公費負担医療とは
公費負担医療は、医療費の全部または一部を、国や地方公共団体が公費で負担する制度です。感染症法、精神保健福祉法、障害者総合支援法、難病法、母子保健法、児童福祉法、医療観察法、生活保護法など、様々な法律が根拠となって実施されています。以下、ポイントを絞って整理します。
〇公費負担医療というと、医療費の全額を公費がまかなうものだと思われがちですが、実際には医療保険が優先し、自己負担分を公費が補う形のものが大半です。
〇医療保険が優先する制度では、医療機関の窓口でいったん医療保険が適用され、7割から9割が保険から支払われます。残りの自己負担分について、法律ごとに定められた基準まで公費が負担します。
〇自己負担無しとなることもありますが、まず医療保険が適用され、公費が自己負担分をカバーしています。全額公費で支払われているもの(保険が適用されていないもの)は限られています。
〇国家試験では自己負担の割合まで細かく問われたことはありませんが、念のためまとめてあります。下記の表で確認してみてください。
医療保険が提供されないもの
一方で、医療保険をまったく使わず、全額を公費で負担する制度もあります。
〇医療観察法による指定入院医療機関・指定通院医療機関での医療が、これにあたります。心神喪失等の状態で重大な他害行為を行い、医療観察法の処遇を受けることになった人の医療費は、国が全額を負担します。医療観察法独自の診療報酬点数表が用いられ、通常の医療保険の点数表は使いません。対象者の自己負担もありません。
〇生活保護の医療扶助のうち、医療保険に加入していない被保護者に対するものです。国民健康保険・後期高齢者医療制度は、生活保護を受けている間は適用除外となります。医療保険に加入していない被保護者の医療費は、医療扶助が全額を負担します。
生活保護の医療扶助との関係
生活保護の医療扶助には、他の制度が優先するという原則があります。医療保険に加入している被保護者の場合は、医療保険が優先し、残りの自己負担分を医療扶助が負担します。医療保険に加入していない被保護者の場合は、医療扶助が全額を負担します。
生活保護と医療保険の仕組みについてはの記事はこちら
→生活保護と医療保険の関係|被保護者は医療保険に加入できる?演習問題で解説
生活保護を受けている高齢者が介護保険の第1号被保険者である場合には、介護保険料の一部が公費で加算される介護保険料加算という制度もあります。
介護保険料加算についての記事はこちら
→介護保険料加算とは|対象になる被保護者と介護扶助との違い
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第38回問題105
事例を読んで、救急病院のAソーシャルワーカー(社会福祉士)のBさんへの対応に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
住民票を移さないまま都市部に移り住んだBさん(55歳)は、ここ10年ほど簡易宿泊所で寝起きし、週4日程度の日雇労働に従事し、その日暮らしである。ある日、息切れと胸痛のため路上でうずくまっていたBさんは救急病院で結核と診断され、さらに排菌しているため、入院を勧告された。簡易宿泊所で感染したものと考えられた。Bさんは健康保険の被保険者であるものの医療費の一部負担金が払えない、働かないと生活ができないと訴えて、入院を拒否している。
1 入院した場合、公費負担により一部負担金が発生しないことを説明する。
2 傷病手当金について説明する。
3 療養補償給付について説明する。
4 住民票の住所地であれば医療扶助を申請できることを説明する。
5 選定療養費の対象になることを説明する。
解説
1 ○ 感染症法第37条による入院勧告では、医療保険が優先したうえで、残りの自己負担分を公費が負担します。世帯の市町村民税所得割額が一定を超える場合は月額2万円を上限に負担が生じますが、Bさんはこれにあたりませんので、負担は生じません。
2 ○ Bさんは健康保険の被保険者です。業務外の傷病で働けない場合、傷病手当金の対象になります。
3 × 療養補償給付は労災保険の給付です。簡易宿泊所での感染と考えられ、業務災害ではありません。
4 × 医療扶助は、住民票の住所地ではなく、現在地を所管する福祉事務所に申請します。
5 × 選定療養費は、紹介状なしで大病院を受診した場合などに発生する費用です。この事例とは関係しません。
第37回問題103
事例を読んで、A医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)によるBさんへの説明に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
C県で暮らすBさん(56歳、会社員)は、1年前より箸が持ちにくい、重いものが持てない等の症状が見られ、1か月前より休職していた。1週間前に自宅の階段から転落し、病院に救急搬送された。大きなケガはなかったものの、両下肢の筋力低下が著しく、歩行が困難となっており、外来の医師より難病の疑いがあるとの説明を受け、D神経内科医師を紹介され受診した。その結果、筋萎縮性側索硬化症(ALS)との診断結果を受けた。今後の療養生活の支援が必要と考えたAは、Bさんへ次のような説明を行った。
