高齢者虐待対応状況調査とは
高齢者虐待対応状況調査は、高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)に基づいて市町村と都道府県が対応した件数などを、厚生労働省が毎年まとめている調査です。令和6年度の結果は、令和7年12月に公表されました。
調査は、高齢者虐待防止法の定義に合わせて、次の二つに分けて集計されています。
①養護者(家族・親族など)による虐待
②養介護施設従事者等(介護施設や介護サービス事業所の職員)による虐待
高齢者虐待防止法についての記事はこちら
→高齢者虐待防止法をわかりやすく|通報義務と5類型・養護者支援を整理
①②とも、「1位は何か」を意識して確認しましょう。
件数は養護者による虐待のほうが圧倒的に多い
虐待と判断した件数は、養護者によるものが17,133件、養介護施設従事者等によるものが1,220件です。養護者による虐待は、養介護施設従事者等による虐待の10倍以上あります。
相談・通報件数は、養護者によるもの、養介護施設従事者等によるもののどちらも過去最多となりました。養介護施設従事者等による虐待は、虐待と判断した件数も過去最多で、4年連続で増えています。
養護者による虐待
〇相談・通報者:警察>介護支援専門員>家族・親族
〇虐待の種別:身体的虐待>心理的虐待>介護等放棄>経済的虐待>性的虐待
〇虐待者の続柄:息子>夫>娘
〇被虐待者:女性が約4分の3、虐待者と同居している者が8割以上
相談・通報者の1位は警察で、全体の3分の1を超えています。介護支援専門員(ケアマネジャー)は2位です。虐待者は息子が最も多く、次いで夫、娘の順です。「息子>夫>娘」の順で覚えておきましょう。
このデータを見ると、私は国民生活基礎調査を思い浮かべます。なぜなら、国民生活基礎調査の結果から、現在介護を担っているのは、昔ながらの「長男の嫁」ではなく、同居の配偶者や子ども自身だとわかるからです。データは丸暗記したくなるかもしれませんが、データとデータは意外とつながっていると、私はいつも感じています。
国民生活基礎調査についての記事はこちら
→39回国家試験用 2025年国民生活基礎調査|世帯構造・所得と生活意識・貧困率・介護の状況
養介護施設従事者等による虐待
〇相談・通報者:当該施設の職員>当該施設の管理者等
〇施設の種別:特別養護老人ホーム>有料老人ホーム>認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
〇虐待の種別:身体的虐待>心理的虐待>介護等放棄(身体拘束等は被虐待者全体の約2割)
〇発生要因:職員の知識・意識の不足>職員の倫理観・理念の欠如
〇虐待者:介護職が約8割
虐待の種別は、養護者による虐待と同じく身体的虐待が1位です。発生要因の1位は、虐待や身体拘束についての職員の知識・意識の不足で、倫理観・理念の欠如は2位です。虐待の事実が認められた施設のうち、過去に何らかの指導等を受けていた施設は約2割です。
虐待につながる原因は、職員の性格や資質だけの問題ではありません。最も多いのは、虐待や身体拘束に関する知識・意識の不足です。ここからも、介護現場の今後の課題が見えてきそうですね。
国家試験では、次の文章が×として出題されています。
×「虐待の発生要因として最も多いものは,『倫理観や理念の欠如』である。」(第32回問題135)
×「虐待の内容として最も多いものは,『経済的虐待』となっている。」(第32回問題135)
調査結果の詳細は、厚生労働省のページで確認できます。
→令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果(厚生労働省)
過去問を解いてみましょう
第32回問題135
「平成29年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」(厚生労働省)で示されている「養介護施設従事者等」による高齢者虐待に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
(注)「養介護施設従事者等」とは、養介護施設又は養介護事業の業務に従事する者を指す。
1 市町村等が虐待と判断した件数は、2008年度(平成20年度)以降、減少傾向にある。
2 虐待の発生要因として最も多いものは、「倫理観や理念の欠如」である。
3 虐待の事実が認められた施設・事業所のうち、およそ3割が過去に何らかの指導等(虐待以外の事案に関する指導等を含む)を受けている。
4 被虐待高齢者の状況を認知症高齢者の日常生活自立度でみると、「Ⅰ」が全体のおよそ4分の3を占めている。
5 虐待の内容として最も多いものは、「経済的虐待」となっている。
解説
解説は令和6年度の調査結果に基づいています。
1→× 養介護施設従事者等による虐待と判断した件数は増加傾向にあり、令和6年度は1,220件で過去最多です。
2→× 発生要因の1位は職員の知識・意識の不足です。倫理観・理念の欠如は2位です。
3→○ 出題当時の正答です。令和6年度は、過去に何らかの指導等を受けていた施設は約2割(22.3%)です。
4→× 被虐待高齢者のおよそ4分の3は、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上です。
5→× 最も多いのは身体的虐待です。経済的虐待は4位です。


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