児童の権利に関する条約を整理するポイント
児童の権利に関する条約は、1989年に国連総会で採択され、日本は1994年に批准しています。
国家試験では、条約そのものが問われることもありますが、近年はそこから生まれた国内の施策として出題される傾向があります。条約を学ぶときは、条約が何を変えたのかという視点で読むと、後の制度とつながります。
整理する順番は次の3つです。
①条約は子どもの位置づけをどう変えたのか
②4つの一般原則は何か
③その原則が国内のどの制度になったのか
受動的権利から能動的権利へ
子どもの権利に関する国際的な取組として、1924年の児童の権利に関するジュネーブ宣言、1959年の児童権利宣言があります。ただし、これらは保護される存在としての子どもを前提にしていました。健やかに育つよう、おとなが保護し、与えるという構造です。このような〇〇される権利のことを受動的権利といいます(英文法の受動態と同じです)。
1989年の条約は、このような子どもの位置づけを変えました。新たに子どもを権利の主体として位置づけ、自分に関することについて意見を表明する権利を認めています。自ら行使する権利という意味で、能動的権利といいます(英文法の能動態、私が〇〇するということです)。
条約は受動的権利である生存や発達の保障等、保護される権利は維持しつつ、意見を表明し参加する権利が新たに明記されました。
条約の成立と日本の批准
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1924年(第一次世界大戦の反省を踏まえ) | 児童の権利に関するジュネーブ宣言 |
| 1959年 | 児童権利宣言(国連総会で採択) |
| 1989年 | 児童の権利に関する条約(第44回国連総会で採択) |
| 1990年 | 条約が発効。日本は署名 |
| 1994年 | 日本が批准(同年5月22日に効力発生) |
採択が1989年、日本の批准が1994年です。5年の開きがあります。日本は世界で158番目の締約国でした。
条約の採択・発効・署名・批准が整理できていない場合はこちらをご覧ください
条約の読み方(採択・発効・署名・批准)をわかりやすく解説しています
条約第1条は、児童を18歳未満のすべての者と定義しています。ただし、その者に適用される法律によりより早く成年に達した場合は除かれます。
なお、条約の正式名称は「児童の権利に関する条約」ですが、こども家庭庁はこども大綱で「こどもの権利条約」の呼称を使っています。当事者であるこどもにとっての分かりやすさを考えたものです。
4つの一般原則
条約全体を貫く考え方として、4つの一般原則が挙げられます。
| 一般原則 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 差別の禁止 | 第2条 | いかなる差別もなしに条約の権利を尊重し確保する |
| 児童の最善の利益 | 第3条 | 児童に関するすべての措置において、児童の最善の利益が主として考慮される |
| 生命、生存及び発達に対する権利 | 第6条 | 生命に対する固有の権利を認め、生存及び発達を可能な最大限の範囲で確保する |
| 児童の意見の尊重 | 第12条 | 自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に意見を表明する権利を確保し、年齢及び成熟度に応じて相応に考慮する |
このうち第12条の意見表明権が、条約の性格を最もよく表しています。受動的権利から能動的権利への転換が、この条文に集約されています。
一般原則が国内の制度になっている
条約の一般原則は、その後の国内法や施策に反映されており、近年はここに着目した問題が出題されています。
こども基本法(令和5年4月施行)は、第1条で日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、と定めています。第3条の基本理念の前半4つは、そのまま条約の一般原則に対応しています。
こども基本法はこの内容がそのまま出題されていますのでこちらの記事でご確認ください
こども基本法とは|こどもの定義・基本理念・こども大綱とこども計画を整理
児童福祉法は、平成28年の改正で第1条に児童の権利に関する条約の精神にのっとり、という文言が加わりました。あわせて第2条に、児童の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されることが規定されています。
意見表明等支援事業(令和6年4月施行)は、施設入所や里親委託などの措置に関して、こどもの意見や意向を把握し、児童相談所等との連絡調整を行う事業です。第12条の意見表明権を、実際の手続の中で保障するための仕組みです。
条約を学ぶときは、この対応関係まで見ておくと、後で制度を学ぶときに全体像が理解できてすっきりします。
過去問で確認しましょう
最近の問題ではありませんが、次のような問題が出題されたことがあります。3問を並べると、条約の要点が確認できます。
・児童の権利に関する条約は、初めて子どもを保護の対象と捉えたことに大きな特徴がある。
→× 子どもを保護の対象と捉えていたのは、ジュネーブ宣言や児童権利宣言です。条約の特徴は、子どもを権利の主体として位置づけ、意見を表明する権利を認めた点にあります。
・児童の権利に関する条約では、児童を16歳未満の者と定めている。
→× 条約第1条は、児童を18歳未満のすべての者と定義しています。
・児童の権利に関する条約では、児童が自由に自己の意見を表明する権利を確保すると明記している。
→〇 条約第12条の規定のとおりです。
第38回 問題91
意見表明等支援事業などに関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 意見表明等支援員は、子どもの未熟さを補い、専門知識に基づいて児童を指導するものである。
2 児童福祉に関する知識等を有する者が、児童の意向などを勘案して、児童相談所等の関係機関と連絡調整を行う。
3 児童養護施設等に入所中の児童、里親委託中の児童、一時保護中の児童は、この事業の対象である。
4 児童相談所の児童福祉司は、意見表明等支援員とは別に、単独で児童の意見を聴取することを控えなければならない。
5 児童養護施設の職員や里親は、児童の最善の利益を考慮して、意見表明等支援員に対して、養育についての自分の意見は述べないことが望ましい。
まとめて解説
1 →× 意見表明等支援員の役割は、こどもの意見や意向を把握して関係機関に伝えることです。指導するものではありません。
2 →〇 意見表明等支援事業の内容のとおりです。
3 →〇 施設入所中、里親委託中、一時保護中の児童が対象です。
4 →× 児童福祉司が児童の意見を聴取することを控える規定はありません。
5 →× 施設の職員や里親が意見を述べてはならないという規定はありません。
条約を受けて制定されたこども基本法については、こちらで整理しています。
→こども基本法とは|こどもの定義・基本理念・こども大綱とこども計画を整理
法律の条文が多すぎて、どこを読んでいいのかわからないと感じたら、読む「場所」を意識するのが早道です。どの法律も見るところは同じなので、法律の見るべき場所を伝授します。

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