社会保障費用統計とは
社会保障費用統計は、国立社会保障・人口問題研究所が毎年公表する統計です。国家試験で問われる社会保障給付費は、この統計に含まれています。統計には、次の三つがあります。
〇社会保障給付費→国際労働機関(ILO)の基準で、社会保障制度による1年間の給付を集計したものです。
〇社会保障財源→同じILOの基準で、社会保障制度の収入を集計したものです。
〇社会支出→経済協力開発機構(OECD)の基準で集計したものです。社会保障給付費より範囲が広く、施設整備費など、個人に直接渡らない支出も含みます。国際比較に使います。
数値は、2026年7月に公表された令和6年度(2024年度)のものです。過去問の○×は、出題当時の数値ではなく、令和6年度の数値で判定しています。そのため、出題当時の正答と食い違う選択肢があります。たとえば、第38回問題29の選択肢「総額は、前年度より増えている。」は、出題当時の令和5年度は減少していたため×でした。令和6年度は増加しているため、○になります。選択肢は、年度の表記を省いて掲載しています。
この記事に書いていない細かい数値は、国立社会保障・人口問題研究所の資料で確認できます。
→ 令和6(2024)年度 社会保障費用統計の概要(国立社会保障・人口問題研究所)
社会保障給付費と社会支出の比較
令和6年度の社会保障給付費と社会支出を並べると、次のとおりです。前年度比は、プラスを「+」、マイナスを「△」で示しています。
国の一般会計歳出予算は、社会保障に限らず、国のすべての分野の支出の予算です。社会保障給付費は、国の支出だけでなく、社会保険料を財源とする給付や、地方自治体の支出も合わせた金額です。令和6年度の社会保障給付費(約138兆円)は、一般会計歳出予算(当初予算で約112兆円)より大きくなります。
国家試験では、次のように出題されました。
「総額は、前年度より増えている。」(第38回問題29)
→〇令和6年度は前年度比+2.0%で、○です。出題当時の令和5年度は減少していたため、×でした。
「社会保障給付費は、150兆円を超過した。」(第32回問題50)
→×令和6年度は約138兆円です。
「社会保障給付費の総額は、160兆円を超過している。」(第37回問題30)
→〇令和6年度は約138兆円です。
「総額は、国の一般会計歳出予算の総額よりも小さい。」(第38回問題29)
→×社会保障給付費のほうが、一般会計歳出予算より大きくなります。
「社会保障給付費の対国内総生産比は、20%を超えている。」(第29回問題50)
→〇令和6年度は21.53%です。
「対国内総生産比は、40%を超えている。」(第34回問題50、第38回問題29)
→×令和6年度は21.53%です。
「国民一人当たりの社会保障給付費は、150万円を超過している。」(第34回問題50)
→×令和6年度は111万7,100円です。
社会保障給付費の部門別の内訳
社会保障給付費は、部門別に、年金、医療、福祉その他の三つに分けられます。令和6年度は、年金が41.8%で1位、医療が32.4%で2位、福祉その他が25.8%で3位です。前年度(令和5年度)との差は、年金が+0.2ポイント、医療が△1.3ポイント、福祉その他が+1.1ポイントです。
国家試験では、次のように出題されました。
「医療」が最も大きな割合を占めている。(第38回問題29)
→×令和6年度に最も大きいのは、年金です。
「部門別社会保障給付費の対国内総生産比をみると、「医療」が最も高い。」(第29回問題50)
→×最も大きい部門が年金なので、対国内総生産比も年金が最も高くなります。
「「年金」が70%を超過している。」(第34回問題50)
→×令和6年度は41.8%です。
「「福祉その他」の割合は、2割を超過している。」(第37回問題30)
→〇令和6年度は25.8%です。
「「福祉その他」の割合は、1割に満たない。」(第32回問題50)
→〇令和6年度は25.8%です。
社会保障給付費の機能別の内訳
社会保障給付費は、部門別とは別に、機能別にも分けられます。機能は、高齢、遺族、障害、労働災害、保健医療、家族、失業、住宅、生活保護その他の九つです。
令和6年度は、高齢が44.4%で1位、保健医療が31.3%で2位、家族が8.4%で3位です。部門別の年金(41.8%)と機能別の高齢(44.4%)は、同じ数字になりません。
国家試験では、次のように出題されました。
「「高齢」の方が「家族」よりも高い。」(第34回問題50)
→〇高齢は44.4%、家族は8.4%です。
「「家族」の割合は、1割に満たない。」(第32回問題50、第38回問題29)
→〇令和6年度は8.4%です。
社会支出の政策分野別の内訳
社会支出も、政策分野別に分けられます。分野は、高齢、遺族、障害・業務災害・傷病、保健、家族、積極的労働市場政策、失業、住宅、他の政策分野の九つです。令和6年度は、保健が41.2%で1位、高齢が35.5%で2位、家族が8.6%で3位です。
機能別社会保障給付費と政策分野別社会支出は、分け方が似ています。並べて覚えると、次のとおりです。1位と2位が入れ替わり、3位の家族は、どちらも1割に満たない割合です。
国家試験では、次のように出題されました。
「政策分野別社会支出の割合が最も大きいのは「家族」である。」(第37回問題30)
→×最も大きいのは保健です。家族は3位です。
「政策分野別社会支出の構成割合が最も高いのは、「家族」に対する支出である。」(第29回問題50)
→×最も高いのは保健です。
「政策分野別社会支出のうち、「住宅」支出の構成割合は10%を超えている。」(第29回問題50)
→×令和6年度は0.4%です。
社会保障財源