1 「難病の治療費については、育成医療が適用されます」
2 「『難病法』による医療費の自己負担は徴収されません」
3 「『難病法』により、医療費は公費優先となります」
4 「一定の条件の下で、『障害者総合支援法』による障害福祉サービスの対象となります」
5 「県内の難病相談支援センターのピアサポーターによる支援があります」
解説
1 × 育成医療は、障害者総合支援法の自立支援医療のうち、身体に障害のある児童を対象とするものです。難病法の給付ではありません。難病法の給付は特定医療費です。
2 × 難病法の特定医療費にも、所得に応じた自己負担があります。
3 × 難病法の特定医療費も、医療保険が優先します。
4 ○ 難病等により一定の障害がある人は、障害者総合支援法の対象となり、要件を満たせば障害福祉サービスを利用できます。
5 ○ 難病相談支援センターでは、ピアサポーターによる相談支援が行われています。
第35回問題70
日本の医療保険の適用に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 国民健康保険の被保険者に扶養されている者は、被扶養者として、給付を受けることができる。
2 健康保険組合が設立された適用事業所に使用される被保険者は、当該健康保険組合に加入する。
3 「難病法」の適用を受ける者は、いずれの医療保険の適用も受けない。
4 国民健康保険は、後期高齢者医療制度の被保険者も適用となる。
5 週所定労働時間が10時間未満の短時間労働者は、健康保険の被保険者となる。
解説
1 × 国民健康保険に被扶養者という区分はありません。加入者は全員が被保険者です。
2 ○ 健康保険組合が設立された適用事業所に使用される被保険者は、その健康保険組合に加入します。
3 × 難病法の特定医療費は医療保険が優先しますので、対象者はいずれかの医療保険に加入していることが前提になります。
4 × 後期高齢者医療制度の被保険者は、国民健康保険の適用から外れます。
5 × 週の所定労働時間が短い人が健康保険の被保険者になるには、4分の3基準または適用拡大の要件を満たす必要があります。10時間未満では被保険者になりません。
第37回問題104
事例を読んで、受診した病院のA医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)による、この段階でのBさんへの説明として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Bさん(43歳、正社員)は、健康保険の被保険者であり、勤務する会社の倉庫での機械の入出庫や運搬に従事している。昨日、勤務中に会社の倉庫内でうっかり商品の機械を自分の足の上に落としてしまった。病院を受診した結果、左足の指2本を骨折と診断された。
1 高額療養費制度の説明
2 傷病手当金の説明
3 療養補償給付の説明
4 医療保険と労働者災害補償保険の違いの説明
5 公費負担医療制度の説明
解説
1 × 高額療養費制度は医療保険の給付です。この骨折は勤務中の業務災害ですので、医療保険ではなく労災保険で対応します。
2 × 傷病手当金は、業務外の傷病で働けないときの健康保険の給付です。業務災害は対象になりません。
3 ○ 勤務中の負傷ですので、労災保険の療養補償給付の対象です。
4 ○ Bさんは健康保険の被保険者であることを踏まえ、業務災害では医療保険ではなく労災保険が適用されることを説明する必要があります。
5 × この骨折は業務災害であり、公費負担医療の対象ではありません。
第36回問題59
「障害者総合支援法」による自立支援医療に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 自立支援医療の種類には、更生医療が含まれる。
2 自立支援医療の種類にかかわらず、支給認定は都道府県が行う。
3 利用者の自己負担割合は、原則として3割である。
4 精神通院医療では、精神障害者保健福祉手帳の所持者以外は支給対象とならない。
5 利用者は、自立支援医療を利用する場合には、自由に医療機関を選択できる。
解説
1 ○ 自立支援医療の種類は、更生医療、育成医療、精神通院医療の3種類です。
2 × 支給認定を行うのは、更生医療と育成医療は市町村、精神通院医療は都道府県・指定都市です。種類によって異なります。
3 × 自己負担割合は原則1割です。所得に応じた月ごとの上限額が設けられています。
4 × 精神通院医療の対象は、通院による精神医療を継続的に必要とする人です。精神障害者保健福祉手帳の所持を要件とはしていません。
5 × 自立支援医療を利用できる医療機関は、都道府県知事等が指定した指定自立支援医療機関に限られます。自由に選べるわけではありません。
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