部落差別解消推進法」は、部落差別の定義を規定している。
2 「部落差別解消推進法」は、部落差別を行った者に対する罰則を規定している。
3 「部落差別解消推進法」は、国が地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行うことを規定している。
4 「ヘイトスピーチ解消法」は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を禁止し、違反した者に対する罰則を規定している。
5 「障害者差別解消法」は、事業者による合理的配慮の提供を努力義務としている。
(注)1 「部落差別解消推進法」とは、「部落差別の解消の推進に関する法律」のことである。
2 「ヘイトスピーチ解消法」とは、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」のことである。
3 「障害者差別解消法」とは、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。
解説
1 × 部落差別解消推進法は部落差別の解消を目的としていますが、部落差別の定義規定は置かれていません。
2 × 部落差別解消推進法は、相談体制の充実、教育と啓発、実態調査によって部落差別の解消を目指す法律で、罰則は置かれていません。
3 ○ 国は、地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行うものとされています。
4 × ヘイトスピーチ解消法は、不当な差別的言動は許されないことを宣言していますが、禁止規定や罰則は置かれていません。
5 × 事業者による合理的配慮の提供は、2021年の改正により、2024年4月1日から義務になりました。
演習問題2
差別の解消に関する法律についての次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「アイヌ施策推進法」は、アイヌの人々を先住民族と明記している。
2 「アイヌ施策推進法」は、アイヌであることを理由として差別をした者に対する罰則を規定している。
3 「アイヌ施策推進法」は、アイヌであることを理由とする差別の禁止について規定していない。
4 「LGBT理解増進法」は、性的指向を理由とする差別を禁止し、違反した事業主に対する罰則を規定している。
5 「男女雇用機会均等法」は、女性労働者に対する性別を理由とする差別のみを禁止している。
(注)1 「アイヌ施策推進法」とは、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」のことである。
2 「LGBT理解増進法」とは、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」のことである。
3 「男女雇用機会均等法」とは、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」のことである。
解説
1 ○ 第1条で、アイヌの人々を先住民族と明記しています。
2 × アイヌであることを理由とする差別を禁止する規定はありますが、その違反に対する罰則は置かれていません。
3 × 第4条で、何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならないと定めています。
4 × LGBT理解増進法は、不当な差別はあってはならないとする理念法(禁止規定を置かない法律)で、罰則は置かれていません。
5 × 男女雇用機会均等法は、男女双方に対する性別を理由とする差別を禁止しています。
過去問を解いてみましょう
第37回 社会福祉の原理と政策 問題27
次のうち、日本において、法令に照らして「間接差別」となる事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 男女同数の職場にもかかわらず、法人内の管理職がほとんど男性のため、次の昇任人事では女性職員を優先して管理職に登用することにした。
2 職場内で複数の職員が集まって、同僚の職員Aの私生活を噂し、それを聞いた職員Bが不快に思った。
3 広域にわたり展開する施設・事業所がなく、新規展開の計画がないにもかかわらず、転居を伴う転勤を要件として職員を募集し、男性だけを採用した。
4 車いすを利用する障害者が、正当な理由がないにもかかわらず公共交通機関の利用を拒否された。
5 特定の民族や国籍の人々に対し、その民族や国籍のみを理由として、地域社会からの排除を煽動する言動がなされた。
解説
1 × 男女間の格差を解消するために女性を優先する措置は、ポジティブ・アクションとして男女雇用機会均等法で認められています。
2 × 同僚の私生活を噂する行為は、性別などを理由とする基準を用いたものではなく、間接差別にあたりません。
3 ○ 男女雇用機会均等法は、性別以外の事由を要件としながら、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置を、合理的な理由がない限り禁止しています(間接差別)。転居を伴う転勤に応じることができることを募集・採用の要件とすることは、この措置の一つとして定められています。
4 × 障害者差別解消法の不当な差別的取扱いにあたる事例です。
5 × ヘイトスピーチ解消法の不当な差別的言動にあたる事例です。


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