ここからは、社会保障給付費の財源の話です。令和6年度の社会保障財源は、社会保険料が53.3%で1位、公費負担が37.5%で2位です。令和2〜6年度の5年間は、いずれの年度も、社会保険料が公費負担より大きくなっています。
公費負担は、国と地方自治体が負担しています。統計では、国の負担を国庫負担、地方自治体の負担を他の公費負担といいます。令和6年度は、国庫負担が24.6%、他の公費負担が12.9%で、国が約3分の2、地方自治体が約3分の1です。
国庫負担の割合など、制度ごとの費用負担は、別の記事で整理しています。
社会保障の国庫負担についての記事はこちら。
→ 社会保障の国庫負担を割合ごとに整理|生活保護・年金・介護保険・医療保険・社会手当
国家試験では、次のように出題されました。
「社会保障財源の構成比は、公費負担より社会保険料の方が大きい。」(第30回問題50)
→×社会保険料が53.3%、公費負担が37.5%です。
「社会保障財源における公費負担の割合は、社会保険料の割合よりも大きい。」(第32回問題50、第37回問題30)
→〇社会保険料のほうが大きくなります。
「社会保障財源をみると、公費負担の割合が最も高い。」(第29回問題50)
→×最も高いのは社会保険料です。
「公費負担の内訳は、国より地方自治体の方が多い。」(第30回問題50、第34回問題50)
→×国庫負担が24.6%、地方自治体の負担が12.9%で、国のほうが多くなります。
社会支出の国際比較
令和6年度版の資料では、日本の対国内総生産比(22.23%)は、フランス(32.11%)、ドイツ(31.27%)、スウェーデン(26.92%)、アメリカ(24.21%)のいずれよりも小さくなっています。年度は国によって異なり、日本は2024年度、フランスとアメリカは2022年度、ドイツとスウェーデンは2021年度です。
国家試験では、次のように出題されました。
「日本の社会支出の対国内総生産比は、フランスよりも高い。」(第32回問題50)
→×日本は22.23%、フランスは32.11%です。
「日本の社会支出は、対国内総生産比でみると、OECD加盟国の中で最も大きい。」(第37回問題30)
→×日本は、フランスやドイツより小さくなっています。
国民負担率
国民負担率は、租税負担と社会保障負担の合計が、国民所得に占める割合です。財務省が公表しています。令和6年度は、実績で46.7%です。国民負担率に財政赤字を加えた潜在的国民負担率は、令和6年度で50.3%です。
国家試験では、次のように出題されました。
「国民所得に対する租税及び社会保障負担の割合は、約25%であった。」(第30回問題50)
→×国民負担率は、令和6年度の実績で46.7%です。
過去問を解いてみましょう
解説は、令和6年度(2024年度)の数字に基づいています。第38回問題29の選択肢1は、出題当時は×でしたが、令和6年度の数字では○になります。
第29回 問題50
「平成25年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)の内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 社会保障給付費の対国内総生産比は20%を超えている。
2 政策分野別社会支出の構成割合が最も高いのは、「家族」に対する支出である。
3 政策分野別社会支出のうち、「住宅」支出の構成割合は10%を超えている。
4 部門別社会保障給付費の対国内総生産比をみると、「医療」が最も高い。
5 社会保障財源をみると、公費負担の割合が最も高い。
解説
1→○ 令和6年度の対国内総生産比は21.53%で、20%を超えています。
2→× 政策分野別で最も大きいのは保健(41.2%)です。家族は3位(8.6%)です。
3→× 住宅は0.4%で、10%には届きません。
4→× 部門別で最も大きいのは年金です。対国内総生産比も、年金が医療より高くなります。
5→× 財源で最も大きいのは社会保険料(53.3%)です。公費負担は2位(37.5%)です。
第30回 問題50
日本の社会保障の費用などに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 2014年度(平成26年度)の国民所得に対する租税及び社会保障負担の割合は、約25%であった。
2 「平成26年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)によると、社会保障財源の構成比は、公費負担より社会保険料の方が大きい。
3 「平成26年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)によると、社会保障財源に占める公費負担の内訳は、国より地方自治体の方が多い。
4 2014年度(平成26年度)以降、基礎年金の国庫負担割合を恒久的に2分の1とする財源は、所得税と消費税で賄われている。
5 2014年度(平成26年度)における、後期高齢者医療制度の財源に占める後期高齢者支援金の割合は、約10%である。
解説
1→× 国民負担率(国民所得に対する租税及び社会保障負担の割合)は、令和6年度の実績で46.7%です。
2→○ 社会保険料(53.3%)のほうが、公費負担(37.5%)より大きくなっています。
3→× 公費負担の内訳は、国庫負担(24.6%)のほうが、地方自治体の負担(12.9%)より多くなっています。
4→× 基礎年金の国庫負担2分の1を恒久的に支える財源は、消費税率の引上げによる増収分です。国庫負担についての記事はこちら。→ 社会保障の国庫負担を割合ごとに整理
