日本の福祉の歴史シリーズ
語呂合わせで、年表を覚えようとしていませんか。法律は、いつできたかではなく、どのような背景で、どのような内容だったかを覚えていないと解けません。時代背景と一緒に、流れで覚えていきましょう。
日本の歴史は全6回です。
→①明治期|恤救規則と慈善事業家たち
→②大正期|済世顧問制度・米騒動・方面委員制度
→③昭和戦前|救護法から戦時厚生事業まで
→④福祉三法から福祉元年・オイルショックまで
→日本の福祉の歴史⑤福祉見直し論|新経済社会7カ年計画と日本型福祉社会(この記事)
→⑥ゴールドプラン・福祉八法改正から基礎構造改革へ
歴史の勉強の仕方についての記事はこちら
→歴史の勉強の仕方
今回のテーマはオイルショック後の福祉見直し論
日本の福祉の歴史、第5回はオイルショック後の福祉見直し論です。この時代の中心は、1979年の新経済社会7カ年計画、1982年の老人保健法、自助・共助・公助の枠組みです。
高度経済成長の終わり
1973年(昭和48年)10月、第四次中東戦争をきっかけに原油価格が急騰し、第一次石油危機(オイルショック)が起こりました。日本経済では狂乱物価と呼ばれる急激なインフレが起こり、1974年(昭和49年)には戦後初めて経済成長率がマイナスになりました。高度経済成長は、ここで終わりました。
福祉元年で拡大した社会保障の給付は、経済成長による税収の伸びを前提に組み立てられていました。成長が止まって税収の伸びが鈍ったため、給付の見直しを求める声が上がりました。
新経済社会7カ年計画(1979年)
1979年(昭和54年)、政府は新経済社会7カ年計画を閣議決定しました。この中で、オイルショック後の財政が厳しいなかでの福祉のあり方として、日本型福祉社会という考え方が打ち出されました。
「個人の自助努力と家庭や近隣・地域社会等の連帯を基礎としつつ、効率のよい政府が適正な公的福祉を重点的に保障するという自由経済社会のもつ創造的活力を原動力とした我が国独自の道を選択的に創出する、いわば日本型ともいうべき新しい福祉社会の実現を目指すものでなければならない」
内容をまとめると、次のようになります。
①個人の自助努力と、家庭、近隣、地域社会といったインフォーマルな支え合いを基礎とします。
②その上に、効率のよい政府による適正な公的福祉を組み合わせます。
③西欧型の高福祉高負担とは違う、日本独自の道を目指します。
④同居する老親と子の関係を福祉における含み資産と表現し、家族の扶養機能を積極的に位置づけました。
この計画は、自助、家庭、地域を基礎とした日本型の福祉社会を目指すもので、公的福祉の拡充を求めたものではありません。
国家試験では、次のように出題されました。
○「個人の自助努力と家庭や近隣・地域社会等との連携を基礎とした「日本型ともいうべき新しい福祉社会の実現を目指す」ことを構想した。」(第34回問題22)
×「社会福祉施設への需要の増加を踏まえて、5か年程度の期間の社会福祉施設緊急整備計画の樹立とその実施を求めた。」(第34回問題22)→1971年の社会福祉施設緊急整備五か年計画の内容です。
×「新経済社会7ヵ年計画(1979年(昭和54年))は、自助努力や家庭及び社会の連帯の限界を踏まえ、公的福祉を最大限に拡充するとした。」(第38回問題22)→新経済社会7カ年計画は、効率のよい政府が適正な公的福祉を重点的に保障するとしました。
老人保健法(1982年)と一部自己負担の導入
1981年(昭和56年)には、鈴木善幸内閣のもとで第二次臨時行政調査会(土光臨調)が発足し、増税なき財政再建を掲げて行政改革を進めました。社会保障の分野でも、給付の抑制や自己負担の見直しが進められました。
そして1982年(昭和57年)の老人保健法の制定によって、1973年に無料化されたばかりの老人医療費に、再び一部自己負担が導入されました。福祉元年で進めた無料化は、10年も経たないうちに見直されました。
国家試験では、次のように出題されました。
×「1982年(昭和57年)に制定された老人保健法により、高額療養費制度が創設された。」(第34回問題49)→高額療養費制度の創設は1973年です。
自助・共助・公助の枠組みと21世紀福祉ビジョン
社会保障のあり方は、自助・共助・公助の組み合わせで説明されます。ただし、その位置づけ方は時代とともに変わってきました。
1994年(平成6年)の21世紀福祉ビジョンでは、地域社会を中心とする自助と、社会保障による共助が適切に組み合わされた重層的な福祉構造を実現することが示されました。企業は、この共助を担う主体の一つとして位置づけられています。
2006年(平成18年)の社会保障の在り方に関する懇談会の最終報告書では、自助を基本として共助が補完し、それでも対応できない部分を公助が担うという整理がされています。
国家試験では、次のように出題されました。
×「21世紀福祉ビジョン(1994年(平成6年))は、地域社会を中心とする自助、社会保障による共助、企業による商助とが適切に組み合わされた重層的な福祉構造を実現するとした。」(第38回問題22)→21世紀福祉ビジョンが示したのは自助・共助・公助です。企業は共助を担う主体の一つとされており、商助という独立した分類はありません。
