ヘイトスピーチ解消法|本邦外出身者と差別的言動、禁止規定と罰則の有無を整理

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社会福祉の原理と政策
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差別の解消に関する法律

日本では、差別の解消を目的とする法律が、対象ごとに次のように定められています。法律名から各記事に移動できます。

法律法律が扱う差別差別の禁止規定差別そのものへの罰則①障害者差別解消法行政機関等・事業者による障害を理由とする差別的取扱いありなし②障害者雇用促進法雇用分野における障害を理由とする差別的取扱いありなし③男女雇用機会均等法雇用分野における性別を理由とする差別的取扱いありなし④ヘイトスピーチ解消法この記事本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する差別的言動なしなし⑤部落差別解消推進法部落差別なしなし⑥アイヌ施策推進法アイヌであることを理由とする差別ありなし⑦LGBT理解増進法性的指向・ジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別なしなし各法律の条文をもとに著者が作成した図です。無断転載・複製はご遠慮ください。
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ヘイトスピーチ解消法の成立

ヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)は、特定の国や地域の出身者を排斥する街頭デモなどが社会問題となったことを受けて議員立法で制定され、2016年5月に成立し、同年6月に施行されました。前文で、不当な差別的言動は許されないことを宣言しています。

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本邦外出身者と不当な差別的言動の定義

この法律の本邦外出身者は、専ら本邦の域外にある国または地域の出身である者とその子孫であって、適法に居住するものです。

不当な差別的言動は、本邦外出身者に対する差別的意識を助長し、または誘発する目的で、公然とその生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加える旨を告知したり、本邦外出身者を著しく侮蔑したりするなど、本邦の域外にある国または地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する言動と定義されています。

この法律は、このような差別的言動を対象とするものであり、就職や住宅の入居などで出身を理由に不利に扱う差別的取扱いは、この法律の対象に含まれていません。

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国民・国・地方公共団体の役割

国民、国、地方公共団体の役割は次のとおりです。
・国民は、不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深め、不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければなりません(基本理念)。
・国は、不当な差別的言動の解消に向けた施策を実施する責務を負い、相談体制の整備、教育、啓発活動に取り組みます。
・地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めます。

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理念法としての性格

この法律は、表現の自由との関係から、不当な差別的言動を禁止して罰則を科す方法をとらず、相談、教育、啓発によって解消を目指す理念法(禁止規定を置かない法律)として制定されました。国会は法律の成立にあたって附帯決議を行い、本邦外出身者以外の者に対するものであればいかなる差別的言動も許されるという理解は誤りであるとの認識を示しています。

差別を禁止する規定があるかどうかと、罰則があるかどうかは別の問題です。障害者差別解消法は、行政機関等と事業者に不当な差別的取扱いをしてはならないと定めていますが、差別的取扱いそのものに対する罰則はありません。アイヌ施策推進法も、何人もアイヌであることを理由として差別してはならないと定めていますが、その違反に対する罰則はありません。一方、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消推進法、LGBT理解増進法は、差別を禁止する規定を置かず、差別は許されないという認識を宣言したうえで、相談、教育、啓発などの施策を定めています。

過去問を解いてみましょう

第31回 現代社会と福祉 問題26

「ヘイトスピーチ解消法」の内容に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 外国人観光客に対する不当な差別的言動を規制することを目的としている。
2 不当な差別的言動に対する罰則が規定されている。
3 雇用における差別的処遇の改善義務が規定されている。
4 地方公共団体には、不当な差別的言動の解消に向けた取組を行う努力が求められている。
5 基本的人権としての表現の自由に対する制限が規定されている。

(注)「ヘイトスピーチ解消法」とは、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」のことである。

解説

1 × 本邦外出身者は、本邦の域外にある国または地域の出身である者とその子孫であって、適法に居住するものです。外国人観光客に対する規制を目的とする法律ではありません。
2 × 罰則は規定されていません。不当な差別的言動を禁止する規定を置かず、相談、教育、啓発によって解消を目指す理念法です。
3 × 雇用における差別的処遇の改善義務は規定されていません。
4 ○ 地方公共団体は、地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとされています。
5 × 表現の自由を制限する規定は置かれていません。不当な差別的言動を禁止する規定や罰則もありません。

第37回 社会福祉の原理と政策 問題23(選択肢5を抜粋)

多文化共生社会の実現に向けた取組に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

5 「ヘイトスピーチ解消法」では、本邦外出身者も、日本文化の理解に努めなければならないと規定している。

(注)「ヘイトスピーチ解消法」とは、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」のことである。

解説

5 × 理解を深めるよう努めることを求められているのは国民です。本邦外出身者に日本文化の理解を求める規定は置かれていません。

第37回 社会福祉の原理と政策 問題27

次のうち、日本において、法令に照らして「間接差別」となる事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 男女同数の職場にもかかわらず、法人内の管理職がほとんど男性のため、次の昇任人事では女性職員を優先して管理職に登用することにした。
2 職場内で複数の職員が集まって、同僚の職員Aの私生活を噂し、それを聞いた職員Bが不快に思った。
3 広域にわたり展開する施設・事業所がなく、新規展開の計画がないにもかかわらず、転居を伴う転勤を要件として職員を募集し、男性だけを採用した。
4 車いすを利用する障害者が、正当な理由がないにもかかわらず公共交通機関の利用を拒否された。
5 特定の民族や国籍の人々に対し、その民族や国籍のみを理由として、地域社会からの排除を煽動する言動がなされた。

解説

1 × 男女間の格差を解消するために女性を優先する措置は、ポジティブ・アクションとして男女雇用機会均等法で認められています。
2 × 同僚の私生活を噂する行為は、性別などを理由とする基準を用いたものではなく、間接差別にあたりません。
3 ○ 男女雇用機会均等法は、性別以外の事由を要件としながら、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置を、合理的な理由がない限り禁止しています(間接差別)。転居を伴う転勤に応じることができることを募集・採用の要件とすることは、この措置の一つとして定められています。
4 × 障害者差別解消法の不当な差別的取扱いにあたる事例です。
5 × ヘイトスピーチ解消法の不当な差別的言動にあたる事例です。

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