差別の解消に関する法律
日本では、差別の解消を目的とする法律が、対象ごとに次のように定められています。法律名から各記事に移動できます。
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)は、1985年に制定され、1986年に施行されました。その後の改正により、女性に対する差別の禁止から男女双方に対する差別の禁止へと広がり、事業主の義務が強められてきました。
事業主に求められていることは次のとおりです。
・募集・採用、配置・昇進・降格・教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由とする差別が禁止されています。
・性別以外の事由を要件としながら、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置を、合理的な理由なく講じることが禁止されています(間接差別の禁止)。
・婚姻、妊娠、出産などを理由として、女性労働者に解雇その他の不利益な取扱いをすることが禁止されています。
・セクシュアルハラスメントと、妊娠・出産等に関するハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
間接差別として禁止される措置は、厚生労働省令で次の三つが定められています。
・募集・採用で、身長、体重、体力を要件とすること
・募集・採用、昇進、職種の変更で、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること
・昇進で、転勤の経験があることを要件とすること
一方、男女労働者の間に生じている事実上の格差を解消するために、女性労働者を有利に取り扱う措置は、ポジティブ・アクションとして認められています。
男女雇用機会均等法を守らせる仕組みとして、厚生労働大臣による助言・指導・勧告があり、勧告に従わない事業主の企業名を公表することができます。差別そのものに対する罰則は置かれていません。
LGBT理解増進法
LGBT理解増進法(性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律)は、2023年6月に成立し、同月に施行されました。すべての国民が、性的指向やジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるという理念にのっとり、性的指向やジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないとしています。
この法律は、性的指向とジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進を目的とする理念法(禁止規定を置かない法律)であり、差別を禁止する規定や罰則は置かれていません。
過去問を解いてみましょう
第35回 現代社会と福祉 問題31
男女雇用機会均等政策に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 常時雇用する労働者数が101人以上の事業主は、女性の活躍に関する一般事業主行動計画を策定することが望ましいとされている。
2 セクシュアルハラスメントを防止するために、事業主には雇用管理上の措置義務が課されている。
3 総合職の労働者を募集・採用する場合は、理由のいかんを問わず、全国転勤を要件とすることは差し支えないとされている。
4 育児休業を取得できるのは、期間の定めのない労働契約を結んだフルタイム勤務の労働者に限られている。
5 女性労働者が出産した場合、その配偶者である男性労働者は育児休業を取得することが義務づけられている。
解説
1 × 女性活躍推進法により、常時雇用する労働者数が101人以上の事業主は、一般事業主行動計画の策定が義務付けられています。
2 ○ 男女雇用機会均等法により、事業主にはセクシュアルハラスメントを防止するための雇用管理上の措置義務が課されています。
3 × 合理的な理由なく、転居を伴う転勤に応じることができることを募集・採用の要件とすることは、間接差別として禁止されています。
4 × 期間を定めて雇用される労働者やパートタイム労働者も、要件を満たせば育児休業を取得できます。
5 × 育児休業は、労働者の申出によって取得するものです。
第37回 社会福祉の原理と政策 問題27
次のうち、日本において、法令に照らして「間接差別」となる事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 男女同数の職場にもかかわらず、法人内の管理職がほとんど男性のため、次の昇任人事では女性職員を優先して管理職に登用することにした。
2 職場内で複数の職員が集まって、同僚の職員Aの私生活を噂し、それを聞いた職員Bが不快に思った。
3 広域にわたり展開する施設・事業所がなく、新規展開の計画がないにもかかわらず、転居を伴う転勤を要件として職員を募集し、男性だけを採用した。
4 車いすを利用する障害者が、正当な理由がないにもかかわらず公共交通機関の利用を拒否された。
5 特定の民族や国籍の人々に対し、その民族や国籍のみを理由として、地域社会からの排除を煽動する言動がなされた。
解説
1 × 男女間の格差を解消するために女性を優先する措置は、ポジティブ・アクションとして男女雇用機会均等法で認められています。
2 × 同僚の私生活を噂する行為は、性別などを理由とする基準を用いたものではなく、間接差別にあたりません。
3 ○ 男女雇用機会均等法は、性別以外の事由を要件としながら、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置を、合理的な理由がない限り禁止しています(間接差別)。転居を伴う転勤に応じることができることを募集・採用の要件とすることは、この措置の一つとして定められています。
4 × 障害者差別解消法の不当な差別的取扱いにあたる事例です。
5 × ヘイトスピーチ解消法の不当な差別的言動にあたる事例です。


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