○「社会保障の在り方に関する懇談会の最終報告書(2006年(平成18年))は、自助を基本に、共助が補完し、これらでは対応できない状況に公助で対応するとした。」(第38回問題22)
×「「地域包括ケア研究会報告書」(2009年(平成21年))は、介護保険制度を含む社会保険と社会福祉の2分野を公助の仕組みに位置づけた。」(第38回問題22)→地域包括ケア研究会報告書が示したのは自助・互助・共助・公助の4つで、介護保険などの社会保険は共助にあたります。
○「社会保障制度改革推進法(2012年(平成24年))は、自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくとした。」(第38回問題22)→社会保障制度改革推進法第2条第1号の内容です。
自助・共助・公助・商助の位置づけについての記事はこちら
→「商助」とは?21世紀福祉ビジョンの自助・共助・公助・商助を整理
すっきり整理 福祉見直し論の年表
次回はゴールドプランから基礎構造改革までです
次回はゴールドプランから福祉八法改正、基礎構造改革までの時代です。
→日本の福祉の歴史⑥ゴールドプラン・福祉八法改正から基礎構造改革へ
ほかの分野の歴史の記事はこちら
→歴史の記事マップ
過去問を解いてみましょう
第34回 現代社会と福祉 問題22
次の記述のうち、1970年代後半の「福祉の見直し」が提唱された時期に示された「新経済社会7カ年計画」の内容として、正しいものを1つ選びなさい。
1 社会保障制度を「すべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすること」と新たに定義した。
2 社会保障を、所得階層の観点から「貧困階層に対する施策」「低所得階層に対する施策」「一般所得階層に対する施策」に区分した。
3 社会福祉施設への需要の増加を踏まえて、5か年程度の期間の社会福祉施設緊急整備計画の樹立とその実施を求めた。
4 個人の自助努力と家庭や近隣・地域社会等との連携を基礎とした「日本型ともいうべき新しい福祉社会の実現を目指す」ことを構想した。
5 要介護高齢者の増加を背景に、介護サービス見込量の集計を踏まえ、訪問介護等の介護サービスの具体的数値目標を定めた。
解説
1→× 1950年の社会保障制度審議会勧告の内容です。
2→× 1962年の社会保障制度審議会勧告の内容です。
3→× 1971年の社会福祉施設緊急整備五か年計画の内容です。
4→○ 新経済社会7カ年計画が示した日本型福祉社会の構想です。
5→× 1989年のゴールドプランなど、高齢者保健福祉計画の内容です。
第38回 社会福祉の原理と政策 問題22
日本における自助・共助・公助等に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 新経済社会7ヵ年計画(1979年(昭和54年))は、自助努力や家庭及び社会の連帯の限界を踏まえ、公的福祉を最大限に拡充するとした。
2 21世紀福祉ビジョン(1994年(平成6年))は、地域社会を中心とする自助、社会保障による共助、企業による商助とが適切に組み合わされた重層的な福祉構造を実現するとした。
3 社会保障の在り方に関する懇談会の最終報告書(2006年(平成18年))は、自助を基本に、共助が補完し、これらでは対応できない状況に公助で対応するとした。
4 「地域包括ケア研究会報告書」(2009年(平成21年))は、介護保険制度を含む社会保険と社会福祉の2分野を公助の仕組みに位置づけた。
5 社会保障制度改革推進法(2012年(平成24年))は、自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくとした。
(注)「地域包括ケア研究会報告書」とは、平成20年度老人保健健康増進等事業「地域包括ケア研究会報告書〜今後の検討のための論点整理〜」(2009年(平成21年)5月22日)のことである。
解説
1→× 新経済社会7カ年計画は、効率のよい政府が適正な公的福祉を重点的に保障するとしました。公的福祉を最大限に拡充する内容ではありません。
2→× 21世紀福祉ビジョンが示したのは自助・共助・公助です。企業は共助を担う主体の一つとされており、商助という独立した分類はありません。
3→○ 自助を基本に、共助が補完し、これらでは対応できない状況に公助で対応するとしています。
4→× 地域包括ケア研究会報告書が示したのは自助・互助・共助・公助の4つです。介護保険などの社会保険は共助にあたります。
5→○ 社会保障制度改革推進法第2条第1号の内容です。
自助・共助・公助・商助の整理についての記事はこちら
→「商助」とは?21世紀福祉ビジョンの自助・共助・公助・商助を整理


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