代理とはどういう仕組みか
代理は、本人に代わって代理人が契約などの法律行為を行い、その効果が本人に生じる仕組みです。民法99条1項は、代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接に効力を生ずると定めています。
たとえば代理人が本人のために賃貸借契約を結んだ場合、契約の当事者になるのは本人です。代理人は本人の名前を示して手続きをするだけで、代理人自身が借りるわけではありません。
代理人が本人に代わって行為できる権限を、代理権といいます。この代理権を誰が与えるのかによって、代理は2つに分かれます。
代理権を誰が付与するのか
代理権を誰が付与するかによって、法定代理と任意代理に分かれます。
法定代理
法定代理は、法律の規定や家庭裁判所の審判によって代理権が生じます。未成年者の親権者がその代表例で、親権者は法律上当然に子を代理します。成年後見制度で家庭裁判所が選任した人も、法定代理人にあたります。
任意代理
任意代理は、本人が誰かに代理権を与えることによって生じます。本人が「この人に、この手続きを任せる」と決めてはじめて代理権が発生します。誰に頼むか、どこまで任せるかを本人が選べる点に特徴があります。
判断能力が低下した人を支える制度のうち、任意後見と日常生活自立支援事業は、どちらも後者の「本人が代理権を与える」形をとっています。次にこの2つを見ていきます。
任意後見は本人が代理権の範囲を決める
任意後見では、本人が判断能力のあるうちに、誰に後見人になってもらうか、どこまでの代理権を与えるかを決めて契約を結びます。契約は公正証書によって作成します。
任意後見人に与えられるのは代理権のみです。同意権や取消権は付与されておらず、本人が締結した不利な契約を任意後見人が取り消すことはできません。同意権や取消権が必要な状態になった場合には、法定後見への移行が検討されます。
任意後見制度についての記事はこちらです。
→任意後見制度とは|効力が生じるのはいつか・公正証書と任意後見監督人
日常生活自立支援事業と代理権の関係性
日常生活自立支援事業では、社会福祉協議会の専門員や生活支援員が、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理の援助を行います。援助の方法は、情報提供や助言、手続きへの同行や代行が基本です。
これに加えて、本人から代理権を授与された場合には、代理による援助を行うこともできます。生活支援員が当然に代理できるわけではなく、本人が代理権を与えた範囲で代理するという形です。
この事業は契約に基づいて利用するものですから、本人に契約の内容を判断できる能力が残っていることが前提になります。代理権を与えるという行為も、本人の意思によるものです。
日常生活自立支援事業についての記事はこちらです。
→社協の日常生活自立支援事業とは|対象者と支援内容をわかりやすく整理
法定代理と任意代理を整理
| 制度 | 代理権が生じるきっかけ | 分類 |
|---|---|---|
| 親権 | 法律の規定によって当然に生じる | 法定代理 |
| 法定後見 | 家庭裁判所の審判によって生じる | 法定代理 |
| 任意後見 | 本人が任意後見契約で与える | 任意代理 |
| 日常生活自立支援事業 | 本人が代理権を授与した場合に生じる | 任意代理 |
任意後見と日常生活自立支援事業は、どちらも本人の意思で代理権が与えられます。判断能力があるうちに将来に備えるのが任意後見、判断能力が低下してきた段階で日常の暮らしを支えるのが日常生活自立支援事業という違いがあります。
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第38回問題42
事例を読んで,Aさんの日常生活自立支援事業の利用に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
有料老人ホームで暮らす軽度の認知症のあるAさん(80歳代)は,最近,自ら金銭管理をすることが困難となってきた。有料老人ホームの職員の助言により,Aさんは社会福祉協議会が実施する日常生活自立支援事業の利用を検討している。
1 Aさんの判断能力の確認には,医師の鑑定書が不可欠である。
2 Aさんの本事業における支援計画は,社会福祉協議会の生活支援員が作成する。
3 Aさんの本事業における支援計画に基づく日常的金銭管理は,有料老人ホームの職員に委託できる。
4 Aさん本人からの申出がなければ,本事業の支援計画を見直すことはできない。
5 Aさんに対する本事業における支援は,Aさん本人から代理権を授与されたうえで,代理による援助を行うことができる。
解説
正答は5です。
1→× 判断能力の確認は、都道府県社会福祉協議会に設置された契約締結審査会が行います。医師の診断書等を参考にすることはありますが、鑑定書が不可欠とはされていません。
2→× 支援計画を作成するのは専門員です。生活支援員は、支援計画に基づいて実際の訪問援助を行います。
3→× 日常的金銭管理は事業の実施主体が担うもので、施設職員に委託することはできません。
4→× 支援計画は、本人の申出の有無にかかわらず、利用者の状況の変化を踏まえて見直されます。
5→○ 本人から代理権を授与されたうえで、代理による援助を行うことができます。

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