遺族厚生年金の改正を図で確認
遺族年金には、国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金保険から支給される遺族厚生年金の二つがあります。2025年6月に成立した年金制度改正法で大きく見直されたのは遺族厚生年金で、見直しは2028年4月に施行されます。
現在と改正後の対象者を、一目でわかるように図にまとめました。ただし、国家試験の問題は文章で出題されます。図で全体をつかんだら、そのあとの本文で文章の表現にも必ず慣れておきましょう。
まず、こちらの図で確認してください。
現在の遺族厚生年金の妻と夫、年齢による違い
現在の遺族厚生年金は、子のない配偶者が受け取れる期間を、妻と夫で、また配偶者の死亡時の年齢で区別しています。ここでいう子は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子(障害等級1級・2級の障害状態にある場合は20歳未満の子)です。
〇妻は、夫の死亡時に30歳未満であれば5年間の有期給付、30歳以上であれば無期給付(受給期間に定めのない給付)を受けます。
〇夫は、妻の死亡時に55歳以上であることが受給の要件で、受け取れるのは60歳からです。妻の死亡時に55歳未満の夫は、遺族厚生年金の受給権を得られません。
この妻と夫の差は、夫が働いて家計を支え、妻が専業主婦として家庭を支える世帯を前提に制度が作られたことによります。共働き世帯が増えた現在では、妻の収入で家計を支えていた夫も、夫であることを理由に遺族厚生年金を受け取れません。社会保障審議会年金部会は、妻と夫の差の解消を論点として検討し、今回の改正につながりました。
年金制度がどのような世帯を前提に作られてきたかについての記事はこちら
改正後の遺族厚生年金
改正後は、配偶者と死別したときに60歳未満であれば、妻も夫も原則として5年間の有期給付を受けます。60歳以上で死別した場合は、妻も夫も無期給付を受けます。
〇妻の死亡時に55歳未満の夫も、5年間の有期給付を受けられるようになります。
〇子のある配偶者は、子が18歳に達する日以後の最初の3月31日を迎えるまでは現在と同じ給付を受け、そのあと5年間の有期給付を受けます。
この見直しは、現在の30歳未満の妻に対する5年間の有期給付の仕組みを、60歳未満の妻と夫に広げたものです。
5年間の遺族厚生年金には有期給付加算が上乗せされ、年金額は現在の約1.3倍になります。5年が過ぎたあとも、障害年金の受給権者や収入が十分でない者は、最長65歳まで継続して遺族厚生年金を受給できます。
見直しの影響を受けない者
〇2028年4月の施行時点ですでに遺族厚生年金を受給している者は、改正後も現在の制度のまま受給します。
〇60歳以上で配偶者と死別した者は、改正後も無期給付を受けます。
〇妻のうち改正の対象となるのは、2028年度末の時点で40歳未満の者(1989年4月2日以降に生まれた者)です。それより前に生まれた妻は、2028年4月以降に夫が亡くなっても、無期給付を受けます。
社会保障についての記事はこちら
一問一答で確認しましょう
問1 現在の制度では、夫の死亡時に30歳未満で子のない妻に支給される遺族厚生年金は、5年間の有期給付である。
解答を見る
○ 現在の制度では、30歳未満で子のない妻に対する遺族厚生年金は、5年間の有期給付です。
問2 現在の制度では、妻の死亡時に50歳で子のない夫は、遺族厚生年金を受給できる。
解答を見る
× 現在の制度では、夫が遺族厚生年金を受給するには、妻の死亡時に55歳以上であることが要件です。
問3 改正後は、妻の死亡時に50歳で子のない夫は、5年間の有期給付として遺族厚生年金を受給できる。
解答を見る
○ 改正後は、60歳未満で配偶者と死別した者は、妻も夫も原則として5年間の有期給付を受けます。
問4 改正後は、夫の死亡時に62歳の妻に支給される遺族厚生年金は、5年間の有期給付である。
解答を見る
× 改正後も、60歳以上で配偶者と死別した者は、妻も夫も無期給付を受けます。
問5 改正後の5年間の有期給付は、5年が過ぎると、すべての受給者について支給が終わる。
解答を見る
× 障害年金の受給権者や収入が十分でない者は、5年が過ぎたあとも最長65歳まで継続して受給できます。
問6 改正後は、施行時点ですでに遺族厚生年金を受給している妻も、5年間の有期給付に切り替わる。
解答を見る
× 施行時点ですでに遺族厚生年金を受給している者は、現在の制度のまま受給します。
問7 改正後、子のある配偶者は、子が18歳に達する日以後の最初の3月31日を迎えたあと、5年間の有期給付を受ける。
解答を見る
○ 子が18歳に達する日以後の最初の3月31日を迎えるまでは現在と同じ給付を受け、そのあと5年間の有期給付を受けます。
過去問を解いてみましょう
第32回問題52
遺族年金に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は、生計を同じくするその子の父または母がある間は支給停止される。
2 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は、その子が婚姻した場合でも引き続き受給できる。
3 遺族基礎年金は、死亡した被保険者の孫にも支給される。
4 受給権を取得した時に、30歳未満で子のいない妻には、当該遺族厚生年金が10年間支給される。
5 遺族厚生年金の額は、死亡した者の老齢基礎年金の額の2分の1である。
解説
1→○ 子が受給権を取得した遺族基礎年金は、生計を同じくするその子の父又は母がある間、支給停止されます。2028年4月からは、親の再婚など子自らの選択によらない事情による支給停止を行わないよう見直されます。
2→× 子が婚姻したときは、遺族基礎年金の受給権が消滅します。
3→× 遺族基礎年金を受けられる遺族は、子のある配偶者と子です。
4→× 30歳未満で子のない妻に支給される遺族厚生年金は、5年間の有期給付です。
5→× 遺族厚生年金の額は、死亡した者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。
遺族基礎年金を受けていた妻が再婚した事例についての記事はこちら
→事例問題の解き方|社会保障 第38回問題36 遺族基礎年金・児童扶養手当・健康保険の被扶養者
第36回問題52
事例を読んで,Hさんに支給される社会保障給付として,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
〔事 例〕
Hさん(45 歳)は,妻と中学生の子との 3 人家族だったが,先日,妻が業務上の事故によって死亡した。Hさんは,数年前に,持病のためそれまで勤めていた会社を退職し,それ以来,無職,無収入のまま民間企業で働く妻の健康保険の被扶養者になっていた。
1 国民年金法に基づく死亡一時金
2 厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金
3 国民年金法に基づく遺族基礎年金
4 健康保険法に基づく埋葬料
5 労働者災害補償保険法に基づく傷病補償年金
解説
1→× 死亡一時金は、遺族基礎年金を受けられる遺族がいない場合に支給されます。Hさんは遺族基礎年金を受給できます。
2→× 夫が遺族厚生年金を受給するには、妻の死亡時に55歳以上であることが要件で、Hさんは45歳です。2028年4月の改正後は、55歳未満の夫も遺族厚生年金の対象になります。
3→○ Hさんは妻に生計を維持されていた子のある配偶者なので、遺族基礎年金を受給できます。
4→× 業務上の事故による死亡には、健康保険の埋葬料ではなく、労働者災害補償保険の葬祭料が支給されます。
5→× 傷病補償年金は、業務上の負傷や疾病が療養開始後1年6か月を経過しても治らない労働者本人に支給される年金です。
労災保険の年金と、遺族厚生年金・遺族基礎年金などの調整についての記事はこちら


コメント