歴史の問題を勘で解いてしまう理由
歴史の問題は「流れ」と「背景」が出題されます。
年号を覚えても、その法律がどのような時代に何のためにできたのかを知らなければ、選択肢の正誤を読み取ることができません。そこで、最初に頭に入れてほしいのは、明治、大正、昭和の戦前・戦後と、それぞれの時代の空気感です。そのうえで、社会保険、障害者福祉、福祉三法・福祉六法、福祉八法改正、高齢者福祉と、分野ごとに縦割りで一つずつ勉強していきます。全部をいっぺんに覚えようとせず、各論で勉強するうちに時代の空気感もつかめるようになり、解きやすくなってくると思います。
明治から1990年代以降までの流れを一覧にすると、次のとおりです。
歴史を暗記ではなく時代背景と一緒に理解する考え方についての記事はこちら。
→歴史の問題を解くコツ!国家試験の歴史は「暗記」ではなく時代背景と一緒に理解しましょう。
明治から戦前までの時代の空気感
明治 国を強くすることが最優先の時代
明治政府は、欧米に追いつくために富国強兵と殖産興業を進めました。国のお金は軍備と産業に充てられ、貧困は家族や近所の助け合いで解決するものと考えられていました。
1874(明治7)年に制定された恤救規則は、この考え方をそのまま表しています。救済はまず「人民相互の情誼」、つまり人々どうしの助け合いによるものとされ、国が救済したのは、身寄りがなく誰にも頼れない「無告の窮民」に限られていました。
国としての救貧政策は恤救規則のみでした。このことが、孤児や貧しい者を支える民間の篤志家による様々な慈善事業につながりました。1908(明治41)年には、こうした慈善事業の連絡を図る中央慈善協会が設立されました。中央慈善協会は、現在の全国社会福祉協議会につながる団体です。
大正 慈善事業から社会事業へ移った時代
第一次世界大戦のあと物価が上がり、1918(大正7)年には米の値上がりに怒った民衆が各地で米騒動を起こしました。米騒動をきっかけに、国や地方が貧困への対策に取り組むようになり、それまでの慈善事業は社会事業と呼ばれるようになりました。
1917(大正6)年に岡山県で済世顧問制度が、1918(大正7)年に大阪府で方面委員制度が始まり、地域の貧しい家庭を調べて支援する仕組みが広がりました。労働者が病気やけがに備える健康保険法は、1922(大正11)年に制定されました。
昭和戦前・戦時 恐慌から戦争へ向かう時代
世界恐慌の影響で失業者や生活に困窮する者が増え、恤救規則では対応できなくなりました。1929(昭和4)年に制定された救護法は、国が救護を行う義務を定めました。
戦争が始まると、国は兵士と働き手を確保するために国民の健康に目を向けます。1938(昭和13)年に厚生省が設置され、同じ年に国民健康保険法が制定されました。
同じ1938年には社会事業法が制定され、国が民間の社会事業を助成するとともに、その運営を指導・監督するようになりました。
同じ1938年には国家総動員法も制定され、国民の生活全体が戦争のために動員されるようになりました。社会事業も、戦争を支える人的資源の確保を目的とする厚生事業と呼ばれるようになりました。
戦後から現在までの時代の空気感
戦後占領期 戦争後の混乱の時代
敗戦後の日本では、戦災孤児、引揚者、戦争で障害を負った者など、生活に困窮する者が国中にあふれていました。1945(昭和20)年12月には、生活に困窮する者を応急的に救済するため、生活困窮者緊急生活援護要綱が閣議決定されました。1946(昭和21)年に制定された日本国憲法では、第25条で生存権が定められ、国が国民に最低限度の生活を保障することになりました。
最も急いで対応が必要だった生活困窮者、児童、身体障害者のために、生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法の福祉三法が制定されました。
高度経済成長期 暮らしが豊かになり制度が広がった時代
経済が急速に成長し、国民の暮らしは豊かになりました。一方で、知的障害者、高齢者、母子家庭への対応が必要と認識されるようになり、福祉三法に精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法)、老人福祉法、母子福祉法(現在の母子及び父子並びに寡婦福祉法)が加わり、福祉六法体制となりました。
1961(昭和36)年には国民皆保険・皆年金が実現し、1971(昭和46)年には児童手当法が制定されました。1973(昭和48)年は老人医療費の無料化などが行われて福祉元年と呼ばれました。
オイルショック以降 福祉を見直した時代
福祉元年と同じ1973年にオイルショックが起こり、高度経済成長は終わりました。国の財政が苦しくなり、福祉見直しが進みます。
家族や地域の助け合いを基本にする日本型福祉社会という考え方が示され、1982(昭和57)年に制定された老人保健法では、無料だった老人医療費に一部負担が導入されました。
1990年代以降 少子高齢化に向き合う時代
高齢化が急速に進み、施設に入所するだけでなく、住み慣れた地域で暮らし続けるための在宅福祉が求められるようになりました。1990(平成2)年の福祉八法改正では、在宅福祉サービスが法律に位置づけられ、福祉サービスを市町村が一元的に提供する仕組みが整えられました。
1997(平成9)年に介護保険法が制定され、2000(平成12)年の社会福祉基礎構造改革によって、福祉サービスは行政が決める措置から、利用者がサービスを選ぶ契約へと変わりました。
分野ごとの歴史の記事
まず、この空気感が頭にある程度入っていることが大前提です。これらがないまま各歴史を見ると、混乱するだけで、整理できないかもしれません。まずは上記の当時の空気を頭にいれ、その上で、各論の歴史を整理しましょう。過去問からアプローチしてうまくいかないときは、上の流れを意識してみてください。
社会保険の歴史についての記事はこちら。
→社会保障の歴史①戦前・社会保険のはじまり|健康保険法・国民健康保険法・労働者年金保険法
障害者福祉の歴史についての記事はこちら。
→障害者福祉の歴史①戦後から福祉六法体制へ|身体障害者福祉法・精神衛生法・精神薄弱者福祉法
福祉三法・福祉六法の成り立ちについての記事はこちら。
→日本の福祉の歴史④|福祉三法から福祉元年・オイルショックまで
福祉八法改正についての記事はこちら。
→日本の福祉の歴史⑥|ゴールドプラン・福祉八法改正から基礎構造改革・措置から契約へ
高齢者福祉の歴史についての記事はこちら。
→高齢者福祉の歴史①|老人福祉法制定後の歴史をわかりやすく解説
歴史シリーズの全記事についての記事はこちら。
→流れで覚える歴史シリーズ 全記事一覧

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