5→× 後期高齢者医療の財源のうち、後期高齢者支援金(現役世代からの支援)は約4割です。約1割は、後期高齢者の保険料です。
第32回 問題50
「平成28年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費は、150兆円を超過した。
2 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を部門別(「医療」、「年金」、「福祉その他」)にみると、「福祉その他」の割合は1割に満たない。
3 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を機能別(「高齢」、「保健医療」、「家族」、「失業」など)にみると、「家族」の割合は1割に満たない。
4 2016年度(平成28年度)の社会保障財源における公費負担の割合は、社会保険料の割合よりも大きい。
5 2015年度(平成27年度)における社会支出の国際比較によれば、日本の社会支出の対国内総生産比は、フランスよりも高い。
解説
1→× 令和6年度は約138兆円で、150兆円には届きません。
2→× 福祉その他は25.8%で、1割(10%)を超えています。
3→○ 家族は8.4%で、1割に満たない割合です。
4→× 社会保険料(53.3%)のほうが、公費負担(37.5%)より大きくなっています。
5→× 日本(22.23%)より、フランス(32.11%)のほうが高くなっています。
第34回 問題50
「平成30年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)による2018年度(平成30年度)の社会保障給付費等に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 社会保障給付費の対国内総生産比は、40%を超過している。
2 国民一人当たりの社会保障給付費は、150万円を超過している。
3 部門別(「医療」、「年金」、「福祉その他」)の社会保障給付費の構成割合をみると、「年金」が70%を超過している。
4 機能別(「高齢」、「保健医療」、「家族」、「失業」など)の社会保障給付費の構成割合をみると、「高齢」の方が「家族」よりも高い。
5 社会保障財源をみると、公費負担の内訳は国より地方自治体の方が多い。
解説
1→× 令和6年度は21.53%で、40%には届きません。
2→× 令和6年度は111万7,100円で、150万円には届きません。
3→× 年金は41.8%で、最も大きい部門ですが、70%には届きません。
4→○ 高齢(44.4%)のほうが、家族(8.4%)より高くなっています。
5→× 国庫負担(24.6%)のほうが、地方自治体の負担(12.9%)より多くなっています。
第37回 問題30
「令和3年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)による社会保障の費用等に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 2021年度(令和3年度)の社会保障給付費の総額は、160兆円を超過している。
2 2021年度(令和3年度)の部門別(「医療」、「年金」、「福祉その他」)の社会保障給付費のうち、「福祉その他」の割合は、2割を超過している。
3 2021年度(令和3年度)の政策分野別社会支出の割合が最も大きいのは「家族」である。
4 2021年度(令和3年度)の社会保障財源における公費負担の割合は、社会保険料の割合よりも大きい。
5 2020年度(令和2年度)の日本の社会支出は、対国内総生産比でみると、OECD加盟国の中で最も大きい。
解説
1→× 令和6年度は約138兆円で、160兆円には届きません。
2→○ 福祉その他は25.8%で、2割(20%)を超えています。
3→× 政策分野別で最も大きいのは保健(41.2%)です。家族は3位(8.6%)です。
4→× 社会保険料(53.3%)のほうが、公費負担(37.5%)より大きくなっています。
5→× 日本の対国内総生産比(22.23%)は、フランス(32.11%)やドイツ(31.27%)より小さくなっています。
第38回 問題29
「令和5年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)による2023年度(令和5年度)の社会保障給付費に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 総額は、前年度より増えている。
2 対国内総生産比は、40%を超えている。
3 部門別(「医療」、「年金」、「福祉その他」)の構成割合をみると、最も大きな割合を占めるのは「医療」である。
4 機能別(「高齢」、「保健医療」、「家族」、「失業」など)の構成割合をみると、「家族」の割合は1割に満たない。
5 総額は、2023年度(令和5年度)の国の一般会計歳出予算の総額よりも小さい。
解説
1→○ 令和6年度の総額は前年度比+2.0%で、増えています。出題当時の令和5年度は減少していたため、×でした。
2→× 令和6年度は21.53%で、40%には届きません。
3→× 部門別で最も大きいのは年金(41.8%)です。医療(32.4%)は2位です。
4→○ 家族は8.4%で、1割に満たない割合です。
5→× 総額(約138兆円)は、一般会計歳出予算(令和6年度の当初予算で約112兆円)より大きくなっています。


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